2014年10月2日木曜日

高橋まゆみ(人形作家)      ・創作人形、出会い旅(2)

高橋まゆみ(人形作家)    創作人形、出会い旅(2)
山形県の展示会での感想文
「さっきお婆ちゃんと喧嘩しました。 でも人形をみて悪かったなあと思い、優しい心を取り戻しました。 あす おばあちゃんと一緒に見に来ます 」
「認知症の母を気に掛けながら、昨年父は静かに亡くなりました。   私たちに気を使いながらも、母をいさめながらも、母を見つめるまなざしは、55年同じ生活を送った夫婦の優しさでした。
お父さん、介護は辛い時もありますが、心配しないで、天国で見ててね。 人形はお父さんとそっくりでした。」
全国で展開すると、一杯山の様に感想ノートはあるのですが、このような言葉が宝です。

母はほとんど寝ている感じだったんですが、母が人形館を見て回って、一体一体見たんですが、泣きっぱなしだったので、見ていたのか見ていないのか判らないのですが、兎に角嬉しさだけは伝わってきました。
ささやかだけれども、今の私を見てくれたのだなあと思いました。
私が結婚する前の年に母が倒れて、その2年後に父が倒れて、二人とも寝たきりの生活になってしまった。
結婚して親のありがたさを知りました。
現在は8人家族 4世代 孫もいるので、食事が大変です。

兼業農家、グリーンアスパラガス、とかモロヘーヤを出荷したりし、米とか他にも色々作っている。
私はほとんどしないで任せきりです。
人形を作る時間は、好きな時間に作れるのですが、作る物が感情が移入しないとできないので、いつも刺激を求めている。
寝る間を惜しんで作る時もある。
頭で考えながら作ることはないが、一瞬の閃きを大事にして、作ることにしている。
パートをしながら造っていたが、段々と売れるようになってきて、売れるんだけれど時間がなくなってきたり、人形作りを仕事にしたかったので、思い切って家族の前で言ってしまった。
最初は仲間とグループ展をやったりして、そこそこ売れていた。
欲が出てきて、東京でやってみたいと思っていたら、たまたま本を見たときに展示に関する記事があり、ギャラリーに電話してみたら、作品を送ってくださいとのことで、送ったら気に入ってくださって、翌年に開催する段取りとなった。

無我夢中で70体の人形を作って、お披露目したが、ドアーを開けた途端に、地元の常連さんが来てくれて、嬉しかったです。   完売した。(ほとんど地元の人が買ってくれた)
ユザワヤ人形展で部門大賞を受賞する。  大きな自信になった。
心の中のものを表現しようとするきっかけになったのは、陽(みなみ)信孝さん。
山口県の萩市の方、本を購入して読んだら、物凄い感動をして涙がぼろぼろでてしまって、奥さんがアルツハイマーになって、ご主人は校長先生や、教育委員長をされた方で、日々の介護の素晴らしさ、温かさが素晴らしくて、感動してしまった。 「八重子のハミング」
読み終えた感動と共に作りたくなってしまった。

「まなざし」 2人で見つめ合っている人形
「慈しみ」 うさぎのぬいぐるみを抱えて、肩をだきしめながら2人でいる人形
「雪の中」 旦那さんを待ちわびている奥さんを抱きしめている人形
「ハーモニカ」 病になっても音楽の先生だった奥さんが、音楽によってご主人と繋がれている人形
展示会に来て下さるようになった。
自分の感動したものを形にするというのは、私の思っているものなので、思うままに作らしてもらったが、それを見て涙を流す人々がいてくれた。
精神世界に導いて下さったり、いろんな出会いが自分の今の300体の物の作品を残してくれた。
作っている時の気持ちを吐き出す様に作る、その工程が楽しい。

小物を作ってくれる人が、江戸東京博物館で出会う事が出来て、10年の付き合いになる。
私の人形サイズは30~40cmぐらいで、こんなの作ったんだけれど、これにあう人形を作らないかと、逆に言われてしまったりもする。
お風呂に浸かる水を作るのが色々失敗もあったし、大変だった。
 松澤登美雄さん 白馬村の木彫の人形を作っている方、おじいちゃん、お婆ちゃんを作った時に影響された。
昔ながらの日本の風景、暮らしの影響がおおきい。
義理の姉さん 実家は父、母が病気で寝たきりになり、義理の姉さんには障害のある子がいて、大変だったがずーっと介護してきてくれて、一度たりとも介護を替ってほしいとは言わなかった。
その中で姉の言った言葉は「介護する人のお陰で自分は強くなれた」と話してくれて、本当に真似はできないと思った。

母が亡くなった時には、「人に頼られるという事は嬉しい事だ」と言ってくれた、凄いことだと思う。
これからの目標は?
作っていることが幸せなので、ずーっと作り続けたい。
粘土は乾かさないといけない期間があるので、顔だけごろごろ乾かしてゆく。
一番大事なのは顔なので、顔さえできれば後は付いてくるものなので、作りたい顔に出会ったらすぐに顔を作ってしまう。
真田十勇士は2カ月で11体作ってしまった。
駄目な時は何カ月も出来ない事もある。