2017年10月3日火曜日

柴内裕子(動物病院総院長)        ・ペットを見守り60年

柴内裕子(動物病院総院長)     ・ペットを見守り60年
82歳、現役の獣医師、獣医師を志したのは戦時中のつらい体験がきっかけでした。
これまでペットの飼い方やしつけ方の相談のほか、病院や高齢者施設へペットを連れて訪問するボランティア活動などにも取り組んできました。
柴内さんは犬や猫たちは人に安らぎと信頼感を与えてくれる大切なパートナー、伴侶動物だと言います。
ペット動物と人の豊かな共存社会のために活動を続ける柴内さんに伺いました。

動物の医療は専門化していて、腫瘍、血液とか様々な分野がありますが、当病院にはそれぞれ専門家がいます。
しつけ、食事、散歩先での問題とか日常の問題を診療の間に相談にのるのが一番大事だと思っています。
開業当時よりも倍ぐらい寿命が伸びたと思います。
フィラリア、心臓に寄生する蚊が媒介する病気も完全に防ぐ事が出来ましたし、感染症もワクチンができたので、ワクチンと予防薬が使えただけでも命が倍になっています
食事、生活環境もよくなってきたし、犬が平均で14歳、猫が15歳を越してきました。
長寿に対応した医療相談が増えて来ました。
猫は泌尿器疾患、じん臓疾患、犬の場合は心臓疾患、腫瘍疾患が多いです。
薬品、医療機器、化粧品とか、人間が使うものは実験動物が昔は使われたが、人間と同じ医療と言うことが注目を受けています。

今は犬も室内で飼うのがとても多くなっています。
犬は群れの動物なので、昔は庭につないで1~2回散歩に連れて行ってもらっていただけだった。
部屋で一緒に暮らすと、犬はなんでも理解してよい子に育ち、犬も幸せ、人もハッピーです。
猫は単独動物なので、人とピッタリしていなくてはならないわけではない。
猫も人のぬくもり、会話になじんできて、幸せに室内で暮らせます。
外に出すと交通事故に遭ったり感染症になったり、行方不明になったりしますので、猫も部屋の中で暮らす方が、環境を整えてやれば良いと思います。
自由に遊ばせる場所もなくなってきたので、閉じ込めた責任は人間にあると思います。

30年前に日本動物病院協会と言う獣医師の団体を作って、獣医学を介して社会に貢献しようというボランティア活動を始めました。(私が責任者だった)
高齢者施施設、ホスピス、小学校など色々なところへ行って、動物を介在した人の治療などを行っています。
発語の言語療法とか、身体の障害にある方が手足のトレーニングのための作業療法、理学療法の現場で望まれた行動の出来る犬に育てた犬を連れて行って、一緒に行動することによってトレーニング、治療などの活動をしています。
子どもたちにとって、思うようにならないと言うことが大事な存在だと思います。
動物と一緒に接していると緊張感がほぐれて副交感神経が働いてストレスが少ない。

昭和34年に大学を卒業しましたが、小学校の4年生の時に終戦を迎えた年に、獣医師は男性ばかりでしたが戦争に皆行ってしまって、小動物の医者はいなかった。
捨てられた犬を兄弟で拾ってきて育てたり、犬、猫、孔雀、鶏、アヒルなど家にはいろんな動物がいました。
父は鶏が好きで出張先からいい鶏と言って鶏を送ってきたりしました。
戦争が激しくなったときに、軍隊にシェパードなどの大型犬を連れていかれてしまって、本当につらい思いをしました。
戦火で焼けたので鳥小屋に残っていたチャボが雛を抱いて、自分の体が真っ黒になっているのに雛を抱えて死んでいました。
親子の愛情、保護する意識に動物の世界には素晴らしい思いがあるとつくづく思いました。
女の獣医になれば、男性の様に戦争に行かなくて動物の面倒を見てあげられると思って獣医師になりました。
10歳ぐらいで、動物を介して温もり、命の大切さを学ぶことで人生が大きく変わることがわかっている。
子供達は悩み事があると犬や猫に悩み事を話すそうで、安堵感を得る大事な相手だと言われます。
高齢者の施設に行くと、無表情の人が多いが、犬たちが入って行くと皆笑顔になり、手を差し伸べて、赤ちゃん言葉で話掛けたりして、人間の内在している優しさを引き出してくれる名手です。

静岡に学童疎開を1年間いて、その後高等学校に行き来ましたが、他人のご飯を食べないと人の事が判らないと言う話を母がしょっちゅう話していて、3日通って休学して職業安定所にいって女中奉公したいと言って、何とかある店にいって住み込みで1年間いて、他人のご飯がよくわかりました。
翌年又試験を受けて合格して高校に行きました。
日大の獣医学部に行きました。(三軒茶屋の近く)
女子トイレもなくて(職員用のみ)、クラスは男性ばかりでした。
ペットではなくて農業用の動物(牛、馬など)が主でした。
素手で動物の手術をしていた時代でした。
大学を出て3~4年して赤坂の地の獣医病院にお手伝いに行って、その後開業医になりました。(27歳)
「名犬ラッシー」とかディズニーとかで、コリー、スパニエル、スピッツなどを飼う人が多くなったが流されて、飼い主は個性的ではなかった。

ペットブームで歩道にならんで下さったり、大変でした。
若い時は2日間ぐらい夜あまり寝なくても対応できたりしました。
動物たちは私の生涯の先生だとつくづくそう思います。
日本ではあまり動物と暮らすことを、もっと自然なものにしていかないといけないと思います。
正しいしつけをしてよそ様に世話をかけない子に育てることが飼い主にとっては一番大事だと思います。
社会の中で動物の良さをもっと活用していただければいいと思います。