2012年9月6日木曜日

阿部ヤヱ(わらべ歌伝承者)     ・お婆さんに教わったわらべ歌と人生

阿部ヤヱ(わらべ歌伝承者78歳)     お婆さんに教わったわらべ歌と人生  
東野に古くから伝わるわらべ歌伝承者  
柳田國男の東野物語で有名な東野には 数多くの歌が伝えられてきました
阿部さんも幼い頃からわらべ歌を聞いて育ち わらべ歌が大好きに成りました   
そして二人のお婆さんの教えを受けわらべ歌には子育て、人育ての為の、大切な役割があることを知りました   
そんな大切なものなら自分がきちんと伝えようと子供心に決心をした阿部さんは両親のもとで農業に携わり 結婚して、子供を育て、孫や、曾孫にわらべ歌を聞かせながら、昔ながらのわらべ歌を伝承する人生を送ってきました  

私の家は分家なのでお婆さんはいません 
母が田んぼに連れてって私を見ながら農作業をしていました 
母のそばにいて歌をせがんだそうです
畦が狭いもので逆さになって窒息しそうになったそうです  
それで本家のお婆さんに預かって貰って昼の間見てくれるようになる(朝早くから夜になるまで)
冬は家にいた   祖母は慶応2年生まれ  
当時は祖母が子供の面倒を見るのが当たり前だった  祖母は掃除、洗濯もしていた
火の取り扱い、洗濯の仕方が自然と判るようになった   夕方 いつも歌を歌ってくれる 
ウサギに向かって歌う 
ウサギは眼が真っ赤になってもじっと一人で、生きているんだ(普段黒い眼をしているが)と言って 母親は必ず来るからと 「うさんこっこ」(ウサギ)の歌を歌ってくれる 
そして母が来るまで寂しさを我慢した  
飼っていたウサギが大きくなって祖母がウサギ買いに売る段になり ウサギが悲しくて眼を真っ赤にしていると思ったら ウサギ買いから元々ウサギの眼は赤いといわれた 
ウサギを売ることに反対したら ウサギ買いがお前も買って仕舞うと言われ逃げたすきにウサギは買われて行った
 
しかし 祖母からウサギの眼は黒いと言われていたのが実は嘘だったと判りそれからは祖母のいうこと聞かなくなってしまった
皆が困って、祖母も困って 祈祷させたり カンの虫を取ってもらったりしたが、私は嘘をつかれた事に対してへそを曲げていた
余りものを言わなくなったので祖母がちっちゃいウサギを持ってきて無理やり抱かせた 
これが「うさんこっこ」の歌のウサギなんだよといってくれて そのウサギの眼を見たら明らかに眼が黒かった  
あー歌は本当だと思って喜んだ小さい箱に入れてくれて私のウサギだと思って育てた  
大きくなって、或る時に行ったら箱が空っぽだった  
あー売られたんだと思ったが聞けなかった  
ウサギが大きくなれば売られてゆくというのを知っていたので我慢した    
山に向かって「うさんこっこ」を歌った  ウサギは山ウサギが当たり前だった 
(山ウサギの眼の色が黒い)

白い兎は外国から入ってきた外来種で眼が赤い  
歌の方が早くから有ったために売るためのウサギは眼が赤い兎であった  
歌は本当だったと思った
自然に向かって歌うのは心を育てるから大事だと言われた  
花の様なものはチェー、チェーと声を掛けて撫でさせる 
そしてかがんで良い臭いだねと言う風にする
果物は リンゴの様な場合は赤くて綺麗だし食べてほしいから 見る、聞く、触る、嗅ぐ、味あう という五感を起こしてあげるというのがやり方です
遠くのものを見るというのが大事  空 飛んでる鳥に向かって うたう  眼の為にもいい  
歌に人はこう生きるんだという教えがある
空を見ると気候を教える事にもなる   ねぐらに向かって帰るカラスに向かって歌う(唄がある)  
自然に呼びかけていると心が育つ  
自然というものが 動物、植物 というのは草を食べて おてんとうさまのお陰で生かされているその動物植物の命を、頂いて人間は生きているという事が、自然に判ってくる  
自然が判るとともに命の大事さが判るし 命を守ってくれているのがおてんとうさま という事が 自然に感じ取れるように伝わっている   
自然に対する感謝の気持ちが、人に対する感謝の気持ちにもなるから、必ず自然を教えないと人には成らないというのが、前の人達の伝わってきたそういうものとして教えたんだと思います  
栗の木にまつわる唄もある    本家に大きな栗の木が有った    
子供心に厄介になっていたと思っていたが、役に立ちたいと思った
東野のわらべ歌は厳しい人生の中どう生きたらいいのかを示唆している
わらべ歌は話す力を育てる  昔話は聞く力を育てる  
いろんなことを聞かないと喋れない   謎かけは 言葉遊び 考える力を育てる  
話す、聞く、考える この三つを身につけないと人はちゃんと生きていけない
生きるということはどういう事かという事が判れば、どんなに辛くても生き抜く事ができるんだという事でした
わらべ歌は生きる事をつたえることのきっかけなんです

どんなに時代がかわっても人の生き方は変わらないと思います 
変えてはならないと思います 
人の持っている力、能力というのは昔も今も変わらないと思います
むしろ今の方が人の持っている能力を出さないで ただ習うだけでやってゆくから、折角持っている能力を出さないで知識だけで生きているんだと思います
人として生きてゆく時は昔から伝わってる能力を全部出して人間らしく生きる事は大事だと思います