片岡浩史(腎臓内科医(東京女子医大)) ・腎臓病と闘う
片岡さんは京都大学卒業後、JR西日本に入社し駅の改札業務や電車の車掌業務などを3年間経験した後、医学の道に進んだという経験を持っています。 現在、東京女子医科大学で腎臓の内科医として治療、研究に当たるとともに、厚生労働省の診療ガイドライン作成委員として医療の質の向上に努めています。
腎臓は尿を作る臓器です。 食べ物を食べて、口、食道、胃と行って最後は排泄されるわけですが、胃、腸管を通って吸収されて身体が作られて行きます。 心臓が全身に血液(酸素、栄養素)を送って行き、人間が生きているわけです。 食べ物も必要なものと必要ではないものがあります。 毒が入ってきたら出すというのが腎臓で大事です。 水分の中に毒素を溶け込ますことによって外に出すことができるのが腎臓の大きな役目だと思います。 栄養を摂り過ぎたらよくないので、調節するのも腎臓の役割となります。
腎臓は沈黙の臓器と言われていて、症状がないんです。 検査しないと判らない臓器なんです。 日本には検尿システムがあり世界でも優れたシステムです。 タンパクと潜血(尿に血が混じる)が大きな項目です。 タンパクが出てくると腎臓に何か起こっているから調べましょうという事になります。 血液もクレアチニンとEGFRという項目があります。 腎臓が悪いとクレアチニンの数値が上がって来ます。 EGFRが60を切ってくると腎機能が落ちてきている、腎臓病の指標になります。 3か月以上続くと慢性腎臓病という事になります。 2000万人近くいると最近は考えられています。 腎臓が悪くなると機械で毒素を捨てなければいけなくなります。(人工透析) 人工透析する人が30万人以上いると言われています。 4時間ぐらいかかります。(26L) 薬を飲んで治るものではないです。 腎臓移植は根本的治療にはなります。 移植する側の腎臓が片方になっても大丈夫という事もあります。
片方の腎臓で100万個のおしっこを作る装置があります。 それが1/10、1/20となってくると身体が維持できなくなる。 腎臓を働かせすぎると潰れてゆくのが早くなってゆく。自分の寿命と腎臓の寿命を比べた時に、腎臓の方が早く潰れてしまうと透析をする生活になる。 健康診断、人間ドックとかでしかわからない。
JRに入って街づくりをしようかなという思いがありました。(地域開発) 岡山駅で一日何万人という人を見ているうちに、困っている人を助ける、介護の道を考えました。 兄、叔父も医師だったので、その後医師の道に進んでいきました。 命に係わる病気を心配してくるので、人の心配に対してどうこたえるのか、というようなことは大事なのかなと思って、患者さんの不安とか悩みを如何にとるか、というのが大事かなと思います。 不安に対するタイプがいろいろあり、それに合わせた話をする。 病気の重要性は変わらないのでそれをちゃんと伝えられればいいと思います。
腎臓病には薬が必要な腎臓病、生活習慣による腎臓病と二つにわけられる。 生活習慣による腎臓病は、家での生活を変えるということしか勝ち目がないんので、確認してもらいたい。 肥満は全身の臓器が衰えてゆくことに関係しています。 肥満から動脈硬化になって全身の臓器がやられてゆくというイメージは持っておいてほしいです。 タバコも同じような流れです。 何十年を掛けて進んでゆく。 肥満は自分で直せるところなので,透析は少しでも減らしたいというのが、腎臓内科医としてのスタンスです。
「心理的安全性」、企業でよく言われるが、人とか組織が最大限力を発揮するのは、精神的安心感、心理的安全性がないと駄目だというビジネス世界の言葉ですが、社会、医療の現場でも同じだと思いました。 26歳で社会に対して自分が何が出来るかという事を考えて、出来る限りの勉強をしてきて、医者になり30年近くなります。 人として完璧を目指そうとか、理想的な社会を目指そうと思って努力しても、決して完璧には辿り着かないという風には思いました。 これが正しいと思った医療を振りかざさない、患者さんがどんな医療を求めているのか、聞いたうえでその人それぞれ、合わせて落としどころを付けてゆく。 相反する意見を言うという事は、両方とも半分は間違っている、完璧でないものが戦っている。 その人の仕事、生活のなかで行ける努力をする、それをすればそれが答えだと思っていつもやっています。 肥満を、痩せることによっていい結果が出てきます。一人一人の属性に合わせて医療をしてゆくようにしたいなあと思います。 体重とか食事に気を付けていただければいいと思います。