2019年4月2日火曜日

安田陽一(日本大学理工学部教授)     ・魚にやさしい道をつくる」

安田陽一(日本大学理工学部教授)     ・「魚にやさしい道をつくる」
魚にやさしい道とは、川に棲む魚やかに、エビなどが自由に移動できる道、魚道のことです。
近年、川はさまざまな用途に対応するため、ダムなどが作られ魚にとっては棲みにくい環境になったと言われています。
安田教授はダムや堰から流れる急激な流れを制御する研究を長年行い、アメリカの土木学会から最高賞を受賞するなど、水理学として著名な土木学者です。
安田さんが20年ほど前、或る学会で生物学者から川の流れが速く、特産のエビが生息できなくなってきているとの報告を聞いた事をきっかけに、魚の棲みやすい川に取り組みました。
これまでに200か所余りの魚道をつくり、北海道の天塩川には世界最大と言われる、7kmに渡る魚道バイパスを完成させました。
魚にやさしい環境をつくることで、地球の生態系を取り戻す役に立てればとお話しになります。

日本の川にはいろいろ川を横断する工作物があり、そこを越えて行く魚にとっては感知しやすい流れです。
それに向かっていった時に障害物があって、泳いで渡りたいが激しい流れなので、流れは感知できるのでそこに向かって跳ぶんです。
魚にとって水の外に出ると言う事は体力のいるもので乳酸値が上がってきます。
疲れやすくなるので、休むことが必要になり停滞する。
鳥が弱っている魚をついばんでゆく。
人が作りだした環境なので、まいた種は人なんです。
魚道を作るんですが、魚道以外の流れに誘われてしまって、結局は上に上がれなくなると言う大きな問題が起きています、それが迷子です。
魚道を作る時には休めたり、ちゃんと行けるようにする配慮が余りにも起き過ぎて流れを弱めていき過ぎる。
そうすると池のような形になってしまって、魚道だけがおとなしくなっていると言う、逆の事が起こる。
下る時には流れが速すぎると失神してしまう事があります。
昔は流れの勢いを弱めるプールがあったが、最近は平坦なコンクリートのものが多くなった。
そうすると落ちてきた流れがコンクリートに直接あたるようになって、そこに魚が一緒になって落ちたり、カニも甲羅を割ってしまったりします。
人にとって良いように替えたが、魚などにとっては棲みづらい環境になってしまいました。
幼い魚は流れにまかせて下ってくる訳ですが、コンクリートに当たると死にやすくなります。

基礎研究として構造物から落ちた流れ、高速流と呼んでいますが、ダムからの流れ、堰からの流れを如何に早く制御するか、そういったことが基礎研究のテーマでした。
学会で発表した時に、隣に川の生物の先生が発表しに来られました。
河川に構造物があることによって、魚、エビ、カニがこれだけ苦労しているが知っているのかと、エビの写真など提示しました。
それがきっかけで生き物がどういうふうにして苦労しているのか、見させてもらいました。
これなら今まだ私の取り組んだ成果がいかせるのではないかと思いました。
流れの速さをスムースにすれば効果があると思いました。
検証するために多摩川で模型を作って実証しました。
それから魚道を作るきっかけになりました。
垂直から45度に傾けるだけでも随分効果がありました。
細分化されているので専門領域では難しいことも、複合的に見れば、こんなやり方をすれば解決すると言う事が思い付くわけです。

これまでに200か所余りの魚道を作っています。
「魚道ガイドライン」を出版。
種類としては10~20種類あると思います。
アメリカで鮭を中心に上り易いものと作って、それを日本に導入されたものとかもあります。
横の壁の構造を斜めにした魚道は私が提案したものです。
プールを又台形状にして組み合わせたものが2000年から2010数年の最大の特徴だと思います。
その後水量が変わっても魚が自由に上れるように工夫しました。
側面の壁もコンクリートブロックの様にざらざらしなものの方がカニなどには足が引っ掛かるので良いと思います。
ざらざらがそれ以上に大きいとハゼなどは吸盤がくっつかなくなってしまいます。
本来川には色々な生き物が棲んでいるので、それらの行き帰を妨げないのが本来の姿です。
経済性も考慮しないといけない。
まず川に中を歩きます。(石、どろの溜まり易さなどの状況が判る)
生き物の棲みかとしているのか、難しくなっているのかなども判ります。
総合的に見てここに魚道を作った方がいいとか、そういった話をします。
川に生息している生物、植物など色んな事を研究者から教えてもらっています。
本ではなくフィールドに行かなければ判らない事が沢山あります。

高速流から環境面に主軸をおいて今はやっています。
やはり社会貢献したいと言う気持ちがベースにあります。(論文の数ではない)
今、北海道の天塩川の流域に取り組んでいます。
当時ダム事業をしようとしていました。(ダムを作るか作らないかの議論もありました)
流域全体で魚などの生育環境を守りましょうというテーマで、私も凄く興味を持ちました。
平成18年から始まりました。
特産のさくらますの生息密度が物凄く増えました。
ダムの魚道バイパスを7kmに渡って作りました。(世界一長い魚道)
水の水量の管理ができるようにもしました。
1800匹のさくらますが上流に向かうのを確認しています。
若い世代にもきちっとバトンタッチしていきたい。
人が川に手を掛けた以上、人がきちっと環境に配慮したものに変えていかなければならない。