2020年12月10日木曜日

山崎菊乃(NPO法人代表理事)     ・【人権インタビュー】あなたは悪くない

 山崎菊乃(NPO法人代表理事)     ・【人権インタビュー】あなたは悪くない

コロナウイルスの感染拡大が続く中、DVの増加が懸念されています。   現在DV被害女性の支援を行う一方、内閣府のVD対策の委員も務めている山崎さんですが、自身もかつて夫の暴力から逃れ避難した一人でした。   暴力を受けていた山崎さんが声を挙げるその力の源は「あなたは悪くない、あなたなら出来る」と励まし続けてくれる人たちの存在でした。

今は主にDV被害者とその同伴の子供さんの相談の一時保護と自立支援、暴力防止のための啓発事由という事で、女性に対する暴力を根絶させるための活動をしているところです。

夫の仕事が在宅勤務になってモラハラ、妻に対する暴力、子供に対する暴力という事での相談があります。   性行為の強要といった相談もあります。

支配する側と支配される側の関係があると、支配する側がイライラがあると、弱い側に向かうという現象も起きていると思います。

1997年 DVの法律もない時に、子供を連れて逃げてきた経験があります。  長女が生まれたときに、里帰りお産をしたときに、米を10kg持ち帰ったら「俺を馬鹿にしているのか」と言って、お米を実家に送り返して、その晩に新生児の横で寝ている私の顔を何も言わずいきなり殴って鼻血で布団が真っ赤の状態でした。  あからさまの暴力はその時が初めてでした。

実家の親に言ったらどれだけ心配するかもしれないので言えませんでした。   「こんな事をするんだったら離婚する」と言ったら土下座して謝りました。   しかし、びくびくしながら暮らすことになりました。    北海道にUターンして新しい家を建てようというような時期から身体的暴力がまた始まりました。   初めての暴力から13年後でしたが、その間精神的暴力がひどかったです。 ちょっとしたことですぐ不機嫌になりました。常に私が非難されていました。  彼に理解してもらえない私が悪いと思っていました。

又身体的暴力がまた始まりました。  2年ぐらい続きました。  暴力を受けた時にはどうでもいい早く終わらないかなあという感覚でした。  一回暴力のタガが外れてしまうと身体的暴力のハードルが低くなって、ちょっとしたことで暴力を振るうようになりました。彼が帰ってくると動悸がしました。   娘が中3と中1で、大学卒業したら離婚しようと思って我慢をしていました。   

或る日、暴力に対して子供が傷ついているという事が判って、子供たちがいろんな症状が出てきたので、子供たちに対して我慢してきたのに、返って子供たちを傷つけているという事が判り、それが逃げるきっかけになりました。    学校の先生に相談して、先生の協力もあり子供たちと一緒に支援スタッフの協力の元、シェルターに入りました。

ホッとしてゆっくり眠ることができました。   「あなたは悪くない 暴力は犯罪ですよ」と言われて、目からうろこで、私が悪いのではなくて、暴力を振るう側の問題なんだと初めてわかりました。   「あなたは悪くない」という言葉は力強い言葉でした。

1997年にシェルターができてその年に私が入りました。  生活保護とか今までやったことのないことばっかりで、心強い思いをしました。   アパートで暮らす事になりましたが、高額でしたがまずNTTと契約しました。  追跡が怖くて何かあったらすぐ警察に連絡するためにです。   警察には夫に住所を知らせないで欲しいという事は言ってあったが、警察が夫に連絡してしまったが、たまたま留守で私の実家に連絡があり、母から私に電話がありました。   吃驚して警察に駆け込んで事情を話したら、これは制度だから仕方ないといわれました。   北海道警察から所轄に連絡して事なきを得ましたが、彼がいたらどうなっていたんだろうかと思いました。  法律がないとこういうことになるわけです。

私と同じ人は沢山いるので、社会の問題という視点で考えないといけないと声を挙げました。   怖くてDV防止法ができる直前までは身を潜めていました。     夫の支配下にはないという気持ちになれたので、そこが大きかったと思います。

暴力によって閉じ込められていた自分の感性が自由になり、人生を楽しめられるようになりました。  

DV被害者の相談を受けていますが、能力の素晴らしい人がいっぱいいるんですが、暴力下にあると自分を卑下したり、気持ちがつぶれ身体が動かなってしまって、暴力から解放されればこの人どんなに輝くだろうという人が凄くたくさんいるんです。

DV防止法ができて、「やった」と思いました。  警察も行政も対応が素晴らしく違いました。   システムが全然違いました。

相談件数も増えてきました。  DVに気づいてきたんだろうと思います。

女性の人権保護団体、NPO法人・女のスペース・おんの代表理事を務めています。  当事者としての経験と、その経験に基づく現場支援と法律ができたという事を自分で見てきた経験から、制度の改革と現場支援の両輪でやっていきたいと感じました。

代表になって10年になりますが、被害者が逃げ隠れしなくてはいけないという、被害者に不利益なことをしなければいけない、それで命を守るという法律なので、欠けているのは加害者への対応であるという事は確かだと思います。  被害者が逃げ隠れするのではなくて加害者が処罰されて被害者に近づかないように加害者を規制することが大切だと思います。

加害者は加害者意識がないです。

あなたは暴力から逃れられれば、あなたらしく生きていける、才能も発揮出来る、自由になれるという事を言いたいです。  あなたを守る制度も法律もあるし、一緒に考えて行く支援者もいるから、という事を伝えたいです。

子供たちには対等な関係にあれば暴力は生まれないよという話をしています。  どんなことがあっても相談することが大事だという事は伝えたい。  暴力ではない解決方法を探すということが良い人間関係を作って行く道だという事も伝えています。

あなたは悪くない、機関がいろいろあるので、とにかくどこかに相談してくださいと言いたいです。