2020年8月4日火曜日

小柳 剛、玲子(ダイヤモンド・プリンセス号乗客) ・クルーズ船での隔離の日々

小柳 剛、玲子(ダイヤモンド・プリンセス号乗客) ・クルーズ船での隔離の日々
小柳さんご夫妻は1月2日にダイヤモンドプリンセス号に乗船し東南アジアを旅するツアーに参加しました。
しかし船内で新型コロナウイルスの感染者が確認され、2月3日から17日間の隔離生活を余儀なくされます。
小柳さんはクルーズ船での日々を克明に記録し、5月にダイヤモンドプリンセス号からの生還という本に纏めています。

剛:今は普通の生活を送っているつもりですが、気持ちの中ではわさわさしています。
2月20日に下船して、外に出るなということで14日間は外に出れませんでした。
帰ってから2,3日してから電話がかかってきて、毎日のように健康チェック、外に出るなと言われました。
私は相模原の病院に入っていて妻のほうも感染しているのではないかと噂が広がりました。
まったくそうではないのに、吃驚です。
2月3日の夕方に香港で下船した中国人が感染していて発症したということが、2月1日の夜中に香港政府から発表になり、厚労省も2日に情報をつかんでいます。
3日に船内放送で伝えられ検疫に入るといわれました。
船内移動は4日の夜まで自由でしたし、ショーとかもいろいろ行われていて楽観ムードでした。

5日には船から降りられると思っていましたが、5日の早朝に船長から部屋から出るなという放送があり、そこからガラッと変わりました。
14日間の隔離をしますという通達がありました。
私たちは窓のある部屋でしたが、窓のない部屋は外国人が多かったです。
隔離の状態では天国と地獄だと思います。
豪華客船というイメージがありますが、そうではなく僕らの部屋は定価が41万円/人ですが実際は20万円です。
16日間のクルーズで3食付きで施設は使い放題で、1万2500円です。
窓のない部屋は10万円で決して豪華ではないです。
僕は73歳で薬を使っていますが、隔離中に一番精力を費やしたのが薬の確保でした。
妻が隔離後10日目、僕が12日目にようやく薬がそろうことができました。
あまりにも理不尽なことが多くて逆上するわけですが、毎日続くわけはないので自分に言い聞かせるわけです。

玲子:海外のお客さんもおおくて年齢層も高く持病比率が高いのは一目瞭然でした。
薬にはややこしい名前であったり、メモで伝える程度で大丈夫なのか危機感があって、フロントの一元で管理していて本当に伝わるのかなということが一つ、漢方薬に関しては処方してもらうのには西洋医なので重要性はあまり理解してもらえないということがありました。
全てが不安でした。
通路が狭くて大型のカートで各部屋に食事を運ぶような作りではそもそもなかった。
外国人がかなり多くて標準的な食べ物を作ることがかなり厳しかったのではないかと思いました。
今では3密対策はやっているが、大型クルーズ客船ではどうしても過密になってしまうことが多いと思います。
空気感染、飛沫感染に伴う病気に対してはできるかというと、どうなんですかねと思わざるを得ないです。
私は割りと楽観主義で基本的には食べられている間は大丈夫だろうということが強くて乗り切れるだろうと思ったりしていました。
常に待っている状態でそれがストレスになるのと、東京湾も荒れていて結構な揺れでした。
ベトナムのほうから北にきたので自分の体感と外感の温度の格差があり体がなじまなくて自律神経がやられたのか、物凄く調子が悪かったです。

剛:隔離されてからの情報については、部屋にTVモニターがありますが、映るのはNHKのBS1,2,3のみで、あとは海外チャンネルとビデオ見るというものです。
情報を取るメインはスマホのネット検索だけになります。
あとは知り合いからのメールが入ってくるので情報はそれだけです。
NHKの記者からインタビューされていたので、その方から多少重要な情報は得ました。
このクルーズ船の事故をどうとらえているのかということは全くわかららなかったです。
それが一番知りたかったがそれはなかったです。
ダイヤモンド・プリンセス号はイギリスの船籍で経営はアメリカの会社で複雑です。
前例がないので厚労省は最初困ったと思います。
接岸せずに検疫を始めたが、あまりにもおおくて700名程度の感染者が出て、接岸せざるを得なかった。
なぜ早くPCR検査がしてもらえなかったか、クル-の検査は全くしていなかったので非常に不安がありました。

乗客の要望がほとんど無視されてしまった。
人数不足、緊急対策本部がなぜ作らないのか、重症者の対応など切りがなかった。
3711名で60歳以上が60%以上を占めていて、隔離するのは無茶な話でした。
高齢で持病を持っている人も隔離するわけです。
誕生日が2月18日でケーキは運ばれてきましたが、食事は来ませんでした。
17日間の出来事で二つ大きな柱があり
①厚労省はこの船の中で何をやったのかということがまだ出てこない。
②プリンセス・クルーズという船会社が一切口を閉ざしている、これは非常にひどいことだと思っています。
この二つが見えないと今回の事故の全貌はまるきりわからないと考えています。
厚労省現地対策本部が船の中に設けてその後報告書が出ていてネットで見ましたが、よかったのか悪かったのか、悪かったのならどうしてそういうことになってしまったのかということが一切省かれていて、具体的に突き詰めないとこういう事故がまた起きるのではないかと思います。

玲子:ワクチンが開発されれば又クルーズ船に乗ってしまうと思います。
旅というよりは生活するみたいな場として使っている方もいます。
出来上がったグループの交流が楽しくて乗っている方が多いので衰退はしてゆかないと思います。
安全性とかを再点検して提供するようにしないと感染症なども起こってしまうので、対策を打っているクルーズ船に乗りたいです。