2021年11月5日金曜日

立川談慶(落語家)          ・噺(はなし)家と作家の二刀流に燃える

 立川談慶(落語家)          ・噺(はなし)家と作家の二刀流に燃える

立川談慶さんは異色の経歴を持つ噺家です。  慶応大学経済学部を卒業し、大手下着メーカーに就職しましたが、大学時代の落研で知った落語の世界が忘れられず、敬愛していた立川談志さんに弟子入りしました。   前座から二つ目に上がるまでは通常の2倍の9年半かかりあましたが、必死の努力の結果、二つ目から真打には通常の半分の5年で昇進しました。    その後は落語はもちろん司会、著作家、NHKのラジオ番組のレギュラーなどを務めるなど多彩な才能を発揮しています。  今年は初の小説も出版し、不器用でも一生懸命頑張ればいつか良いことがあるという自伝的な言葉は恵まれない境遇で頑張るあらゆる人たちへの熱いメッセージとなっています。  噺(はなし)家と作家の二刀流に情熱的に取り組む談慶さんに順風満帆ではなかった人生から得たものの大切さや、家元談志の教えなどを伺いました。

NHKラジオの【らじるラボ】『らくごフムフム~落語に学ぶ人間の本質~』というタイトルの番組に出演しています。   落語は人間の心理を突いているので、今の世の中を分析することは勿論、未来を予言して居るのではないかという、そういう見方もできるわけです。  11月21日が談志没後10年になります。     

大学時代に落語研究会に所属していまして、卒業時期に落語家になりたいなとは思いましたが、(33年前 バブルの真っ盛り)談志の事務所の人から3年は会社に勤めてからでも遅くはないと言われて、会社に勤めてから談志師匠の門をたたきました。  18番目の弟子でした。   3年間の会社勤めのうちに古典落語を30席ぐらい覚えていました。  20席入門してから覚えれば、自動的に二つ目みたいなことを描いていました。  師匠の基準も変わってきて、踊り、歌、音曲なども全うしないといけないという事とになってしまいました。   談志師匠が求める歌に関して時間がかかってしまいました。  二つ目に上がるのに9年半かかってしまいました。  正調の小唄を習って談志師匠が求めるものとは逸脱してしまっていました。   「俺に殉じてみろ」とはっきりと言われて、「15年かかって俺の基準を全うしてみろ。  30秒二つ目をやって15年30秒で真打になってみろ」と言われました。   二つ目で「談慶」という名前を貰えました。   真打で慶応出は現在私一人です。   二つ目から真打になるには古典落語を100席覚えないといけないんです。 

親の小言と冷酒は後から来ると言いますが、談志の小言は後から来ますね。   師匠からの思いとはあべこべの人間でしたが、それを「俺の基準を満たしたということは、こいつは芸の幅になりました。」と真打のパーティーの時に言ってくれました。  これは殺し文句です。  今年が入門30周年になります。   前座7,8年目の頃にシナリオを書いたりしましたが、それが今役立っています。   書いた本は21冊目になります。  コロナで昨年2月から一気に仕事が無くなってきて、5月ごろに妻から「小説を書くのにはラッキーじゃない。」と言われて、2万5000字の小説を4つ(前座、二つ目、真打、プラスα)書きました。  二つ目の時にはいろんなことが経験できるので、改めて二つ目時代のことを書き直しました。  ドキュメンタリー:フィクションが6:4といった感じで5つの部分から構成されています。  自叙伝的な小説です。                                    第一話では、 ある場面に対して談志だったらこういうことを言うだろうなという事で「人の気持ちが判らないやつが、なにが落語家なんだよ。」 という実際経験したことで書けたセリフです。

第二話では末期がんの或る父親の前で落語をする。  落語家は魔法使い。 談志師匠は「落語はイリュージョン」と言っていました。   末期がんで聞いているのかいないのかわからないような状態だったが、あとでその人の家族に笑っていただけなくてすみませんでしたとメールしたら、「お父さんは自分が病だという事を忘れさせていただきました。」と言われました。  看護師さんも「あれはお医者さんでは出来ないことです。」と言ってくれました。  魔法なんですね。

第三話は 本のタイトルと同じ『花は咲けども 噺(はな)せども 神様がくれた高座』  妻の言葉で「一生懸命やっていれば必ずだれかが見ていてくれる。」  妻に救われています。  

第四話が老人ホームで落語をして老人たちに喜ばれる。   「安い仕事でも回数をこなすことによって 結果あなたがうまくなればいいんじゃない。」と妻に言われて、「先のことを見通せば見方が変えられるじゃない。」と言われて、これは本当に救われています。 

第五話が 「落語とは人間の業の肯定である。」  談志の言葉。           相撲関係者が言った言葉で「お相撲さんも落語家さんも稽古が仕事だ。 本番の土俵とか高座なんか集金だよ。」という様なことを言いました。  視点を変えただけで生き生きするというか、稽古が仕事だと。    コロナ禍で小説も書くことが出来ました。     落語によって閉じていた心が開く中学生の女の子を書きました。  恵まれない人々への応援歌だと思って書きました。  

落語をやればやるほど書きたくなるし、書けば書くほどしゃべりたくなるので、良い相関関係なので、ストレスを相互に発散出来て、二刀流で行きたいと思います。