2013年6月21日金曜日

米沢冨美子(物理学者)      ・人生はいつでもチャレンジ 2

米沢冨美子(物理学者・慶應義塾大学名誉教授) 人生はいつでもチャレンジ 2
日本物理学会は2万人の会員がいる  100年の歴史があるが、女性が会長になった事は無く会員の3%  500人ぐらいなんです
直接選挙で選ばれたので、立候補したのではなくて、推薦も勝手にされて、自分も候補者になっているのも知らなかった  
選ばれて、どうしてだろうと思っていた
或る時アメリカで国際学会があり、女性が会長になるというのは、アメリカでも100年の歴史の中でも、2人ぐらいしかいない 
日本は女性が会長になったんだってね、凄いじゃないかとアメリカ人の物理学者の人が言ったら
それを聞いた日本人の物理学者の人が 「え、女 誰 とか言って 米沢なったんでしょうと言ったら米沢は女だったね」と そういう感じだった  
じゃあ なんだと思っていたのかとの問いに 科学者だと思っていたと答えて、男、女の前に科学者であるとの認識に嬉しかった

会長就任の翌年に、「金属、非金属転移の新機構」という新たな論文
私の人生の中で、年に5本の新しい論文を書いてきて、200数十偏の論文を書いたのですが、その中で一番大きなものをあげなさいと言われたら、不規則系に対する理論と 金属から非金属(絶縁体、半導体)に移る条件が変わったら(温度、圧力の条件) どういう風にうつるか、のメカニズムがいくつかあって、今まで知られていなかった新しいメカニズムを理論的に発見した
後で他の人が実験をして、裏付けられた

発見 或る日 突然降ってわいたように出来るものではなくて、毎日毎日 毎日毎日 積み重ねて、考えに、考えた末に 或る時、ふっと、半分起きているようなときとか、風呂に入っているときとか、リラックスしているときに、思い浮かぶことが多い
ちいさな発見がいくつもあって、時によって大きな発見があるような感じ
発見の喜びがしばらく有って、これをどうやって論文に書こうかと、思いが来る
恩師に言われたが、研究は 実際に研究している時だけが研究ではなくて、全ての時間とエネルギーを3分割して、最初の1/3はどういうテーマで研究をするかを探しなさい  テーマを選んだ段階で勝負がついてきてしまう  次の1/3で実際に研究して、最後の1/3でどのようにこれを世に知らせるか、どのように論文を書くかが大事だと 言われた

2005年 ロレアルユネスコ女性科学賞 授賞式で女性と科学に関して話をする
この賞は女性科学者のノーベル賞と言われていて、ユネスコの事業 本部がパリにあり、パリに行って賞をいただく ここで受賞する
科学は直感と忍耐が必要 その席で生物学的に女性の方が科学の方に向いているといった
みんなが凄い喜んで大喝采でした  (実際には性差はない)
日本はあらゆる分野で女性の社会参加、社会進出が遅れていると思います
世界中で、100数十カ国あるが、下から数えて10番以内にはいっているのが日本なんですね
国会議員とか、地方自治体の議員とか  リーダーになる人が少ない

ながい時間(何百年 何千年)をかけてきた構図だとすると、一朝一夕には変えられない
何百年かかるかもしれないが、その方向に持ってゆくように、少しでもと考えています
輝ける星がいると、そういう風に向かっていくことができる
米沢賞が2010年、吹田市の市長が発案されて、市内の小学校、中学校に自由研究を出して、9月に米沢賞、市長賞、教育委員会賞を選ぶ事になる
第一回、第二回も400件ぐらいの応募があった 大賞を選んだが、第一回も第二回も小学6年生の女子だった  第三回、昨年は小学5年生の女子だった

研究成果を見ると親のサポートがあるとわかるが、そのサポートをしているのがお母さんです
それが嬉しかった 
親は大事 そういう親は理系に子供が進むことに対して、寛容であるように思う
母親の介護にかなりの時間を占めている 母親は95歳 介護は7年目に入る
私にとっては遠距離介護   要介護5なので 24時間誰かが付いていないと、いけないという状況なんですが、母自体が凄い意気健康で 寝ている状態から、座る状態に手を借りないと自分で座れないが、30分、1時間座って 新聞を端から端まで全部読む、口も達者ですし

母が5歳の時から住んでいるうちなので、ここから出てはいかない
母の介護は、将来の自分を見ているような気がするし、人間の生きるという事、死ぬという事を毎日突きつけられているような、生命力と言うようなものを、かえって母から学んでいる様な面がある
とても厳しい作業ですが、今世の中を見てみると、親の介護、配偶者の介護、兄弟の介護をしている人がたくさんいる  
そういう話を聞きながら自分一人ではないのだと思う事もとても心強い
人生はチャレンジだと思う 
育児、研究の両立もなんだ、と思ってやってきたので、だから介護と研究の両立ぐらいなんなのさ、と言う風に自分で思っている
そう思えば生きて行く上で、平坦な人生なんて退屈じゃないですか、いろんな事があってそれをチャレンジしながら、生きていくというのが面白いわけで、私にとって今一番大きなチャレンジの一つと思って、チャレンジしています(新しいプロジェクトだと思っている)

時間的な制約はある 自分自身が高齢になってきているので、残された時間と私自身がやりたいことを較べると、1分、1秒が大事だと思います
自分自身の体力を保つことも大事 食べ物に注意したり、太極拳、ウオーキングしたりしている
生きるモットー 
①自分の可能性に限界を引かない  
②まず行動に移す  
③見切り発車すると壁にぶつかるが、そこでめげないで新しい道を探す  
④限られた時間なので優先順位を付ける
⑤集中力を養う

映画、コンサートよりも、なによりも研究をして、新しいことを発見するその喜びに勝るものは無い  70何年、一番やりたいことしかしてこなかった
ネガティブに考えることが欠落していると思う 
前向きにしか見ない、それが効率がいいような気がする
「金属、非金属転移の新機構」は本に昨年、しっかりした専門書にすることができた
「不規則系の新理論」の本を書いている 今年中に仕上げたいと思う
日本語だけにはとどめたいとは思わないので、世界的読んでもらうために、英語の本を出版する計画中です
今日私があるのは、父が戦死したあと、一人で働きながら育ててくれて、大学まで行かせてもらったので、母を世界一幸せなお母さんにしてあげたい それが私自身の喜びでもあるわけです