2011年7月20日水曜日

青山潤(特任准教授)      ・日本のウナギ 世界のウナギ

青山潤(東京大学大気海洋研究所特任准教授) 日本のウナギ 世界のウナギ
<概要>
日本の海洋生命科学研究者、エッセイスト  東京大学海洋研究所行動生態研究室で、
塚本勝巳教授の下、ウナギの研究に携わる
うなぎの生態 特にどこでうなぎは産卵するのか分らなかったが、長年掛って細かく海洋
を調査するうちに 判明してきた
調査の経緯等を紹介する
ウナギの卵は今まで人類が見たこと無かった 2009年天然で生み出されたウナギの卵
を海で捕る事に成功した
船の上で遺伝子を調べウナギの卵であることを確定する  
今年の初めに英国ネーチャー誌に発表
水産庁と共同研究いろいろなデータを含めようやく受理される
今食べているウナギははぼ100%養殖ウナギ 天然で生まれ川にやってきた子ウナギ
を捕まえて池の中で養殖して大きくしている
この数年激減している  

大西洋にはヨーロッパウナギ これはほぼ絶滅にちかい ワシントン条約の対象種となる
日本のウナギも絶滅が心配で何時なってもおかしくない状況にある
人工的にウナギを作って卵から育てて養殖に回せば自然のものには手を付けない 
日本では1960代ぐらいからずっと続けられてきた
ここ数年水産庁養殖研究所 研究者たちが実験室レベルでは成功している 商業ベース
ではまだ

白鳳丸(学術研究) 海洋丸(水産庁) 4000トン 船長100Mぐらいでウナギ調査 
白鳳丸で卵が捕れた 私は海洋丸に乗っていて見ること出来ず
日本の川に入ってくるのは(シラスウナギと称される成長過程で)約半年 柳の葉っぱの
形状で透明なもの(レプトセファルス)幼生の形で海流に流されながら
グァム島近くの海流に乗って半年ぐらいかけてようやく日本の近くに来てウナギのような姿
に変えてそして川のところに入ってくる
鮭の様には同じ川には戻らない

1900年代初頭にデンマークの海洋学者 ヨハネス・シュミットと言う人が海で捕れた透明な
ペラペラの魚は何なのかという疑問から始まって
ヨーロッパウナギの子供だと明らかにして彼は半生を掛けて大西洋上をくまなく調べて1920年代
にバミューダ海域近くで産卵している事を突きとめる(6000Km)
1960年代から調査進める 日本ではマリアナ海溝当りではとは大凡掴む それが1991年
シラスウナギは冬に捕れるので卵は冬かなと漠然と思っていた (秋に台風で川の流れで
ウナギが下ってゆくのはわかっていたので)
最初沖縄の南当りと判断していた 黒潮に乗ってくるのではないかと考えられるように
なる→たまに捕れても子供のウナギとはいえ大きい(産卵場所ではない)

1970年代調査海域が段々南にずれてゆく→1980年代黒潮の先には北赤道海流があり
、そこまで行って調査する
耳石用解析 魚の内耳にあるこう組織を調べると木の年輪見たいに一日一本ずつ
リングが形成される 冬に捕れるウナギに応用してそれが何時生まれたのか
捕れた日から逆算すると誕生日が判る→誕生は冬ではなく夏だったことが判明した→
調査を夏にシフト

1991年 白鵬丸がくまなく調査したところマリアナの西側で1cmぐらいのウナギの子供が
1000匹捕れた
どうやらこの辺がウナギの産卵場所であろうと初めて判った
プランクトンネットを使って狙い目の場所界隈から生物(プランクトン、小魚等狙いはウナギの
卵)採取する
プランクトンネット:直径が3m、SUSの丸いリング長さが15m 網の目が0.5mm を海中
に降ろして1時間ほど所定の水深で引いて船上に引き上げる
中に小魚、プランクトンとか一杯入っている この中からウナギの卵とかこどもはいないかを
延々と探す

