2023年5月26日金曜日

広松由希子(絵本評論家)        ・〔みんなの子育て☆深夜便 ことばの贈りもの〕 それは、誰にとって良い絵本?

広松由希子(絵本評論家・日本国際児童図書評議会 副会長)・〔みんなの子育て☆深夜便 ことばの贈りもの〕  それは、誰にとって良い絵本?

広松さんは世界の絵本にも詳しく、先月23日に放送した地球ラジオではウクライナで活動を続ける夫婦のアーティストの絵本を取り上げ、絵本の中に広がる豊かな世界の魅力を紹介しました。   広松由希子さんは1963年ロサンゼルス生まれの東京育ち、今年還暦を迎えました。   編集者、ちひろ美術館学芸員を経てフリーランスとなり、今は絵本作家、海外の絵本の翻訳家、評論家などとして活躍しています。   特に新聞や雑誌などで数多くの本のレビューを手掛けていて、2021年には大正から平成にかけて出版された100人の作家による絵本100冊について論じた、「日本の絵本100年100人100冊」を発表し、話題となりました。  これまでの人生や、絵本のプロが考える子供と絵本のかかわり方について伺いました。

絵本家というのは造語です。  フリーランスになってから20年以上になりますが、媒体によって絵本評論家、翻訳家、絵本作家、絵本コーディネーター、絵本ソムリエとか、お任せはしています。  絵本家と言うのは絵本について何でもやっていいんだなという感じがあるので、ホームページの中では、気まぐれ絵本家と書いていました。  2021年の暮れには「日本の絵本100年100人100冊」A4版で200ページある大著を出版。  もともとはこういう本をやりませんかとの漠然とした依頼がありました。  2010年ごろから海外の仕事が増えて、日本の絵本というのはどんなものなんだろうという、世界の中での日本の絵本を見てみたいという思いと、昔から伝わってきている日本の絵本、時代と共に変わってきている、2011年東日本大震災の後、絵本表現も変わるものなんだなと言う事があり、大人の価値観もゆすぶられて、絵本は希望の形だと思っていて、それを子供にどんな風に伝えるかと、考えざるを得なくなる。  関東大震災、戦争とか大きなことがあった時に子供の絵本は表現を変えてきたのではないかと思いました。 時代と絵本という事に興味を持っていました。  時代と絵本を纏められるかなあと思いました。  
100人を選んで一人一冊は条件にしようと思いました。  世間の人気、評価は取り敢えずおいておきました。  各作家の真骨頂を紹介したいなと思いました。   

絵本はものごころつく前から周りには絵本が沢山ありました。  母が本が好きでした。 私は絵本、漫画、演劇、美術も好きでしたが、いったい自分は何をやるんだろうと大学に入ったころ、悶々としていました。  20歳の時に大学を休学して、3か月アルバイトをしてフランスへ留学しました。   言葉もわからないし、知り合いもいなくて、自分が思っていることがないと、話が出来ないと思って、自分は空っぽだと思いました。  自分が思っているものを掴まえて、言葉にするという事をもがくみたいにずいぶんやりました。   半年たって、自分がなにか伝えたいと思った時に、フッと言葉が出てきました。  帰国直前には絵本が好きだなと思う事がありました。  かなり絵本を買い込んでの本に送りました。   

日本に帰って来て、或る時に「かしこいビル」という絵本と出会いました。  1920年代にイギリスで描かれた絵本です。  ページをめくる喜びを感じました。   絵と言葉が一つになって入ってくる。   他のメディアとは違う事を感じました。  娘が1歳の時にむずがって泣き出しそうになった時に、膝に抱いて、本はなかったがこの「かしこいビル」を言葉で語りだしました。   娘はじっと聞き入って宙に絵を観ているみたいに静かに聞いていました。  「おしまい」と言ったら「もういっぺん」といったんです。    

大学卒業後、4年間教科書の出版社に勤める。  子供との時間を持ちたかったので辞めました。   自分の時間が無くなってしまって、「女の24時間」とか言う本を図書館から借りてきて読みました。  時間管理の本で、その中に自分がやりたい事、だいじなものをひたすら書き出すという事がありました。  そして次に消してゆく。 最後に4つだけ残す。  最後に残ったのが、絵本、子供、仕事、遊びでした。  これが自分の柱なんだと思って27歳の時に絵本は自分には外せないものだと思いました。   

26歳で子供が生まれ、子供には読み聞かせは沢山したとは思っています。  読み聞かせをしなくてはとは思わなかった。   子供が3歳の時に美術館に就職して読んであげる時間が少なくなってしまい、自分で本を読むようになりました。   いい気持ちで読むといい気持ちがうつるが、無理して読むとそういった気持ちが伝わるので、無理して読まなくてもいいのでは。  嫌がっている時に追いかけることは、本嫌いを作る元かなあと思います。   子供との間において絵本を読むことによって、随分絵本に助けられたことはあります。  

絵本を選ぶときには、まず自分が好きな絵本が条件です。  あと相手が好きかどうか、自分が伝えたいと思うようなもの、子供の心に種をまくようなもの(自分の体験と重なるものがあります。)、です。  気持ちを込めて語ればいいと思います。  自分の好きな絵本をつくりたいです。