2023年9月13日水曜日

藤堂栄子(NPO法人会長)       ・ディスレクシア(読み書き困難)の人たちが輝く社会を

藤堂栄子(NPO法人会長)  ・ディスレクシア(読み書き困難)の人たちが輝く社会を 

知的能力や一般的な理解力に問題がないものの、文字の読み書きに著しい困難を持つ症状をディスレクシア(読み書き困難)と言います。  このディスレクシア(読み書き困難)は文字を学び始める小学校に入ってからでないと判りづらく、ひらがな、カタカナ、漢字と進んでゆく中で症状が明らかになる場合ですとか、英語の学習が始まってから、大学に進んでから困難さが顕著に出ることもあると言います。  息子さんが留学先のイギリスでディスレクシア(読み書き困難)であると判り、日本とイギリスの理解や対応に違いを感じた藤堂さんは、2001年にNPO法人を立ち上げて、ディスレクシア(読み書き困難)の人たちへの支援、啓発活動を続けています。

ディスレクシアは読み書きの困難であって、すらすらと正確に読んだり書いたりするのが難しいというのが症状です。   知的には問題ないし、中身を理解する力はいっぱいあるんだけれど、なかなか入り口である字を読む,音に変えるという音とか、手書きするところで苦労します。  100人いたら100様の現れ方があって、処方箋みたいにすぐにこれだと出てこないというのも一つの問題です。  

パンフレットには、いくつかの質問がありますが、読み書きが疲れる、厭がることはないか、漢字の誤りが多い、練習しても書けない、とか様々あります。  例えば「短」という漢字で、「つくり」と「へん」で、「豆」と言う字がどっちなのか判らないとか、などあります。  私自身がディスレクシアです。  息子が15歳でイギリスに留学していて、ディスレクシアであると判りました。  海外の文献、サイトを見ると、全部私に当てはまるんです。   60歳になるころにきちんと大人を調べる方法が出来て、小学校2年生並みの読みの力であることが判りました。  

息子は公立の小学校、中学は受験して全寮制の中学校に行き、学業低空飛行で、時々良い点数を取ってくるんです。  読み書きがうまくいかないという事で怠けているとか、お母さんがもっと教えてくれるように言われていました。  私自身がそうなので気が付かなくて、「大丈夫、私ぐらいにはなるから。」と言って育ててきました。  息子がイギリスにいってディスレクシアであると言わて調べ始めました。  イギリスでのチェックでは建築家になる能力は全て持っていると言われました。  資格試験とかとってゆくのに読み書きのところが大変なので、明日からこういうことをやりますという事で、いろいろな支援、合理的配慮とか入れてくれました。  

英語ではディスレクシアが見つけやすい言語なので、8歳ぐらいで確定診断ができる。  日本語は平仮名、カタカナ、漢字、英語などそれぞれ違う大変さが出てくるので、遅れてしまうという事があります。   英語圏では人口の10~20%ぐらいいると言われています。  日本では調査で8%迄出てきています。  英語についての調査はないので10%ぐらいいるだろうなと私は思っています。   息子は脳の機能でそうなっていて、いろいろと手立てがあるという事でほっとしたと言っています。  読み書きは後天的な脳の機能で、そこに何か引っかかりがあると正確に読み書きが出来なくなる。  

イギリスの授業に関しては、高校のAレベルは3科目だけ選びます。  建築家に進むにはデザイン、数理と、もう一つ理科系の科目で、2年間それだけやっていればいいんです。  やる気が変わって来ました。  校長先生から彼ほどエキセントリック(個性的で普通ではない性格、奇人、変人という表現はマイナスだが、音楽家、美術家などにはプラスの意味で使用される場合も多い。)な子は見たことがないと言われました。  スピルバーグ監督、キアヌ・リーブス、歌手だとか、起業家のリチャード・ブランソンとかいます。

日本ではその対応は「ゼロ」と言ったところです。  英語では出るが、日本語では出ないという事が伝説の様になっていました。  2001年10月にをNPO法人「エッジ」を立ち上げました。  息子に頼まれたという経緯があり、「エッジ」は「崖っぷち」という意味もあるし、「最先端」という意味もあります。  10%程度いるというのは、私たちが生まれて来た意味があるんだと思います。  社会の変革を起こすとか、という役割を担っているのではないかと思って、20数年間頑張ってきました。   まずは知っていただく。  法律を作るように議員さんへの働きかけ、仕組みを作る、味方を作る、支援の育成、教科書の音声化、などをしてきています。  ディスレクシアは日本では医者が診断して、教育をどうするかという事には結びつかない。  教育の現場では読み書きに関して無駄な努力をさせる。  社会全般が横並び、皆と一緒がいいとなっています。 

息子は現在、タイのチュラーロンコーン大学で国際建築学科で英語で建築の研究をしています。  陶芸もしています。  父が外交官だったので、私が日本に帰ったのは高校1年生の時でした。  日本語、英語、フランス語は日常会話、ビジネス会話辺りまでは出来ます。  観光して困らないレベルというのは2,3か国語は出来ます。   文字を読もうとするとたどたどしくなってしまいます。  私が47歳の時に息子がディスレクシアだと判って以来、調べる程これは私のことだと思っていたので、ようやく60歳になって判りました。 大人のアセスメント(対象を数値的、計算的、客観的な基準に基づき、「評価」や「査定」などを意味する言葉がなかった。  やってみたら、小学校2年生並みでした。

いくら技術があっても、日本の筆記試験を通れないために、資格が取れないというケースがあります。  ちっちゃい失敗はいろいろしてもいいと思います。   そこからどうやって挽回するか、どんな方法があるか、考える工夫する力が物凄くその子たちの力になってゆくと思う。  まず自分が好きなものを大事にしながら、ずーっと追い求めてゆく、生きていけたらいいと思います。  不登校の間にその子の好きなことをやらせてあげてください、と言っています。  好きな道で生き生きと過ごしている方がたくさんいます。