いろんな海の各点でこの作業を続けることにより、どの点で何cmのウナギが何匹、
どの点で何匹とデータが集計され図に表してゆくと全体的な様子が見えてくる
最上流が正に卵が生み出されている場所となる
1993年東大大学院に入学  日本水産学会の歴史の今一番おいしいところをやらせて
もらっている
ウナギの卵の大きさは直径 1.6mm
今回の調査 塚本先生がテーマを掲げている→ウナギが産卵しているシーンを撮影しよう
正確に ウナギが産卵する場所と時間が厳密に判らないと撮影は不可能・・・ウナギの
産卵場所の形成のメカニズムを明らかにしよう・・・テーマ

卵を持った親ウナギは捕れたことはない 産卵後の親ウナギは捕れたことはある
幼生ウナギ→卵 まではようやくたどり着いた
1992年暮 淡青丸に乗り 初めて海洋調査に参加 種子島の近くにゆく シラスウナギ
がどうやって河口にたどり着くのかという調査目的 10日ぐらい
世界に18種類あり 最近われわれが新種を見つけて 19種類ある  
2/3が熱帯域に生息している

日本ウナギは産卵場が判っているが他は殆ど解っていない
インドネシアにはセレベスウナギ、ボルネオウナギがいるがインドネシアと日本が
共同してインドネシアのスライシュ島の北当たりに産卵場があると判定
アナゴも産卵場は全くわかっていない 「ノレソレ」は春捕れるがちょっと前の時期にいくら
プランクトンネットを設置しても全く捕れない
全世界の7割が日本で消費されている(日本はダントツ)

デンマークのヨハネス・シュミット ヨーロッパうなぎの産卵場所をある程度特定した人 
半生をかけて大西洋上を調べ明らかにした
生物学の教科書のコラムに乗ってた→海洋学のロマンと言うか一人の人が一生をかけて
広い海から探し出した
普通ある魚を研究している人はイワシ、サバ、アジ等もやるし、ある領域の魚類に
関する研究する

ウナギを研究する人はウナギだけになりがち、世界的にもそうみたい 
不可思議な魔力みたいなものがあるんじゃないですかね
効率が叫ばれている中でとんでもない時代錯誤が許されている(幸せだなと思う)
ウナギの産卵は新月に行われる 日本から2000km産卵場まで泳いでいく 
(川を出るときには消化管がどんどん退縮してえさを喰わなくなる
肛門も閉塞してしまう)そんな旅での産卵なので多分一回の産卵の後に死んでしま
うのだろうと思っている

ウナギって汚い泥臭い夜行性の魚かなというイメージもあるが真っ青な太平洋のど真ん中 
透明度が何十mもある海で泳いでいると思うと
物凄いギャップを感じる 熱帯域に分布しているウナギがアイスランドとか北極圏にまで
活動している
赤道から北極圏まで 山の川から太平洋の水深何千mと言うところまで 
これが全部ウナギの生活圏だ・・・一体何なんだろうと思う
塚本先生の仮説  ウナギは月のない新月の夜にマリアナの海山で産卵する
  海山:3000m程度の深い海にある山 富士山ぐらいのものまである
(海面から9mぐらいが山頂)

海山 産卵の目印にしているのではないだろうか 深海で産卵していると云う話もあるが
、実はかなり浅くて200m前後ではないかと言われている
 アフリカ大陸の東岸から東太平洋の島々,北は日本までのウナギ属のなかで最大の
分布域を有するのがオオウナギ
 ミトコンドリアDNAの調節領域と,核DNAのAFLP解析により,オオウナギには,5つの
遺伝的に異なる集団があることが明らかになりました

 この5つの集団のなかでは,北太平洋集団が最も古く,ここから他の集団が分化して
きたものと考えられました
 オオウナギは,今,種分化の途中にあるといえます
北太平洋集団 南太平洋東部集団 南太平洋西部集団 インド洋東部集団 
インド洋西部集団