岡﨑育之介(映画監督 脚本家) ・忘れてしまうその前に(岡﨑育之介)
岡﨑さんは東京都出身の31歳。 祖父である放送作家の永六輔さんの背中を追うように、芸能の道に進みました。 18歳で俳優としてデビュー、その後バックパッカーによる世界一周や脚本学校での学びを経て、26歳から作品制作をはじめました。 来月2日からは監督、脚本を務めた最新作「うおっしゅ」が公開される予定です。 風俗店で働く女性が認知症の祖母を一週間限定で介護することになり、とまどいつつも新たな関係を紡いでゆく物語。 岡崎さん自身の祖母とのかかわりが、ヒントになったと言います。
一見かけ離れている様な認知症と風俗との二つを結びつけて描こうと思ったのは、脚本を書く時に二つのことを共通項として見出そうと思って、共通点として洗うという事、二つ目が忘れられるという事。 祖母が老人ホームにいます。 たまに見舞いに行くが全く僕のことを覚えていない。 行く意味があるのかなあと思う様になりました。 本作を作ろうと思った時に取材をしようと思って面会を求めました。 寝坊して時間に行けませんでした。 これを描くべきだと思いました。
僕は認知症の原因は孤独なんじゃないかと思っています。会う意味がないのは祖母が僕を忘れているからだと思っていましたが、 逆でぼくが祖母をないがしろにしているから、祖母が後天的な認知症になったんじゃないかと思いました。 人と関わる機会が減る、人から覚えられている機会が減ることによって、認知症は後からなるんじゃないかと言う解釈をしたんです。 忘れられているから忘れてしまう。 それがソープ嬢、風俗嬢がお客さんと一時的な愛情関係で接するが、店から出るとすぐ忘れてしまう。 そういったことと近いと思いました。 その二つを結びつけたのがこの作品の起点です。
「うおっしゅ」は柔らかいイメージという思いがあり平仮名にしました。 中尾優香さんと研ナオコさんのダブル主演になっています。 研ナオコさんはファニーなキャラクターとしてイメージが合うと思ってお願いしました。 「妥協するなら出ません。」と言われました。 徹底してやりました。 決められた介護は決していいものではないと思うんです。 見終わって、おじいちゃんおばあちゃんに会いに行こうと思って電話してもらえることが起きたら、作った意味があると思います。 行動の端緒になってくれればうれしいと思います。 デビュー作が「安楽死の勧め」 コメディーに描いています。 死は僕にとっては切っても切り離せない人生の重要な事柄です。
高校生で芝居の面白さを知りました。 18歳で俳優としてデビューしました。 いまは 監督、脚本家です。 22歳の時に祖父が他界したことは大きかったです。 演者側として祖父と並ぶことは出来ないから、作り手側に回ろうと思いました。 祖父永六輔は怖かったです。 祖父は照れ屋で愛情表現はしなかったけれど、ちゃんと僕たちのことを見守ってくれていたんだと、エッセーを読んで衝撃でした。 18歳の時に俳優になるという事を母と共に祖父のところへ行っってどういわれるのかなと思ったら、「楽しめ」と言われて、やっぱり相手にされていないんだなあと思いました。 今になってみると「楽しむという事」はどれだけつらい、どれだけ大変な仕事でも「楽しむ」という事がどれだけ重要な事かというのが、10年以上たって身に染みています。 祖父は晩年パーキンソン病にかかってしまいました。 祖父は10秒間無言の放送をして、その10日後に他界しました。