2018年6月23日土曜日

秋山章(友禅作家)            ・婚礼衣装ひとすじに

秋山章(友禅作家)            ・婚礼衣装ひとすじに
昭和6年山梨県生まれ、宮大工の修行に入って3年間働き、或る日婚礼衣装をまとった花嫁の姿を見てその美しさに感動しました。
一生の仕事にしたいと京都に出ます。
最初は振袖を仕入れて販売していましたが、自分が思い描く図案で作りたいと、20代前半で会社を作りました。
87歳になる現在も結婚式で花嫁が輝く姿を夢見て婚礼衣装を作り続けています。

私はシーズンとか関係なく、仕事は忙しいです。
作品が仕上がると過去になります、新しさに向かって力が欲しくてもがいています。
ファッション、服飾を作っているのではなく、日本の結婚式という儀式の衣を作っているので、根本的なものは祈りと儀式です。
出会ったことへの感謝の祈りと人と人とが結ばれる結婚式、人間として最高の儀式であると思うので、自分を育ててくれた周りの人に感謝を伝えながら美しい花嫁になっていただきたい、これが望みです。

作品は全て絹の白生地から染めています。
白無垢、白い絹の生地に菊、桜等の花、鶴などの伝統模様が刺繍、金箔などで描かれた上品な作品。
うちかけは本手描き友禅、金箔細工、螺鈿細工が施されていて光り輝く豪華絢爛な衣裳。
金彩工芸は私の特徴です。
本手描き友禅の上に金箔、銀箔、螺鈿が豪華に描かれている。
衣裳は重くはなくて、友禅の一番の特徴は女性の体をまろやかに包み込み、シルエットが綺麗に作れます。
京友禅は総称でその本手描きは全部手で作ったものが本手描き友禅です。
友禅は江戸時代に京都に住んでいた絵師宮崎友禅斎さんが始めたと伝えられている。
色が滲まないように糸目に糊を置いて他の色と混じらないようにしていった染めの方法が友禅染めです。
京友禅、江戸友禅、加賀友禅それぞれに特徴があります。
京都の本手描き友禅の場合は、作品が美しくなるためには自由に取り入れます。
加賀友禅は友禅で仕上がっている、金彩、刺繍などはしていなくてシンプルです。
作品が美しくなるためには自由なので、私は人のやらないことばっかりやってきました。
私は婚礼衣裳しか作れません。

昭和6年山梨県生まれ、尋常小学校を卒業して昭和20年14歳で終戦を迎える。
自由が来ると思ってホッとしました。
父が宮大工で3年間修業をする。
短い期間徹底して教えてもらうべき、一道抜ける、その言葉を父から叩きこまれました。
修行のその期間が私の人間、心を作ってくれたと思います。
婚礼衣装をまとった花嫁さんに出会って、衝撃を受けてころっと自分の人生観が変わってしまいました。
父は亡くなってしまっていて、違う道に進むことに母は許してくれました。
京都に行き、黒振袖を問屋で仕入れて販売をしました。(技術、知識、お金も無かったから)
色とか柄に就いて問屋さんに訴えたが聞いてくれなくて、職人を呼んでいただいて、自分流に作っていただくことから始まりましたが、スムーズにはいかなかった。
職人から無理だと言うことで自分で作ることを考えました。(20歳)
積んである生地、職人が持っている色を使って、職人と触れ合うことになりました。
全部自分流で繰り返しながらやってきました。
友禅に入れたのは友禅を知らなかったからで、奥行きの深さを知りませんでした。
ものを作る喜びは一面に有りますが、とにかく苦しさの連続でした。

20,30代は人の何倍も働いたと思っていて、ストレスも感じました。
良い物を作りたいというストレス、思うように仕事が進まない、そんな中で黄疸になり肝硬変になり3か月入院してしまいました。
それまで一日80本、酒も飲みました。(ストレス、心をいやす為)
無謀だった自分に気が付いてその時から煙草はぷっつりやめて、酒も薬程度しか飲まなくなりました。
その時から朝の運動(1時間40分)を始めました。(今は2時間運動)
食事も周りが気を付けてくれ、よく眠るようにしました。
結婚も多様化しています。

挿友禅、金彩工芸、螺鈿細工に付いて。
アトリエには天の恋人がいて、恋してして恋してこういうものを着せたいと思って作っています。
アトリエの仕事が一番エネルギーを使います、そこで職人さんへの指示書が仕上がると80%終わります。
友禅は基本的には一工程一人でなければいけない。
色を作ることが一番大事ですから、色が決まるまでに時間がかかります。
ぼかし、色の組み合わせなど、ちょっとした違いでも変わって来る。
職人とは怒鳴ったり、喧嘩をしたりしてやっています。
金彩工芸は苦労して開発してきました。
金の中に銅、銀とか混ぜてどう調和をとっていくかということで、どの工程でも一流でないとバランスが取れないといけない所に難しさがあります。
職人は身内、分身です、信頼関係が大事になっていきます。
みんな個性を持っているので、心を一つにするということが大事で、そうしないと一枚のうちかけは仕上がらないと思います。
螺鈿細工は重箱など硬いものの素材に一般的に使われていますが、布に使うのは稀で且ちょっとの処にしか使っていませんが、私はもっと広い面積に使います。
美しいものに憧れていて色々工夫して取り入れ、理想を追い掛けています。
同じうちかけを親子3代で使われているという話も聞いています。
作品はいつも生きている、老いない、枯れない、朽ちないということがとっても大事だと思っています。