2020年12月9日水曜日

齋藤眞人(立花高等学校校長)      ・【人権インタビュー】不登校でもよかよか

齋藤眞人(立花高等学校校長)      ・【人権インタビュー】不登校でもよかよか~ありのままの君が認められる社会へ~

去年の不登校の小中学生、およそ18万人とこれまで最も多くなったことが文部科学省の調査でわかりました。   コロナウイルスの災害の中でそうした状況がさらに悪化するとも言われています。    そうした中で不登校の生徒に対する取り組みを20年以上に渡り続け、今では不登校の経験がある子供たちからの入学希望が殺到して定員を超えているという高校があります。   福岡市の立花高等学校です。   昭和32年創立の普通科の高校で定員は450人という事です。  実は昭和40年ごろには学校が荒廃して、いわゆるヤンキー高校と言われた時期もあったそうです。   今の校長斎藤眞人さんは16年前に立花高等学校に赴任して不登校の生徒がより生きやすい環境作りという事で積極的にその活動を続けています。 赴任当初は教育への価値観の違いに戸惑いを覚えたという斎藤眞人校長に伺いました。

定員の8割が不登校を経験している。  他の高校との違いは一言でいうと雰囲気、おおらかさがずば抜けていると思います。  抑圧感などは無縁の自由闊達な学校の雰囲気だと思います。   うちが目指しているのは違いを知る、一人一人は違うんだという事をここで体感して社会に出てほしいと思っています。

遅刻という概念、遅刻してもその生徒のベストの努力の結果かもしれない。

以前は公立の中学校の音楽の教員をしていました。  怒鳴り、命令形ばっかりでした。

不登校児に対しては、切り捨てるような考え方があったのかもしれません。  家に迎えに行って来てくれたら自分の成果みたいに考えていました。

再チャレンジしたいと思って立花高等学校に赴任しました。   

登校2日目、メイクしている子に対してはほかの先生は、この子にとってはメイクしないと外に出られないんだという事で視点が全然違っていて、そういったことがいろいろ積み重なって自分の価値観が一気に変わっていきました。

うちの学校は不登校を克服する学校ではなくて、不登校の子供たちが安心して不登校のままでいられる学校でありたいとさえ思います。

気付いていただきたいのは学校に行かなくても幸せになる道はあるし、就職がうまくいかなくてもそこで再チャレンジする寛容さがあればいいだけの話であって、学校に行っている子たちも就職している方々も歯を食いしばって頑張っておられるんだという事をもっと認め合っていいと思います。   不登校の子たちもがんばっていないわけではなくて、子供たちなりの葛藤の中で頑張っていて、ちゃんと学校に行けて、就職している子は普通ではなくて頑張った結果なんだという事が究極のメッセージだと思うんです。

生まれた瞬間に我々は人権をもって生まれてきているので、公共の福祉に反しない限り誰からも邪魔されるものであってはならない。

あなたはあなたなんだ、あなたが一番大事、あなたはあなたのまんまでいいんだよというメッセージがあるわけで、うちの子供たちはちゃんと感じているんじゃないんでしょうか。

不登校の生徒に関しては、ちゃんとあなたの存在を我々は思っていますよというのがまず第一歩だと思います。  〇とか×とかにものをわけて考えない、大事なのは彼らの意思だと思います。    自己有用感は大事だと思います。

出来ないことを嘆くのではなくて、出来ていることを認めてあげる、出来る手段を準備する。

学校外教室を20年近く公民館に教員が出向いて、そこまで来れる生徒にはそこで授業をしています。  (5時半から7時まで)

次のステップというようなものの考え方はないです。  美術館に行ったりミュージカルを見に行ったり数限りなく手段があります。

サポート教室は何らかの事情で、1年何組とかクラスに入れない子たちを別室に集めて、異なる学年が一つの空間で学べるような居場所を作りました。

授業をするための出来る手段を準備してあげる。(教室には入れなくても廊下で授業を受けられるならばそれも良しとするとか)

立花高校は全日制、単位制です。  3年での卒業にはこだわっていない、その子のペースで行う。  

その子にあった選択肢が社会側にもっと増えることが大事であって、もっと価値観が広がればいいと思います。

多様性、個性の大切さは社会も大分気付き始めています。

心根の凄く優しい生徒がいたが、中学生の頃優しいだけでは社会に出たら通用しないといわれたという事で、このことが心に刺さって、優しさが通用する社会に変わってゆく責務があるのではないかと思いました。

進学率、就職率をあわせると7割というところです。   卒業後挫折してしまった卒業生がNPOで何かを学んで羽ばたくという事も一つの手段です。  「ホットスペース」、ここは卒業生の居場所のために作った空間です。   地域とのかかわりもここで行っています。

卒業しても残りがまだうちとつながって、実現できるという空間って大事だと思います。

卒業生の保護者もカウンセリングの対象として、常にオープンにしています。  常にカウンセラーが常駐しています。  子供が悩んでいる家庭は母親、保護者も悩んでいるので一緒に寄り添ってゆくというのが凄くナチュラルな発想だと思います。

職場体験実習先として250社以上が今本校協力企業として名乗りを上げてくださっています。

不登校でもよかです。