2018年6月18日月曜日

木場大輔(胡弓奏者)           ・【にっぽんの音】

木場大輔(胡弓奏者)      ・【にっぽんの音】
案内役能 楽師狂言方 大藏基誠
胡弓 竿の長さが三味線の半分、材質 棹にインド原産の紅木 (こうき)、胴は中国原産の花梨(かりん)で出来ている。
縦に構えて弓で弾く、弓は紫檀、花梨、竹などで出来ていて毛は円筒状に束ねた馬尾毛を使って緩めに無造作に束ねているような状態。
弦を擦って音を鳴らす原理の楽器を擦弦楽器と言って、擦弦楽器としては日本では唯一の楽器です。
約400年の歴史のある楽器で江戸時代初期にはすでに記録が残っています。
三味線、琴の後方の目立たない様な位置で演奏します。
胡弓が主役になる曲はほとんど残っていなくて、古典の世界で言うと「鶴の巣籠」「蝉の曲」「千鳥の曲」の三曲が西日本における伝統的な本曲として有ります。
江戸の方でもいくつかありましたが、ほとんど演奏することはない状態です。
大抵三味線と一緒に演奏されて、単独では演奏されることのなかった楽器です。
伊勢神宮への参道で街道を行き来する人達に路上で聞かせていた、女性の芸能者たちが演奏していたり、それが歌舞伎の中に取り入れられたりしています。

中国の擦弦楽器である二胡とよく間違われるが、二胡は弦が二本しかないが、胡弓は三本有ります。
二胡は二本の弦の間に弓の毛が挟まっていて、弓の毛の裏側、表側の両面を使って二弦を弾き分ける、世界でもまれな構造をしている。
胡弓の弓は楽器から独立している。
雅楽の時代を除くと明らかな外国起源の音楽が曲として残っていなくて、おそらく外国から楽器自体がやってきて曲と一緒に伝承されると言うことはないと思います。
胡弓は哀愁が漂う音です。
指ではじいて鳴らすこともできる。(三味線のような演奏)
弦二本同時に演奏することもできる。(二本同時に音を出せ音の深みが増す)
義太夫のように激しく演奏することもあります。
新しい奏法も有ります。(昨年作曲した「空中都市」という一部分を演奏)
弦を一本足して四弦にして低音域まで音源が広がっています。

大正時代に宮城道雄先生が開発された宮城道雄胡弓あるいは大胡弓という楽器が有ります、三味線と大きさがほとんど変わらない胡弓があるが、大胡弓の音域を兼ね備えた楽器としてこの四弦胡弓を8年掛かりで作りました。
古典曲も演奏できるし、新しい表現もできます。
三味線、琴の演奏家が伸びる音が欲しい時に胡弓に持ち替えて演奏すると言うスタイルなので、胡弓を前面に押し出して活動してくると言う人が出てこない形なので、そこを何とか誰か一人でも変えて行く様な演奏家が出て来ない限り、ずーっと胡弓は影の存在であり続ける宿命を背負っている楽器なので、私は胡弓に出会って魅力を感じるものがあってこの楽器に人生を捧げてみようかと思っています。

父がフォークソングが好きで歌っていてギター、バンジョー、コントラバスが家にあったが触ることはあまりなかったが、エレクトーンを中学の時に習い始めてピアノをやろうとして、ジャズピアノを始めました。
高校生の時に作曲に興味を持っていました。
世界の楽器にも興味を持っていました。
二胡も面白いと思って大学で一年間習いました。
二胡をやっていくうえで伝統音楽の体系を習わないといけないということもあり、二胡の音色は魅力的だが自分のものにはならないのではとの思いもあり、悩んでいる時に胡弓という別の楽器があるらしいということを見聞きして、胡弓の存在を知りました。
(それまで二胡を胡弓と勘違いしていた面が有った)
原一男先生に習い始めました。
胡弓の背負ってきた歴史を考えると、胡弓に専念する人が出てこないから知られない楽器で居続けたのかと思って、自分が胡弓に専念して胡弓の為の作品を作って胡弓の可能性を色んな方に知ってもらいたいと思うようになりました。

*「焔(ほむら)」 胡弓に秘めた炎を爆発させるような表現にしたいと思って作った曲です。

日本の音 僕は余韻だと思います。
日本人って、ぱっと出た瞬間の音ではなくてその後に響いている余韻の方を聞いていると思います。
琴、三味線とか撥弦楽器のような余韻を楽しむのが日本の音感覚だと思うので、胡弓のように音の伸びる楽器はともすると撥弦楽器の余韻を殺しかねない。
胡弓がメジャーになれない一つの要因だったのかもしれない。
胡弓の演奏技法を工夫すれば同じ様な余韻を表現できるので、余韻ができるように工夫をしていて、もっと胡弓が余韻を楽しめる楽器として広まってくれたらなと思っています。
優れた独創曲を発信すること、胡弓のアンサンブル 琴、三味線、三曲合奏があるが、胡弓だけでアンサンブルを組む、その面白さの可能性を色々胡弓の低音域を開発したりしてもっと広めていきたいと思っています。