2020年10月22日木曜日

阿部直美(ライター)          ・おべんとうは人生を映すカガミ

阿部直美(ライター)          ・おべんとうは人生を映すカガミ 

お弁当から見える人生模様を書き続けているご夫妻がいます。  「お弁当の時間」と題する航空会社の機内誌のエッセーコーナーは13年間続く人気コーナーとなり、すでに4冊の単行本にもなりました。   カメラマンはHNKの番組「サラメシ」でおなじみの阿部了さん、ライターは奥様の阿部直美さんです。  直美さんは最近意外にも「おべんとうの時間が嫌いだった」という本を書きました。  中学生時代お弁当の蓋を開けるのが嫌でたまらなかったというご自身の体験をもとに、お弁当はその人の普段の生活を映し、もっと奥深い家庭環境や歩んできた人生をも映し出すといいます。  お弁当の取材を通してどんな世界が見えたのか、伺いました。

「おべんとうの時間が嫌いだった」という本は、逆に私しかこのタイトルはできないのかなという気持ちもあります。   子供時代はお弁当の時間が好きではありませんでした。  中学校時代からお弁当が始まりましたが、母が作るお弁当はちょっとしゅんとなるような感じでした。   前の晩の状況が判るような感じで、父と母は仲が良くありませんでした。  夕飯の残りが入っていて、昨夜の嫌な思いが蘇ってしまいました。

群馬の田舎で育って、家の環境とかもあり、飛び出してどこかへ行きたいという思いがありました。  小学校の時に映画「IT」を観てアメリカに行きたいという思いが募り、アメリカで生活したかったので、高校になったら留学しようと思って、中学時代は過ごしました。  YFUという留学の機関でテストを受けて交換留学しました。   カリホルニア州の効率の高校でした。 

マンモス校でいろんな国の子がいっぱい来ていて日本人でも珍しさはなく友達も作れませんでした。  お昼はカフェテリアにいつも行っていました。  

帰国して大学に行って東京で就職しました。  夫は友達の紹介で知り合いまして、写真家の立木 義浩さんのアシスタントを5年間していました。  食に興味のある人でした。

タイプが違っていて、私は誰と食べるかという事に興味がありましたが、料理そのものに興味がありました。

結婚して、その後夫は手作り弁当を撮るという事に目を向けていきました。

そのころ子育てで私は手一杯でしたが、「一緒に行く?」と誘われました。

撮影していろいろ話をすると楽しそうに弁当のことを話していて残しておきたいと思いました。

子連れで取材をするようになりました。  授乳しながら話を聞いた時もありました。

1週間から10日のルポ巡業しました。  誰が弁当を持っているかなどまるで分らない中、探すのが大変でした。  

10何年も前に始めたころは、なんでお弁当を撮りに来るのかという事でなかなか話が通らなかったので、どう説明したらいいのか難しかった。    兎に角ライターとして、そのうち本にしますという事で繰り返しやってきました。

航空会社の機内誌の「お弁当の時間」というコーナーに2007年から13年間続いています。 4冊書籍になりました。   私はお弁当よりその人に興味があり、その人が歩んできた道とか生き方とかが見えてきて、印象深いです。

熊本県の球磨川八郎さんは船頭をなさっていた方でした。 球磨川の手前側に小屋があり反対側に駅があり、駅を利用する人たちのために渡し舟をしていました。 車利用が多くなり高校生の通学の為だけになっていきました。  行った時には雨が多くて川の水位が上がってしまい取材ができそうもなかったが、ぎりぎり水位が下がってどうにか取材させてもらって、その数か月後に引退されました。  矢張りタイミングを逃してはいけない、という事を思いました。

海外のメディアから取材を受けることがあります。 シンガポールからきたレポーターの方に弁当を作って食べてもらうという場面がありましたが、日本のお弁当がすごく海外で知られてきて興味を持っているという事を最近凄く感じます。

中国の方からのインタビューで印象的だったのは、「日本人はすごく弁当にメッセージを込めたがりますね」と言われて、なるほどとは思いましたが、凄く面白い不思議だという風に言われました。

弁当は日常生活の延長線上にあるものと思っていて、日常生活がどうであるかという部分が大事であって、作る弁当もそうなりますね。 弁当の奥深さはやり始めて気が付きました、弁当を介していろんな方向に話が弾みます。