2017年5月9日火曜日

松本暁子(宇宙航空研究開発機構) ・宇宙医学を地上のくらしに

松本暁子(宇宙航空研究開発機構フライトサージャン) ・宇宙医学を地上のくらしに
日本人宇宙飛行士毛利衛さんが初めてスペースシャトルで宇宙に飛び立ったのは1992年のことです。
以来25年 日本人宇宙飛行士12人が19回のミッションをなし遂げました。
そうした宇宙飛行士の活躍を支えて健康を守る専門医をフライトサージャンと言います。
世界でも数十人しかいません。
その一人、JAXA宇宙航空研究開発機構のフライトサージャン松本さんに伺います。
松本さんは東京医科歯科大学医学部を卒業し、神経内科医として勤務した後、2001年宇宙開発事業団に入りました。
アメリカの大学院で宇宙航空宇宙医学を学んで、JAXAのフライトサージャンとして数々の宇宙ミッションをサポートしてきました。

フライトサージャンは一言で言うと、宇宙飛行士の健康管理を担当する医師で、医学的な面で研究したり健康管理をするということを専門にしている医師と言うことです。
地上から100km以上を宇宙空間と言いますが、国際宇宙ステーションは400kmのところにあります。
1961年旧ソ連のガガーリン飛行士が宇宙に行ったが、今は国際宇宙ステーションでいろんな国が参加して共同でやっています。
ISS、世界15カ国が作っている有人宇宙ステーションで、サッカー場ぐらいの大きさ。
90分で地球を一回廻るので16回朝夜が訪れます。
朝起きて地上と交信して、ミーティングを行い、一日の作業をして、運動したりもあります。
夕方ミーティングがあり、プライベート時間もあります。
作業時間は6時間半、運動時間は2時間ぐらい、エアロビックな運動と筋トレの運動します。

宇宙に行って初期のころは宇宙酔い、体液が頭の方に移動するので顔とかがむくむと言うような変化が起こります。
筋肉とか骨が弱って行くのが徐々に出てきます。
宇宙飛行士とはかなり前から担当するので、宇宙飛行士との会話などから大体わかります。
宇宙飛行士とは2週間に一回、ビデオを見ながら宇宙飛行士と医学的な会話をして健康管理をやっています。
2010年4月に山崎直子さんがスペースシャトルで宇宙に向かったときに初めてクルーサージャンをしました。
野口聡一さんがISSの長期滞在していてすでに滞在していたので、総勢13名いました。
その時に4名が女性飛行士でした。

力仕事は重力がないので負担ではなくなるので、物資の輸送でも女性が出来ますし、実験も得意な飛行士もいるので女性だから難しいと言うことは特にはないと思います。
ISSでは英語とロシア語で会話をしています。
若田光一さんが長期滞在したときにクルーサージャンとして担当して、最初はフライトエンジニア、後半は船長として行きましたが、ソチオリンピックがあったのでロシアではオリンピックトーチをソユーズに乗せて、EVA(船外活動)でリレーみたいにやってトーチを地上に持ち帰ったと言うことがあります。
若田さんはこの時4回目の飛行で、後半は全体の管理の役割をして、私自身も緊張感の高い日々を過ごしました。
188日のミッションでした。
その時宇宙船の不具合があり、EVAで処置もしました。
EVAの時は血圧、心電図とかを下からモニターしています。

スペースシャトルの場合は滑走路に戻ってきますが、ソユーズの場合は帰る時はカザフスタンのこのエリアとかだいたい決まっていて、着陸したところに我々がヘリコプターで向かう訳です。
一般的には2年ぐらいの訓練があります。
若田飛行士は11月に上がって5月に帰って来て季節としては良い季節でしたが、油井亀美也飛行士の時は5月の予定が延期されて7月になり、非常に暑くて、外の気温が40度を超えて、健康管理には気をつけます。
感染症にならないように2週間前から隔離して、関係者だけの生活になります。
宇宙ステーションには窓があり、故郷の地球が見えて宇宙飛行士の人気スポットです。

シャトルの時は数日間隔離して宇宙飛行士と一緒に打ち上げ前の日々を過ごしましが、シャトルの打ち上げは非常に迫力があり、身近で見れたのは印象に残っています。
シャトルは音も光も凄いです。
入念に計画してその通りに進めようとしているが想定外が起きて、先を考えてミッションに臨むが想定外のことが起きた時にはフレキシブルに対応すると言うことを考えています。
国が違って、言葉、文化の違いはあるが、一緒にミッションを達成する喜びは大きいです。
宇宙飛行士によってそれぞれ変えて居て、体調を感じるのは本人なのでその人がやり良いようにということでサポートするようにして来ました。
「大胆かつ繊細に」 全体を見ながら宇宙飛行士の健康管理は繊細にと言うことを心がけて来ました。
信頼関係を大事にしながら管理し過ぎないようにサポートをさせてもらいました。

子供のころは星空を見たりするのは好きでしたが、医者になって或る時に母が人体も小さい宇宙だと言った時があって、そこでちょっと結びついたようなところがあり、宇宙医学という言葉を知って、宇宙に行ったら人間の体はどうなるとか疑問に思ったのがきっかけでした。
人間の体は新しい環境に対応するようにできて居て、宇宙酔い、体液が移動すると言うことも、新しい環境への適応の段階だと言うふうに考えることもできると思います
一生懸命仕事をしていれば見て居てくれる人がいて、頼まれるようになって信頼関係が築けたのかなあと思います。
地上医学と宇宙医学は別物だはないと思っていて、それぞれ活かせると思うので双方向の成果の関係で、関わるものとして少しでもお手伝いしたいと思います。