2020年10月18日日曜日

小泉武夫(東京農業大学名誉教授)    ・【美味しい仕事人】発酵を暮らしに生かす

 小泉武夫(東京農業大学名誉教授)    ・【美味しい仕事人】発酵を暮らしに生かす

免疫力向上の効果が期待できる発酵食品に今あらためて注目が集まっています。 東京農業大学名誉教授の小泉さん(76歳)は長年にわたって発酵学を暮らしに生かす研究を続けています。 食文化の研究から発酵技術を地球にやさしい技術として幅広く活用する活動にも取り組んでいます。  27年続く新聞の連載や200冊近い図書の出版など文筆家としても活躍、さらに食にまつわる発明家の顔もお持ちです。 自らを「発酵仮面」と名乗る小泉さんに伺いました。

「発酵仮面」と共に「味覚人飛行物体」(未確認飛行物体ではない)とも自分で考えて名乗っています。 両方とも登録商標してあります。

1943年福島県の造り酒屋の6人兄弟の末っ子として生まれる。  1962年東京農業大学農学部醸造学科に入学、40歳で教授に就任。  酵母が増殖するときに水素電位を出すが(酸化還元電位)を使って、それを電極にして、電気エネルギーに変える研究をしました。  いい論文だといいう事で卒業時の成績は首席で学長賞を与えられました。

発酵の研究で世界40か国の地域に出かけました。  あまり食べられないような蜘蛛とかいろんなものを世界各地で食べてきました。  大学で最初にした仕事は世界の中の発酵食品の研究、食と民族との研究、酒と民族との研究をやっていました。

鹿児島大学別府大学琉球大学広島大学新潟薬科大学客員教授を歴任。

全国地産地消推進協議会の会長、発酵文化推進機構の理事長も兼務。

コロナの関係で発酵商品はとても注目されてきました。  発酵商品には免疫力を高めることは前々から知られていました。  発酵商品は本当にすごい免疫力を持っています。  納豆一個を食べると納豆菌が700万匹います。 発酵食品は生きた食べ物なんです。  ヨーグルト、チーズ、味噌、キムチ、漬物などがそうで、腸まで行くと腸が免疫力を作るところで、そこで作ってくれる事がわかってきました。  日本でコロナの陽性患者が少ないが、日本人は衛生観念が発達しているからというが、食べ物のことは誰も触れていない。

東北6県で全部で現在1500人以下だと思いますが発生率が少ないと思います。  人の出入りも少ないと思うが、発酵商品を一番消費しているのが東北で、納豆の消費量が一番が秋田、山形、福島で、東北では味噌、漬物を一杯食べます。

アジアを見ても発酵食品を持っているのが、東南アジアと、東アジア(日本、韓国、台湾、中国)だけです。  東南アジアもベトナム、タイ、ミャンマーもコロナは少ないが、発酵食品の無いインド、イラク、イランは沢山出ています。   アメリカ、ブラジルも発酵食品はなく、ヨーロッパはチーズぐらいです。

今後新型コロナと付き合っていかなければいけないと思うと、マスク、三密を避けると同時に食べ物で免疫力を高めていかなくてはいけない、発酵食品を意識して食べることが必要ではないかと思います。

大根を漬けた漬物だけでも80種類あります。  野菜の漬物だけで何百種類あると思います。

私には「走る酒壷」「鋼鉄の胃袋」「人間リカオン」「ムサボリビッチ・カニスキー」といった自称を含めたあだ名があります。

日本経済新聞』の夕刊に連載しているコラム「食あれば楽あり」は28年間連載していて一度も休載はありません。  この間まったく病気はしませんでした。  パソコンは使わずに全部手書きでやっています。

日本は米が余っていて牛乳もそうなので、米に牛乳を吸わせて、スチ-ムドミルクライスができて、ヨーグルトから分離した乳酸菌を入れて40℃で発酵させたら3日後にチーズになっていました。  こういった発想でやっています。

南瓜が豊作すぎて、送ってもらって南瓜で甘酒を造りました。  それを絞ると黄色い砂糖ができて販売まで行いました。  特許を取っています。

本来捨てるエビの殻をラードで溶かしたところの鍋に入れてさっと焼いて、冷凍するとラードにエビの香りがしてエビチャーハンとかエビラーメンとかを作って凄く好評でした。

北海道の鮭のアラ(捨てるもの)を発酵させて鮭の醤油を作って、商品化されて、それを使ったラーメンがいまの有名な石狩ラーメンになっています。

マツタケは人工栽培ができない。  マツタケの胞子を集めて液体で培養したら、ある特殊な物質を入れると綿くずのようになって増殖するが、その液体の中にマツタケの味と香りが出てくるんです。

納豆ドリンク、納豆菌だけ培養すると、培養液の中に納豆の味と匂いが出るので、それを一回とって、カルシウムを使うとネバネバが無くなる。  納豆嫌いな人にも飲める納豆ドリンクができるわけです。

発明は人のためになるという事が大前提です。  考えることは若返られます。  食以外でもいろいろ発明もしています。(バックにベルを付けた盗難防止装置とか、自動犬ウンチ取り機とか)

NPO法人発酵文化推進機構,大きな組織で全国の発酵会社が集まって勉強会をやっています。  全国発酵の街作り推進協議会というネットワークを作って発酵で街おこしをしようという事でやっています。  70ぐらいの県、市が参加しています。

千葉県神崎という街がありますが、発酵で街おこしという事で神崎で発酵のお客さんが100万人を越しています。

福島県須賀川市に世界一大きい生ごみを燃やさないで土にするシステムを作っています。 日本では生ごみの90何%は燃やしているので大気汚染、地球温暖化もあり燃料代もかかるので、微生物で発酵させると完ぺきな土になり、それを畑に撒けば肥沃な土になります。  余ったものを山に撒けば山が豊かになり、ひいては海が豊かになります。

発酵によって人間は物凄く助かっています.。  抗生物質を打つことによって手術ができますが、抗生物質は発酵生産物です。  大半の制癌剤、そしてビタミン、ホルモン、アミノ酸まで発酵で作っています。

「大豆は畑の牛肉」と言われていますが、牛肉のタンパク質は17,8%、大豆のタンパク質は16,7%でほとんど変わりません。  

豆腐の味噌汁を作って納豆を引き割り納豆にしていれて、油揚げを千切りにして上にかぶせて飲むと、汁の中に4種類(豆腐、味噌、納豆、油揚げ)の肉が入っているわけで大変なスタミナ食ですが、牛肉ではコレステロールは沢山ありますが、これはコレステロールはゼロなんです。 是非お勧めです。