ヨシタケシンスケ(絵本作家) ・〔人生のみちしるべ〕 あなたのストーリーかもしれない
ヨシタケさんは40歳お時にオリジナル絵本「りんごかもしれない」を出版、ヨシタケさんが作る様々なアイディアが展開する筋立てのない絵本は発想絵本と呼ばれ、以来数々の賞を受賞、ヒット絵本を生み出し続けている人気絵本作家です。 ネガティブでしょんぼりしがちだというヨシタケさんならではの視点で作られる絵本は多くの人の共感を得ています。 現在「 ヨシタケシンスケ展かもしれない」と言う展覧会が全国を巡回しています。 絵本の世界を体験出来て ヨシタケさんの頭の中に迫る展示会は子供たちにも大人気です。 デビューから12年を迎えた絵本作家 ヨシタケシンスケさんにお話を伺いました。
デビューから12年が経ちましたが、ここまでやれるとは思っていませんでした。 僕が本にテーマとして選びたい事と皆さんがこれは私に興味があるテーマだと思ってくださる事が思いのほか一致していたことが、凄く運のいい事としかいいようがないです。 その時その時家庭で起きたニュースを作品にするタイプなんだなという事が3,4年経って判って来ました。 人間身体が変ってゆくと考え方も随分変わるという事がここ5年ぐらいで身に染みたことです。 子供の頃の自分が知りたかったこと、読みたかったものを作ろうと、ずっと作ってきて、最近はそれに加えて5年、10年先の自分に向けて描いている感覚があって、そういった作品つくりだと思います。
私の本を読んでよく視点が優しいと言われることがあります。 それは僕自身が優しくしてほしいからなんです。 自分にとって世の中はこういう風なものなんだよと言われた方がむしろ頑張れるなとか、しんどさから抜か出せるなとか、日々自分で考えながらやっています。 傷つきやすさ、生きずらさみたいなものが、モチベーションになっている。 自分の弱さみたいなものが経費で?落ちる仕事があるなんて知りませんでした。 この表現の世界は優しい世界なんだなあと思います。
3年前から大規模な個展を全国で巡回しています。 原画展で出来るとは思っていませんでした。 僕の原画は小さいし色もついていないし、場所が余ってしまう。 工夫する中で、本が出来るまでの頭のなかで起きた事の様子を見てもらうという空間を作って行きました。 展覧会は団体競技として作る場なので、自分一人ではできない面白さを凄く感じました。 僕は会場には居ませんので、何を言っても大丈夫です。 「 ヨシタケシンスケ展かもしれない」と言う展覧会です。 新しい選択肢、こういう事もあるかもね、と言う考え方、視点、可能性を「かもしれない」と言う言葉でやって来たので、一つのテーマとして集約するものだと思っています。 断言しない。
2023年うつ病と診断されました。 元々ネガティブな人間でした。 この4,5年で体力がガクッと落ちました。 ネガティブを体力で補って来ていたのを、体力が落ちてくると補えなくなる。 軽度の鬱状態と言う診断でした。 行って急に治るものでもないと思ったし、いろいろ考えたらもとに戻ることが出来ました。 しんどさを語る事の難しさを凄く改めて感じました。 救いになったものと言うのは今は見つからないが、いつかは見つかるかもしれない、それが救いといっていいのかもしれない。 自分を好きになる事だけが自己肯定の方法なんだろうかと思えるようになってきて、自分と仲良く出来ないという事に慣れてゆくことも、自己肯定の一つなんだろなあと最近は思うようになりました。
「ヨイヨワネ うつぶせ編」、「ヨイヨワネ あおむけ編」 弱い自分でいいんだ、弱音を吐いていいんだと言ったものです。 自分に取っては本当に必要な行為であって、この2,3年弱音は半端じゃなかったです。 しんどさを言葉と絵にしたかった。 自分を救うための表現。 生きるのがしんどいあなたに為のウェブ空間 「かくれてしまえばいいのです」に関わりました。 いま「死にたい」「消えたい」と思い悩んでいる子どもや若者への提案です。
一旦この世から隠れてしまえばいいのではないかと思って、隠れる場所さえあればあの世にいかなくてもいいんじゃないかと、この世とあの世の間の「その世」を作って避難する、シェルターのような役割として、そういう場所が良いのではないかと思いました。 チームの人たちが作家としての私を提案を尊重してくださいました。 24時間無料で利用できます。 アクセス数が1か月で200万を越えている。 つらさとか実在する人がいるという事を可視化できるツールは今までなかった。 辛いのは自分一人ではないんだなと思うだけでも、孤独感は薄れたりもする。 最終的に人を救うにはストーリーしかないんだなという思いがあります。 自分で作るストーリもあるし、2000年、3000年とか使われ続けているストーリーもあります。 物語でしか人は世の中を認識出来ない生き物なんだろうなあと思います。 生きていきたくないという人たちに対して、どういうストーリーが用意出来るのか、そういう人に何を届けられるのか、沢山考えることは自分の中で新しいテーマが頂けた気がしています。 自分に取っても必要だった。
今年52歳になります。 老いについてがテーマ、「まてないの」 あかちゃんから、おばあちゃんまで。まてない人の、まてない絵本。 高齢者向けの絵本があっていいだろうし、高齢者向けの絵本をちっちゃい子が読んだ時に 、どう思うんだという事にも興味があります。 〔人生のみちしるべ〕を捜さなければとあせっていますが、無くてもいいなと言う風に思うために、みちしるべ以外のものが欲しいなと思います。 最後までじたばたする人を見て安心したいです。 自分に甘いから人にも甘くなる。 皆のことを許すから俺のことを許してくれと言う生き方をしているので、そうすればもうちょっと平和になると思います。