2015年7月22日水曜日

正田陽一(東京大学名誉教授)   ・「動物園のボランティア40年」

正田陽一(東京大学名誉教授)    ・「動物園のボランティア40年」
正田さんはこの40年間、東京動物園ボランティアズのリーダーとして動物園と来園者とをつなぐ役割をになってきました。
昭和49年に30人の動物好きで集まった東京動物園ボランティアズは、今では上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園等合わせて、700人を越える大所帯に増えています。
東京動物園ボランティアズの40年を振り返って動物園やボランティアのはたす役割などを伺います。

ボランティアという言葉から言うと、本来熟知している人が当たり前ですが、当時動物園ボランティアはそういう知識がなかった。
当時上野飼育課長中川志朗(後に園長)さんが、欧米の動物園を見てこられて、動物園でボランティア組織があってそれが動物園の一番大事な機能である教育活動を援助するというか、それを通して社会に奉仕するという組織ができていた。
日本にも是非そういうグループが誕生してほしいという事で、動物愛好家に呼び掛けて、熱心な人を呼び込んで、動物園ボランティアを組織しようとして、50人候補が上がった。
動物園協会の古賀さんに相談されて、やってみなさいという事で動く事になる。

私は東京大学の助教授で、開園前の動物園の中を歩いて抜けて、農学部に通っていた。
畜産、中でも豚について教えていた。
30人ぐらいのメンバーが全員興味をもって、講習会を受けた。
当時のメンバーから動物園に就職して、園長が一人、副園長が出ている。
昭和49年動物園に教育普及係(動物園側は一人だけ)ができた。
動物園の社会教育機関として活動する、或る程度任された。
園側にも好感をもっている人ばかりではなかった、軋轢も当然あった。
動物を飼って展示してあるだけでいいのかと、言う思いはあった。
博物館の付属施設として動物園がスタートしている。(先進諸国と違って日本は動物園法が無い)

デンマークの動物園が教育関係の活動が熱心だったので参考にする。
来園者と動物園の間の橋渡しをするべきだと、思って、最初に5つの質問と言う活動だった。
自分の目で見て答えが探せるような問題を5つ並べている。
子供達が喜んでやってくれた。
ちゃんと観察してほしかった、それで本当の知識になる。
40年続けてきたからこそ、ボランティア自身も大変な力を付けてきたなと思います。
猿の体重をボランティアの人が取った記録と飼育係が取った記録を英語の学術雑誌に論文として投稿した事もある。
動物園自体が日々進歩して行っている。
解説員が一日2回ぐらい回っているが、カバーできないから、補完する様な形でボランティアがやっている。

アフリカの動物は昔は全部ジャングルに住んできたが、地球が段々乾燥化して、ジャングルの面積が狭くなってサバンナが広くなり、動物の一部はジャングルからサバンナに出てきてそこで進化する。
ジャングルに残ったものは原始的な形を残しながら、密林の生活を続ける、そうすると別な種類に進化してゆく。
キリンもオカピーも先祖は同じ動物だったが、そのうちの一部オカピーというのは森の中の生活を今でも続けている。
キリンはライオンなどが接近するのを目で見て、視線を高くして幅の広い視野をもっている。
森の中ではオカピーは鼻の力、聴覚で危険を察知するのが大事で、オカピーは鼻に割れ目がありキリンよりもはるかに嗅覚が鋭くなっている。
キリンとオカピーが並んで見られるようにしてある。
文字はなかなか読んでくれないので、言葉を使って説明する意味がある。

森に残ったのは小人カバ、サバンナに出てきたカバは、身体を大きくして、太陽光線を浴びると皮膚は水を通しやすいので、水の中にへもぐらなければいけなくなった。
身体が大きくなって水の中に適するように眼が出っ張って、鼻が出っ張って今のカバの顔になった。
動物の進化、生きているものの不思議さを体感してもらう教育機関でもある。
意図をもって展示されている。
パリの動物園では熊が3種類展示されているが、通常違った種類の熊を展示するが、全部ヒグマ、アラスカのヒグマ、ヨーロッパのヒグマ、乾燥地帯のヒグマ。
緯度の高いところの動物は身体がおおきくなるというベルクマンの法則があり、それを判るように展示してある。
動物園側が伝えたいことをくみ取ってほしい、ボランティアはスポットガイドをしている。
幅の広い知識をもった人を育てたいと思っているが段々と専門化してしまっている。

40年ボランティアをやっていて、やりがいを感じた体験を一つ話しますと、不忍池に昔冬の間かもが1万羽渡ってきていた。
水に潜るなどはドボンと水に潜って、水中のえさを取って浮かんでくる。
水面を泳ぎまわって浮いているものを食べる種もある。
子供から水に何秒潜っているか、と聞かれ答えに困っていたが、母親がそういう事は直ぐに人に聞くのではなくて自分で調べてみなさいと言って助け船を出してくれたが、子供は、僕はストップウオッチがないと計れないと言ったら、脈を利用して家に帰って時計を見てもう一回計ればいいと母親が言った。
私はストップウオッチ付きの計算機をもっていたのに気が付き、一緒にやろうと言ったら、数が多すぎて個体識別ができなくて、諦めかけたら、浅い近くのかもは水面のさざ波、潜るとヘドロが舞いあがるので計れるので計ってみた。
10回計ったら、25秒を中心に1,2秒しか違わなかった。
当人も非常に満足して帰って行った。
自分が口を出して、何だかんだ教えるのが本当の教育ママではない。