2020年10月5日月曜日

穂村弘(歌人)             ・【ほむほむのふむふむ】

穂村弘(歌人)             ・【ほむほむのふむふむ】 

ほむほむのふむふむスペシャル、「ほむほむむと短歌を楽しもう」その2番外編、リスナーの皆さんからの短歌を中心に行います。

テーマ「家族」  最優秀ほむほむ賞

*「十二本スプーン曲げをされた日に真顔で元に戻した私」   古賀孝枝さん


*「その花火誰と見たのと尋ねれば自分の膝と素知らぬ顔で」  牛尾渚さん

自分の膝というところが面白い。

*「母だけが少し悲しい顔してる小さな頃の家族写真は」    白素さん

リアルタイムで写真を撮ったときには気づいていないが、時間がたって遠い昔の家族写真を大人の目で見てみると、みんな楽しそうなのにお母さんだけ少し悲しそうだという事に今だから気付いたというように、微妙な感情。

*「猫たちのごろり昼寝に誘われてひんやり床に私もごろり」 向井芳江さん

テーマ「家族」ですが、猫たちが家族なんですね。 一般的に猫を人間側に入れるが、この歌の面白さは猫側に自分が混ざっていっている。

*「三つ編みも編んでくれるし弁当も持たせてくれる母って人は」 西島まどみさん

改めて気付いてくれる、「母って人は」という言い方が面白い。 「三つ編みも編んでくれるし」というのがいいですね。 母と娘のいい時間。

*「誕生日することがないと白状をしている実の母に向かって」  古賀孝枝さん

恋人も友達もいないのかみたいな感じが暗に言っているような、自虐的な感じ。 白状という言葉が使われているのが心理の屈折を表している。

*「群れを成す猿の一家は不思議にも我をいざなう多摩の源流」   石井秀幸さん

猿の一家にスカウトされたような不思議な歌です。 なかなか面白い発想です。

*「読み返すモモのぺージに仕送りの現金封筒メッセージ付き」   縞三毛さん

モモは有名なミヒャエル・エンデの作品   読み返したら多分忘れていた仕送りの封筒が出てきた。 モモというのもいいですね、時間がテーマになっている作品。 

*「何回もほどけてしまう靴紐と折り合いをつけ実家へ向かう」 大西ひとみさん

主に心理的なもので、実家へ帰るのに気が進まない感じ。 心の靴紐を結び直しながら実家に戻っていくんでしょうね。 結婚しろとか親はうるさいですからね。

*「ビートルズに打たれて以来一人きり籠城していたラジオの部屋に」うらはさん

ビートルズにショックを受けて親に言ってもよさが判らないので言っても伝わらない、そこで初めて親の支配権から出て一人の部屋に閉じこもる。 親の管轄外で、それが自分の次の一歩になって行く。

*「包丁を研いで喜ぶ妻待てば一目くれてそれ使ってない」  伊藤正夫さん

年季の入った夫婦ですかね。  妻が喜ぶだろうと思って、自ら進んで包丁を研いで妻の喜ぶ顔を楽しみに待っていたら、ちらっと見てそれ使ってないといわれてしまう。  でもどこか波長が合っているような気がします。

*「ゼロアイスと妻がつぶやく食べ終えたアイスの棒をじっと見つめて」 穂村弘

「ゼロアイス」というのは食べちゃたという意味ですが、独り言を言っていた面白さがあったので作りました。

注:「*」の短歌及び名前は漢字、ひらがな等記載が違っている可能性があります。