佐藤愛子(作家) ・【特集 佐藤愛子に聞く!】1(H29/5/26 OA)
佐藤さんは大正12年生まれ、93歳、昭和44年「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞、お父さんは作家佐藤紅緑さん、お兄さんの詩人のサトウハチローさんら、佐藤家の一家は波乱にとんだ人生を描いた長編小説「血脈」に出ています。
「血脈」は平成12年に菊池寛賞を受賞しています。
佐藤愛子さんが昨年出版したエッセー「九十歳。何がめでたい」は大きな話題となりその歯にきぬ着せぬ物言いと、自分にいいわけしない潔い生き方は幅広い年代から支持されています。
今年の5月の放送では事前にリスナーから佐藤さんへの質問を募集し、その質門にこたえていただきながらお聞きしました。
旭日小綬章を受賞。
90歳を過ぎると色んな事に感動する感受性が鈍感になるのでちょっと途方に暮れて、野蛮人とよく遠藤周作さんから言われ、晴れがましいことは似合わないんで、そういう席に顔出しすることはちょっと忸怩たるものがあり困惑しました。
自分が楽しくて書いてきたんで、書くことは苦しいけど止むにやまれる欲求があって苦しい涙をながしながら書いたというふうなことで、そんな立派な芸術家では有りません。
軍人には金鵄勲章という大変な栄誉だった。
瑞宝章を受章した時には「血脈」に描かれているが、兄が電話を受けてきて大喜びしていました。
彼は不良少年でならした人ですから、大不良少年が勲章を頂く世の中、日本は大丈夫かなと言ったんです。
むっとしたような感じで沈黙していましたが、やっぱり大変な栄誉だったと思います。
質問を募集
279通の便りがあり、①生き方、②死をどう迎えるか、③佐藤愛子さんの作品について、④健康若さの秘訣、⑤そのほか。
年齢18歳から94歳までのお便りでした。
愛知県の山川君子さん 93歳
「血脈」を2回読みました。
90歳以上の方が10人来ました。
私はわがまま自由に生きて来ましたが、私の年代の方は女はかくあるべきという決められた観念に縛られて自分を抑えて辛抱強く生きてきた。
そういう目から見ると異端などうしようもない人間に見えると思いまして、共感を持っていただけないんじゃないかと思います。
三重県北田典子さん
70歳代のころは長生きしたいと思われたか?
70代、80代のころは歳のことを忘れていました。
ここが悪いとかあそこが悪いとか、そういうことを思うことがなくて50代、60代のような元気でいたので長生きするとか、そういうことについて忙しくて考えることがなかったです。
親に感謝するのは健康に産んでくれたと言うことです。
90歳を過ぎたころから、眼は段々見えなくなり、耳が聞こえなくなるし、歯も駄目になってきているがこれは自然であり、あちこち駄目になって死に近づいて行くんだなあと、あるべき道を踏んでいるだけだと思っています。
抵抗してもしょうがない。
健康、若さの秘訣なんてないです。
長生きとかそういうものについて考えたことはないです、健康だったからだと思います。
「それでもこの世は悪くなかった」 表紙に若々しい写真を飾る。
宮城県菅原敦子さんほか
美容健康体力作りに心がけていることは有りますか?
何かを心がけると言うことをしたことのない人間で、その時その時の必要に応じて、例えば写真が若々しく見えても、ヘアメークの人に聞いて下さいとしか言えません。
帯広市山口さん
毎日の生活の中でこれだけは欠かさずやっていますか?
何にもやっていません、何しろ無精者です。
やってはいけないと思っていることは?
栄養剤とか色んな薬はあるが、一切飲まない、健康法は無視する。
わがままに生きていると人間は元気なんでしょう。
好きなものは時に依ります、父はてんぷらは、うなぎは何処のものでないといけないと言うようなものは病人だと言っているのを聞いて育ったので、父の考え方の影響を受けていると思います。
味噌汁は具を入れるな、本来の味噌の味が損なわれると言っていました。
入れるとしたら大根おろしを一つまみ、葱をきざんだものだけで、それ以外の物を入れると叱られました。
今心を寄せている男性はいますか?
いませんね、もう私ぐらいになると男も女もおんなじですよ。
50歳代まででしょうか、寄せると言うより気にいるということだと思います。
寄せるとはほのかな言うに言えない思いがあるが、気にいると言うのははっきりしている。
理想としては大きな人間、小さいことにはあまり気を使わない男性は気にいりますが、今はみんな小さいですね。
昔は男は理性で考えて、女は感情で考えると言うふうに思っていたが、男は女性的に成り、女は男性的になってきて同じ様になってきていると言う感じです。
それがいいとか悪いとかは何とも言いません。
今は男女平等で教育を受けているが、昔は男女別々に教育を受けているので教育の質が違ってくるし、男らしさ、女らしさが有ったが、段々そういうものが無くなってきている。
包容力のある人間の男だったら一番いいと思います。
孫がへなへなを選んできたら、別に文句は言いません。
色んなものにぶつかって、へなへなが直るようなおおきなアクシデントが次々に来ない限りはへなへなのままで終わるかもしれないし、それが生きることだと思います。
人間には無縁の可能性があります。
私は静かさの中に悲しみがあるような気がします。
私は麻雀が趣味で出かけるときに夫との戦いが起こります、自分の趣味と夫の機嫌、どちらを優先したらいいですか?
カラオケに週3回出かけるのが気に入らないのでは?
一人で留守番しているのが厭なのではないか、そこのところをはっきりさせる必要があるかもしれません。
夫婦の間のことなので私に聞かれても判るわけないですよ。
どちらかが最後に諦めるのではないか、それまで待つしかないですね。