2015年7月13日月曜日

金子和夫(川口自主夜間中学代表) ・夜間中学で生徒に寄り添う

金子和夫(川口自主夜間中学代表) ・夜間中学で生徒に寄り添う
埼玉県には公立の夜間中学が無いため、30年ほど前、 川口市の市民グループがボランティアで川口自主夜間中学を開きました。
これまで3000人余りが学んできました。
現在も10代~70代まで約40人の生徒が勉強しています。
金子さんは68歳です。
川口市の小学校で教員を務めていた、20年前からボランティアとして川口自主夜間中学に関るようになりました。
3年前に小学校の教員を退職した後、引き続き勉強を教えたり、カウンセラーとして生徒たちの相談に乗っています。
夜間中学で生徒たちと向き合うようになって、教員としての生き方が大きく変わったと言う金子さん
、夜間中学に関わって20年間はどのような日々だったのか何を得たのかお聞きしました。

張り紙にひらがなで「ここはまなびたいとおもっているかたは、だれでもまなべます。 あなたがたのくるのをまっていました。」と書かれていて、誰でも学びたい人は学べる。 
初めてくる人は躊躇するので、気を使いながら、話をします。
歴史教育協議会の視察でボランティア活動で夜間中学に行きました。
28歳の人がポツンと一人でいて、俺に勉強を教える人は誰もいないのかと言ってきて、小学校、中学校もほとんど行っていないので、もう一回勉強したいと言って来た、植木職人でした。
吃驚したのは、学校に行ってないという事自身が、大きな驚きでした。
小学校のころからクズ鉄を拾っていて、学校にはほとんど行っていなかったとの事だった。
青年は「あいうえお、1プラス1」も知らなかった。
教育者として自分でも反省する材料になりました。

自分で教えるという事で、こういう人間が育ってゆくという事が、父も教育者だったのでそういうものが見えていたので、自分でも教えることによって人を作って行く、そういう言うものができたらいいなと思って、教員の道を選びました。
人間を作ってゆく一番最初の勉強は小学校だろうと思っていましたので、そこから始めてゆくというのがありました。
40年教師生活で、20年間はドンドン教え込む熱血教師みたいだったが、夜間中学に来てから変わったのは教え込みではなく、子供達から自分自身が学んでいかなくてはいけない、と言う事が大事だと思っています。
判らない子供達にどうやれば判るのか、と言う事を子供から教えてもらう以外ないのではないか、と言う事が自分を変えた大きな道です。
この夜間中学で20年間で送り出した生徒は全体で1000人位で、わたし自身では200人ぐらいになると思います。
川口は外国人が多い町で外国の方が多かったですが、最初の頃は不登校の子供達が多かったが、年配の人がかなり来るようになり、外国人も来ました。
卒業証書が出るわけではない。(次に高校に行く事は出来ないと説明はした。)
スタッフも生徒も互いに学び合おうという事をやっているところです。

不登校の子が来て、お婆ちゃんの「あいうえお」の勉強をしている姿をみて、自分も勉強すれば、高校にも入れるかもしれない、という事で(小学校5年生から学校には行っていなかった)希望に燃えて頑張って、高校に見事入ることができた。
小学校から中学と学校に行っていないという25歳の女性の方も、同様に頑張って勉強して、3カ月で力がついて、直ぐに学力が向上して、翌年夜間高校に行く事になった。
そういう人がたくさんいます。
まず私と面談して、何の勉強がしたいとかなどを聞いて、理科なら理科が好きだと言う事で有れば徹底的にやろうよという事で、進めることで意欲が次から次にわいて学習して行く。
学習者に寄り添った勉強の仕方、互いに学ぶと言う事を凄く大事にしている。
小学校で教えながら、夜間中学で教えることは大変な時期もあったが、学ぶ人がいるんだから、行かなくてはいけないという事もあるが、行く事に依って自分が鍛えられているなと言う事です。
カウンセラーとしても生徒の悩みを聞く。
30代、40代になっても小学校の時に勉強できていなかった、そこが穴があいちゃったようだと言ってくる、その穴を埋めたいがために、ここで勉強させてほしいと言ってくる方もいる、心の相談だと統合失調症等もあり、その人たちも来ていまして、電話で問い合わせしたりしています。

心理学を勉強してきたので、心の相談に乗ってあげられるかなあとも思いますが、難しい問題もあります。
埼玉県のカウンセラーでもあり、毎週水曜日県庁の下で教育相談等をやっています。
人と関わるのが自分自身でも好きで、それが楽しい事に繋がっているのではないかと言う事と、
関わればかかわるほど、その人が成長してくれることの楽しみもあるように思う。
夜間中学では教える人たちは20人ぐらいいます。
会社員を辞めた方、教員を退職した方、大学教授、学生等が担当しています。
スタッフのキャリアがそれぞれ違いますので、教え方も全部違っています。  
基本的には私が割り振るようにしています。
最近は外国人が増えています、川口は東京と接していて、家賃も安くて便利で住みやすい様です。
7割が外国人、3割が日本人です。
外国人(中国人が多い)に対してテキストも工夫をして、生活でよく使う漢字など交えており、好評です。
遠い人で2時間掛かけて教えに来る人もいます。
義務的ではボランティアは続かない、楽しさをどう見つけていくかと言う事だと思います。

公立の夜間中学は埼玉県には有りません。
今、超党派の議員連盟を作って、各県に最低1校は作る様に要望し、動きがでている。
もう一回学び直しができる様な、公立の夜間中学校ができればいいなあと思います。
課題は場所が公民館、パートナーステーションの一部を借りています。
学校の一部を借りられれば、そういう場所を使いたいなあと思います。
ボランティアなので、無償でやっているので、交通費も出せないので、ボランティアがなかなか集まらないというところもあります。
スタッフが足りないという面があります。(できれば1対1で教えたい)
出来れば交通費ぐらいは出ると有難いと思っています。
来る人たちが楽しい場にしてしてゆく事、自分を取り戻してゆく場所にしてゆく事、外国人に対しては日本語だけの教育だけではなくて、日本の社会の仕組み、文化について触れながらやって行きたいと思っている。
日本の若い人に対しては、希望を持てる様に目標(高校、大学、専門学校等に行く事)を持とうよ、話しています。
外国人に対しては日本に来て学ぶことができて、日本とはいい国だなあと思ってもらったら、外国に帰っても日本という国はいい国だなあと宣伝できる様な人達を作っていきたいと思っています。
互いに学んでいこうという事を、大事にして行こうと思います。