2021年6月25日金曜日

内田也哉子(エッセイスト)        ・【ママ深夜便☆ことばの贈りもの】それでも、面白がって生きていく

内田也哉子(エッセイスト) ・【ママ深夜便☆ことばの贈りもの】それでも、面白がって生きていく 

1976年(昭和51年)東京都生まれ、俳優の樹木希林さんとミュージシャンの内田裕也さんの一人娘です。  日本、アメリカ、スイス、フランスで学び、19歳で俳優の本木雅弘さんと結婚、3人の子供を育てながらエッセーの執筆や翻訳、作詞、ナレーション、音楽活動など多方面で活躍されています。  家族団欒を知らずに育った子供時代、若くして結婚3児の母として生きる日々、家族とは夫婦とはなにかを考え続けて今思うことなど伺いました。

育った家庭環境が普通ではなかった環境だったので、その影響が大きいと思いますが、一人っ子で両親は離婚はしていないんですが、母が女手一つで育ててくれたので、孤独な子供時代で、小学校低学年のころから鍵っ子で、夜ご飯も母がある程度用意はしてくれますが、最後のひと手間自分で作って食べました。   テレビもなかったし、おもちゃもなくてあったのは数冊の絵本でした。   自分で発想して遊びを生み出してゆくというような感じでした。  母は明治の女のような気丈でメッセージだけ伝えたらあとはドライな感じの母でした。   厳しかったので甘えたいとは思いませんでした。   あれをやっては駄目これをやっては駄目とかは一切言われず、勉強しなさいとかも言われませんでした。    大きな自由を授けられた代わりに、その重みを小さいうちから知ってしまったので、或る意味自由さを苦しんでいました。  小さいころから大人と話すような語り口で何でも話してくれました。

19歳で結婚、21歳で長男が生まれる。  大学中途で結婚したので社会でもまれることもなく新しい家庭を作ることになりました。  戸惑いの連続でした。 その2年後に長女が生まれにぎやかになってきました。  長男・雅樂(うた)は23歳、長女・伽羅(きゃら)は21歳、次男・玄兎(げんと)は小学校5年生です。   たわいもない日常の一コマはいとおしく感じます。  

「なんで家族を続けるの」を出版。 脳科学者の中野信子さんとの対談をまとめた本。   普通の家庭ってないんだなと、それぞれが違う家族で正解も間違いもないという事がより明確に判った。  

15歳で本木さんと知り合いました。  結婚という話が出たのは17歳の時でした。  母に話したら「そういうのもありね」といわれました。  結婚とか人との出会いは計画してできるものではないから、と言いう事で母は非常に柔軟な考えの持ち主でした。    結婚してみて、或る意味カルチャーショックでした。  言葉と文通の世界でお互い繋がっていたのが、その後結婚して夫は忙しくてほとんど家にはいないし、どういう共同作業なのかという事で行き詰ってしまって、つまらないことでもめてみたりして、私としては夫と共感したいタイプでしたが、夫は人はそれぞれ違うというような感覚でいたので、リズムを合わせてゆくのに、今でも揉めたりしていますから。   私の両親は見た目は違いますが、魂の部分ではすごく似ていて、だからぶつかって離れて行ってしまったという夫婦です。 

夫の、それぞれ違うという考え方はすごく新鮮に感じました。   社会に出てもそういう考え方でいればいいんだなという事は学びました。   子育てではいろいろ苦労がありましたが、夫は時間がある時には手伝ってくれて、その後二世帯住宅になりましたが、母からの提案でした。   若い世代から年配まで混ざっているという事はとても豊なことだという事を身をもって体験しました。

家族というものを振り返ってみることで、いろんな自分自身が見えてくるという事だと思います。  家族といっても隣りを歩いている人と変わらない、親だから、兄弟だからというような肩書を一回外して、家族という風に構えるのではなく、それぞれに違う距離感、ここち良さがあるから、いい距離感を作ってゆくというのは、それはまさに人生そのもので血縁でない人にもそれは繋がってゆく。   いろんな角度から見て見るというのもいいかもしれません。   

「大切なこと」 アメリカの絵本作家マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本。  内田也哉子:訳   日本では2001年に出版。  1949年にアメリカで出版。  とてもシンプルにひとつひとつのことを気づかせてくれる。  絵本は私の小さいころからの心のオアシスで、私が選んだ本と子供たちが選んだ本を読み聞かせをしていました。

一口に絵本と言ってもいろんなかかわり方があり深い世界だなあと思います。   訳すとき日本語の言葉の響きを大切にしています。  絵本も詩に通じるものがあると思っています。  簡素化された文章のなかにいろんな人生の心理が詰まっているように思います。

2021年出版 「ママン-世界中の母のきもち」 エレーヌ・デルフォルジュ (著), カンタン・グレバン (イラスト), 内田 也哉子 (翻訳)  世界中のいいろんな立場の女性が子供を育てる、育てられないという事も含めって詩的に描かれていて大人向けの絵本ではないかと思います。

*「ママン-世界中の母のきもち」 朗読:内田也哉子

「子供はお前たちのものではなく、生命の源から生まれた存在。  彼らはお前たちが迎えた閃光なのだ。  世代から世代へスー族の母たちはこのメッセージを受け継いできた。  でも私にとってそれは全く新しいことだった。  やがてあなたたちが私の息子でも私の娘でもないことに気づいたの。  あなたたちはそれぞれにれっきとした一人の人間よ。  でももしあなた達さえよければ私はずっとあなた達のお母さんでいたいな。」

*あとがき  朗読:内田也哉子

「初めからお母さんである女性は誰一人いません。 血のつながりがあろうとなかろうとこの世に生まれてきた子供と何かを共有し、心を通わせるところから母親ははじめの一歩を踏みだします。・・・世の女性たちは転んだりぶつかったり試行錯誤して、いつしか母になるのでしょう。  私自身母親だという自信が持てません。 ・・・この絵本はあらゆる立場や状況にいる世界中の女性たちが、その自ら抱く母親像へのあこがれや迷い、希望や苦悩をありのままに映し出しています。・・・お母さんと呼ばれる温かくしなやかな女性像と現実に一人一人が抱える子育てのもどかしさには多かれ少なかれギャップがあると思いす。・・・折り合いをつけようと母親として自問自答しながら前に進むのです。 ・・・世界中の母親が一人一人違っていてそのどれもがお母さんなのだと、誰一人同じ人間がこの世に存在しないように、母親だってそれぞれに色彩があります。 ・・・ 違いこそが世の中が面白くなる醍醐味ではないでしょうか。 ・・・世界中のお母さんあなたがあなたでありがとう・・・世界中のお父さん、あなたがあなたでありがとう。」