山極壽一(霊長類学者 人類学者) ・「過疎」を強みに地域力復活!
山際さんは現在73歳。 ゴリラ研究の第一人者として知られ、アフリカでゴリラの暮らしを体験しながら、これまで40年余りに渡って家族の起源や人の社会の成り立ちを探って来ました。 2021年からは京都にある総合地球環境学研究所所長を務めてます。 今特に関心を寄せているのが、人口が減って活力が失った地方の復活です。 その手掛かりを探ろうと過疎地を巡りその土地の自然や文化を生かした教育プロジェクトを熱心に視察しています。 若者たちに土地の魅力を伝え知恵をつけるのは、地元に住む高齢者たちだと語る山際さんに活力ある地域社会を取り戻すためのヒントを伺いました。
4年かけて色々なところに行きました。 一番印象に残っているのが鹿児島市と霧島市との間に姶良(あいら)市と言う場所があって、山奥に新留(にいどめ)小学校と言う廃校があり、改築して新たに小学校を立ち上げようというプロジェクトがあります。 古川理沙さんとその娘さんの瑞樹さんという人と、秋田からきている丑田さんの3人が発起人となってやっているところです。 全国から企業家とかデザイナーとか建築家とか集まって、どういう素敵な小学校にしようとするのか、どういう企画をしようか話し合っています。 会合に呼ばれて行きました。 「普通の小学校プロジェクト」と言います。 普通と言うのは土地土地によって違います。 薩摩の地鶏を2羽、羽根をむしったりして、さつま揚げの煮込みを作って、皆で食べるという事をしました。 大きなカツオをみんなでさばいて、カツオのたたきを作って、味噌つくりも一緒にしました。 自分たちで作った地元のものを美味しく食べましょうと言うのが狙いです。 知り合いで、皆が食材を集めてくれるわけです。
買ってきて食べるというのでは、自然災害があった時など自力で生活が出来なくなってしまう。 古河さんは子供たちの食や安全や遊び、学びについてこれまで長い経験のある人です。 高校生の意見を反映させながら、普通とは何かと言う事を考えて、そのコンセプトは昭和の小学校に近いものです。 自然の中で自由に考え、好奇心を燃やして、一緒に食べ、学び、と言った日々を送らせたいというのが「普通の小学校プロジェクト」です。 結果的に子供たちが生きる力を育てることになる。 来年4月に開校予定です。 地元を対象にした小学校ではなくて、全国からやって来る小学生を対象としています。 地元のおじいちゃんおばあちゃんが子供たちと一緒に遊んだり学んだり、食事を作ったりしていこう言う話です。 親もやって来る。 宿舎もあり、人が集まればいろんな産業が勃興してゆくので、地域おこしにもなる。
島根県の隠岐島に海士(あま)町ところがあります。 そこでベンチャーをやっている安部?さんと言う人がいます。 ここに高校を作りました。 ここに全国から高校生が集まってきて、自由な学びの場を楽しんでいます。 午後には海に飛び込んだり、畑仕事を手伝ったりしています。 おじいちゃん、おばちゃんたちが伝統的なお祭りのやり方を指導して、御輿を担いだりしています。 都会の若者たちが来て満足できるような素敵なホテルを海辺に作っています。 その高校は日本で有名になりました。
「過疎は強みだ」と自覚したほうがいいです。 ゼロから始められる。 過疎だから自分のアイディアがそのまま生きる。 地域は自立しないといけない。 江戸時代は日本国内だけで自足していた。 都会に人口を集めてしまった結果、地域が疲弊してしまった。 江戸時代は藩ごとに自立していたが、明治維新以来地域のことに目を向けなくなった。 地域が自立できなくなった。 地方に仕事がないというが、僕は逆だと思う。 人が集まれば仕事が出来る。 教育は人を集める大きな糸口になる。 そうするとホテル、喫茶店などもできる。
岡山県に西粟倉村と言うところがあり、京都大学の農学部部出身の牧大介さんと言う人がベンチャーをやっています。 林業で栄えた村ですが廃れてしまった。 木材として利用するだけではなきうて、木っ端を肥料にしたり、ウナギの養殖に使ったりして、漁業と林業をリンクさせて総合的な村おこしを始めた。 森の学校も作った。 木工所が残っていて、指導者は80歳を越えたおじいさんで、労働者はほとんどが若い女性なんです。 木工品を売るのには若い女性のアイディアが生きてくる。 すでにある施設を使って新しいことをやる。 役場だけは新設で世界的に有名なデザイナーのもので、全国から見学にやって来る。 各地とネットワークでつながることによって、発展する。 地元の人が新しいことを受け入れないと起こらない。 慎重な議論が必要。 若い人のアイディアと高齢者の知恵が合わさって新しい発想が出来るようになったらしめたものです。
一番重要なのは危機を察する心、感覚を持っているという事です。 今、大人も子供も知識ばっかり寄せ集めて生きてる。 そこに知恵を働かせて生きていない。 都会では年配と若者の出会う機会がなくなってしまっている。 試す自然が遠ざかってしまっている。 年配の人の知恵を生かせる機会がない。 自分のやれることを失わない事。 ものつくりを通して子供たちと触れ合う。 老いたことによって違った魅力や力が出てくる。 自分でやらずに他人にやってもらう。 自分が発想したことを自分でやらずに、あたかも他人が発想したかのようにして、やったかのような知恵が必要です。 それで若い人の手柄にしないといいけない。 知恵の部分は衰えないので、そこを上手く使う事は必要です。