2011年7月16日土曜日

佐藤幸男(78歳)        ・チェルノブイリ原発事故

佐藤幸男(78歳)    チェルノブイリ原発事故
元広島大学  原爆放射能医学研究所 所長
広島原爆の事、 チェルノブイリ原発事故とその対応、影響  福島原発事故 等の比較
1986年ウクライナ チェルノブイリで原発事故発生 放射能はウクライナだけでなく北に接する
ベラルーシ共和国等にまで広がる
50~60回放射能医療調査・支援に行っている
昭和8年生まれで12歳までソウルに暮らしていた 終戦後引き揚げてきた 軍国教育を
受けて軍国少年だった

北海道・日高で宮内庁領地内で12~19歳まで畑仕事をしていた  
作物はバレイショ、トウモロコシ、カボチャ、アワ、ヒエ等 この間学校には行けない状態だった
親戚を頼って広島に行く(親戚は医者) 検査助手の仕事をしながら、定時制高校へそして
広島大学へ(一般の人よりも5年遅れ)
学生時代は原爆に関する医学的講義は無かった 広島大学に原爆放射能医学研究所
が終戦15年経ってから出来た
卒業1年前に出来た 卒業後その研究所の血液内科に入る 
昭和40年ごろで 抗がん剤が出始めたころ 白血病(今は80%ぐらい直るようなってきて
いるが)は当時20%そこそこ

妻は被爆者(親戚の医者の紹介により結婚) 1年間血液内科で研究 →遺伝子優生学部門へ
(岡本先生→亡くなった奇形赤ちゃんの解剖)
目的とするところは被爆の影響が次の世代にどのように現れるのかと言う事で被爆されて
婦人から人工妊娠中絶とか自然出産で亡くなった赤ちゃん
を集めて解剖をするという仕事 40年近くやっている 他にマウス奇形の調査
アメリカ ABCC 原爆障害調査委員会 被爆者の後遺症とか調べる機関 
今までない子供の血液異常に気付く・・・白血病が増えている
ABCCは調査をするが治療はしてくれない モルモット扱いされていると苦情が殺到する
本当に被爆していないから、被爆者の気持ちは判らないだろう(妻からも言われた)

チェルノブイリに行った時にドイツのジャーナリズムが貴方はチェルノブイリをオープンラボラトリーとして
開かれて実験室として来たのかとの質問あり
私は広島から来たけれども広島の原爆とチェルノブイリは違う 当然影響も違う 
私は広島から学べないことをこのチェルノブイリから学びたいと答えたら
ようやくそのジャーナリストは納得してくれた
1986年4月26日 25年前 チェルノブイリで原発事故発生
1990年6月に初めてチェルノブイリに行く キリスト教支援団体からの要請が各国に有
チェルノブイリの問題は単にロシアだけの問題ではなく、全世界の問題であると開催者が挨拶
で力説した  広島も同様でありもっともと思った
小児甲状腺がんの多発があった 事故から5~6年後に増えてきた (20例→50→500→
数千人に達する)

広島では小児甲状腺がんは稀である
ベラルーシ国立ミンスク遺伝性疾患研究所のゲナジーラジウク所長と共同論文をだす
「チェルノブイリで原発事故による遺伝影響についての長期的研究」
セシウム137汚染 即刻退避区域の妊婦と幼児の染色体異常頻度が1986~1988年に
著しく増加した  人工的流産胎児と新生児に認められた
発達障害の頻度が著しく増加した 1986年4月26日(事故当日)~30日に最も放射線の
強かった地域にいた母親から生まれた子供に
ダウン症のピークが認められた・・・こういった影響がでた
広島の場合 15年してから研究・調査しているので初期データはほぼ欠落していると
考えてよい 

ゲナジーラジウク所長は事故の10年以上前から研究しており、事故前のデータと事故後の
データが比較できる立場にある
広島では私はチームとして一万例の赤ちゃんの解剖をする 先生の方は被爆で二万例
を越える 染色体の検査をずっと続けている
大人のがんも増えている 放射線をどのくらい浴びたのか 放射線依存性というが
チェルノブイリの場合線量測定が不確かなのでこれは認められないと保障に対して切られ
しまう場合が多い
よって国際的には癌、白血病が増えたと云う報告は無い
福島原発による放射能汚染は今も続いているわけですが、長期的視野に立って、
今行わなくてはいけない事は 
チェルノブイリに比べ規模は小さいと考えている汚染水(10万トン)が地下とか海に広がると
飲み水、野菜、魚等 食物連鎖で口の中に入ってくるので
その事の予防が非常に大事

そのためには線量測定をこまめに測ることと、高濃度汚染地区は食物連鎖の警戒がずっと
続くと思う
それと定期的健康診断を欠かさずに続ける必要がある
事故の現場処理をしている人達 (チェルノブイリの場合周辺国より予備兵として集められ、
その内容、放射線に関する知識も与えられず時間交代で
作業させられ、30名程度亡くなっている それも公的機関の発表)は被爆量が多いので
基本的なところをしっかり守ってゆく必要がある

人類が放射能をどうコントロールしてゆくか
日本の原子力は安全だと云う神話をいつの間にか飲み込んで了解していた
原子力発電に反対することは文明の流れに反対することだ・・・ある首相のTV発言
チェルノブイリ、福島は一つの節目 次の世代に今後如何に安全なエネルギー源を残すかと
言う事は一つの大きな課題で原子力に頼らない 自然に優しい
健康を害さない 生命にも影響を与えない そういう新しいエネルギー源を開発することを
期待したい