2019年3月13日水曜日

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)    ・「"知的探求"を続けて 楽しき人生を」

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)    ・「"知的探求"を続けて 楽しき人生を」
三重県生まれ、70歳、京都大学を卒業後、生命保険会社で勤務し、その後2008年に新たに生命保険会社を開業し、社長、会長として通算10年間経営手腕を発揮しました。
出口さんは読書家、教養人としても知られ、著作は数十冊でビジネス書から文化、歴史に至るまでテーマは様々です。
その経営手腕と教養が注目されて、推挙されて2018年に立命館アジア太平洋大学学長に就任しました。
出口さんのもう一つの顔は歴史作家です。
中でも出口さんのライフワークとも言うべき著書は2017年11月に発売された、『人類5000年史 1』 紀元前の世界で、その後昨年12月にシリーズ2冊目を出版、その後毎年1冊のペースで発行する予定です。
知的探究心を保ち続け新たな道に挑戦する出口さんに、自らの生き生き人生をお話しいただきます。

幼稚園ぐらいから絵本に親しんでいたと思います。
その後世界文学全集とか、自然科学系の本が中心でした。
本を読んだら色んな事が判るんだと言う事が判りました。
歴史は今まで地球上に生きてきた全ての人々の人生の集積だと思います。
残っているのは面白い人の歴史です。
本を読むと言う事は面白いです。
小学校、中学校、高校の図書館の本はほとんど読みました。
大学は京都大学で、全共闘時代で大学は封鎖されて、ほとんど授業はありませんでした。
一日14,5時間は本を読んでいました。
生命保険の会社に入りました。
会社員になってからはTVは捨てて、ゴルフは出来なければ誘われないのでやらずに、仕事はほとんど本を読んでいました。
大学の時に比べれば少なくなったが、週に10冊位は読んでいました。
ジャンルは問わず面白くない本は読みませんでした。
書店で本を選ぶ時には、本文の最初の10ページを読んで面白いものを選びます。
忙しい時は新聞の書評で、読んでみたいと思って読んだ本で、つまらなかった本はありません。

ロンドン勤務をしました。
日本の企業 グローバル企業の違いは何かといえば、知識の量が圧倒的に違います。
日本の進学率は52%、先進国平均は60%超に比べれば2割ぐらい低く、大学に行ったら勉強をしない。
それは日本の企業が100%悪いと思います。
採用基準に成績が無い。
面談で採用し成績は参考程度。
ヨーロッパはこの2、30年では年平均労働時間が1500時間未満に減っているが、日本の正社員の年平均労働時間は2000時間超で全く減っていない。
長時間労働で勉強する時間が無い。
日本の社会の構造が低学歴にしていると理解すべきです。
製造業に必要なのは素直でがまん強くそこそこ偏差値があり、協調性が高くて上司の言う事をよく聞く人なので、日本の社会は、製造業の工場モデルに過剰提供をしてきて、勉強する人を大事にしてこなかった社会になっている。
今世界を引っ張っているガーファやユニコーンの企業の幹部はダブルドクター、ダブルマスターですから。
ダブルドクターと大学で勉強しなかった日本の経営者を比べたら、比較にならないのは明らかです。
遅くはない、今が一番若いんですから、色んな人に会い、色んな本を読み、色んなところへ出かけて行って、情報をインプットしなければかしこくなるはずがない。

2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業、認知度を上げるために本を書き始めました。
いつの間にか本をたくさん書くようになりました。
歴史を書くようになったのも出版社が言ってきてくれたからです。
金融機関のトップでツイッターをやっている人はいないので、小さい会社としては大手とのそれは差別化になるのでやるように社員から言われました。
1日3回やる様に言われて居ましたが、そのうちある機会がありイスラム史をやると呟きました。
面白いから年に3回位やって欲しいと言う事で勉強会をはじめました。
そのなかに出版社の方がいて、仕事に効く教養としての世界史を初めてだして10万部を越えて、他の出版社からも歴史の本を作りませんかと来るようになりました。

古稀になって当時33歳の森亮介氏に取締役を譲りました。
一昨年APU(立命館アジア太平洋大学)が学長を日本で初めて国際公募して、誰かが推薦してと言う事を聞いて、行ってみたらインタビューを受けてみませんかと言われました。
ドクターが条件だったのでマスターも持っていなかったので、受かるはずがないと思って面白半分で受けたら満場一致で決まりましたと言われました。
余り年齢とか覚悟とか考えるタイプではないです。
別府に住んで用がある時には東京に帰ってきます。
立命館アジア太平洋大学では学生が6000人いて3000人が約90の国や地域から来ています。
日本では労働力は少なくなってきている。
1年間は寮に入って日本人と同室にして、日本語、日本の習慣などを覚えていきます。
学長のドアをオープンにして1年間に100人以上話しましが、起業したい、NPOを作りたいと言う志向が強くて、去年に起業部を作りました。
若者が集まるところでベンチャーは起こっています。

『人類5000年史 1』を出しましたがもう少し詳しいものが欲しいと言う要望があり、『人類5000年史 2』を頑張って書きました。
昔から交易、色んな活動をやっているので、世界の歴史は全部繋がっているんです。
世界と離れた歴史はありえないので、極論を言えば日本史はないと思っています。
分断して書くことはおかしいと思っています。
判りやすく書くと言う事は少しは心がけています。
紙によって始皇帝のころに文書行政ができたわけです。
中国の歴史はアヘン戦争まではずーっと世界でも進んでいるんです。
歴史も変わっていきます、歴史も学問なので皆さんが中学校の時に習った歴史と、いまの歴史が一緒と言う事は、この数十年間歴史学者はなにも貢献していないことですよ、と言うと納得してもらえます。
伝源頼朝像、藤原隆信の描いた絵は、今はほぼ100%足利直義を描いた絵だと実証されている。
歴史ははどんどん変わっています。
最初の武家政権は鎌倉幕府ではなく、平清盛の政権だと今や常識になりつつあります。
聖徳太子の実在についてもかなり疑問があると言うことが明らかになっています。
できるだけ判り易くと言う事と、できるだけ最新の知見を盛り込もうとしているので時間はかかっています。
まだ7,8割は残っています。
人間は動物なのでちゃんと食べてちゃんと寝てればいいと思っているので、健康法などはやったことはありません。
色んなところに行っていますが、歴史の舞台になった所は行ってみたいと思っていて、まだ何百、何千とあります。
地理と歴史を勉強したうえで、自分で歩いてみないと判らない、その通りだと思います。
人(出会い)、本(知識)、旅(足による実践)をしないと判らないないと思います。
知ることは無数にあると思います。