2019年3月14日木曜日

笹﨑静雄(畜産会社社長)         ・「豚と話して70年」

笹﨑静雄(畜産会社社長)         ・「豚と話して70年」
70歳、養豚業の家に生まれ、豚とともに育ちました。
大学で獣医学を学び家業を継ぎましたが、まず取り組んだのは豚舎に寝泊まりして豚の性格を探ることでした。
5年間の豚舎生活で得た経験で寝床、食事など豚の喜ぶ生活環境を知りました。
豚との会話で何を得たのか、伺いました。

韓国、中国では「豚年」で、日本ではどういう訳か「猪年」なんです。
豚の家畜は中国では数千年の歴史があり、牛、馬、山羊、豚、犬などは、家畜として純化されて一般では飼われていた。
日本では日本書紀でやっと猪が出てくるぐらいです。
若い24歳の時に韓国に行って種豚を飛行機で運んで牧場をつくると言う事がありました。
韓国では当時はあわ、ひえで白米を食べるのは1週間に一回程度でした。
日曜日に豚足を煮ていて、となりの家で赤ちゃんが生まれて、母親に豚の足を食べさせるとおっぱいをたくさん出すと言う事でした。(40年以上前の話)
その2年後うちに子供が生まれましたが、妻が豚足を食べておっぱいを出してあのパワーは物凄いと思いました。
中国との国交回復があり、豚関係では当てにされて北京に行き、北京ダックの満貫全席を御馳走になりました。
コック長から背中の皮だけではなく、みずかきからまるまる食べなさい、そいうすることで初めていい健康のエネルギーになると言われました。
豚でもおなじではないかと思いました。

29歳の時に新婚旅行で香港、シンガポール、タイに行きましたが、香港の学生を面倒見たことがあったので、香港で屠畜場(とちくじょう)を是非見て下さいと言う事で行きました。
内臓を物凄く大事にしていました。
日本では内臓、骨、皮などに対しては大事にしないが、そこで大ショックを受けました。
台湾にも行ったが、内臓の方が高くて薬だよと言われました。
「医薬同源」本来の中国の言葉が「医薬同源」で、日本人が作ったのが「医食同源」なんです。
(医食同源とは、日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方。)
それを聞いて豚一頭大事にしなければいけないと思いました。
中国に行ったら豚は宝物だと言われました。

豚が怪我をしたり風邪をひいたりした時に、どうしたらいいかと父に聞いたら「豚は何て言ってた」と言うんです。
「豚に聞いてこい」と言う事で豚舎に寝泊まりして、豚の生きざま、好き嫌いを含めて、一緒に生活をすると判るようになります。
寝ている時でも熟睡しているのかそうではないのかと、母豚が子供をあやす時にそれぞれの豚の性格があると言うとを感じ取ってきます。
豚の性格も全部違います。
臭いを感じる力は犬よりもあります。
麻薬捜査豚がいたと言う事は事実ありますが、豚は犬みたいに捕える行動ができない。
世界中に豚は300品種あると言われるが、そこの気候風土で生き残って進化したものがそれぞれの特徴をもった豚になるわけです。
チベットでは高地なので豊かな食べ物が無くて成長は遅くて大きくはならない。
ヨーロッパではドングリを食べて丸々太って、冬は寒いので豚肉を貯蓄しても腐らないので、ハム、ソーセージを発明をして1年間豚肉が持つような技術が発達する。

「随園食単」という料理書に豚肉は45品目載っています。
様々な豚の料理が紹介されていて、目から鱗です。
東京駅に子豚像があります。
幸運の子豚像と言われています。
ローマ法王が当時のイタリアのメディチ家にあげたと言う銅像だそうです。
ドイツに幸せの豚博物館がありますが、一日見ても飽きないです。
豚と幸せとの関係、豚は子沢山で一度に多くの子豚を育てあげる、好き嫌いなく食べる。
昔は豚を森の中に放牧して森の精の力を受けて丸々育ち、大変珍重された。
一見馬鹿な振りしているが、とっても利口、神様や人々に身を捧げて全てが無駄なく役に立つ。
豚の改良を見る時に骨を見ています。
ちゃんとした豚は腰がぶれないです、競馬もそうです。
「骨のある奴」といいますが、簡単には信念を曲げない。
昔の身体という字は「體」と書いていました。
骨+豊・・・筋肉、お肉が豊かで骨が基本。
そういう骨の豚はラーメンのスープにしたら抜群にうまいです。
骨のきめも違います、きめの細かい骨の肉はうまいです。

私の処のホームページで豚の博物館をインターネットで作っています。
膨大な情報が入っています。
ブタの心臓を氷詰めにして東京女子医大に送っていましたが、ブタの心臓の弁を人間に移植する事をやっていました。
豚の細胞は人間の細胞にそっくりなんです。
どうしてだろうと聞いたら、だから医食同源て言うんだと言われました。
漢方の先生に聞いたらこれが基本ですと言われました。
食育の件で保育園、幼稚園から小学校、中学校から頼まれて、豚の話をしますが、保育園などに豚の話をするのは難しいです。
若手社員が一生懸命話をします。
豚を丈夫にする秘訣があります。
①おっぱいをちゃんと母親から飲ませる。
②人間で言うと4,5歳~小学生のころにお腹がプクンと出てくるが、プクンと出て来る子ブタを育てないと駄目です。。
その時期に胃袋と骨をつくるんです。(強い身体を作る)

人間は色々な物をたべますが、感謝をして過ごそうと言う気持が「いただきます」なんです、「命、いただきます。」なんです。
大事に育てた豚と大きくなればいいと言うような思いで育てた豚では、豚の肉が歴然と違ってきます。
豚の成績が上がらないのでなんとかしてほしいと言う事で、色んな国の豚舎を見ましたが、何が違ったかというと、豚に対する愛情なんです。
理解してやると、餌の食べ方、水の飲み方、糞の場所も違ってきます、飼い主の性格が移ります。
講演会で経済学者が日本は成熟の時代になったと言っていたので、成熟の時代の先はなんだと質問したらその人は立ち往生してしまいました。
今何が問題かというと自然ということに対してきちんと向かいあっていない。
花は人間に見せるために咲いているのではなくて、花は実を付けて次の命を育てるためです。
豚も次の子供を一生懸命育てます。
日本は人を育てると言う一番大事なテーマにぶつかっているんではないでしょうか。
豚は人間の臓器と似ているらしいので、活用できると言う事が改めて今注目されています。
内臓、胎盤、目玉も大事に言われているが、大事なことは健康な豚でないといけないと言うことです。
糖尿病患者に豚の膵臓を移植すると言う臨床研究が、3~5年で日本でも実現すると言われています。
改めて豚に感謝して育てようと思っています。
健康といいますが、健体康心、健やかな身体康らかな心、それを略して健康と言っています。
人に良と書いて食なんです、極端な話、人に良くなければ食ではないと言う事になります。
良い食を食べた豚は物凄くいいものを残して行ってくれて、愛情を注いで育てた豚は安寧な康らかな豚になり、その肉は絶対うまいと言う事を豚から教えてもらってます。