2019年7月4日木曜日

竹本勝紀(銚子電鉄社長)         ・ローカル線の社長は運転士

竹本勝紀(銚子電鉄社長)         ・ローカル線の社長は運転士
57歳、もともと税理士で2012年に銚子電鉄の社長に就任しました。
銚子電鉄はこれまでも厳しい経営状態が続き、会社のホームページにぬれせんべいを買ってください、というメッセージを掲げ舞い込んだ注文で危機を乗り切ったこともありました。
竹本さんは社長就任後、こうした状況を乗り切る方策の一つとして、自ら電車の運転免許証を取得することを考え3回目の挑戦で運転免許を取得しました。

銚子電鉄は全長が6、4kmと短いが緑のトンネルといわれるように清々しくて景色が楽しめる路線です。
週末は観光のお客さんが多くて全体の売り上げの7割以上が観光のお客様の収入となっています。
父が税理士を50年やっていて、兄もやっていて私も税理士になりました。
15年ほど前に私の知り合いの弁護士の先生が、銚子電鉄の顧問弁護士を務めていて経営が厳しい鉄道会社があり、会計を見る人がいないので助けてほしいといわれました。
自己破産の申し立てをしたいが裁判所に納める用納金もないとのことでした。
そこからのスタートでした。
銚子市から補助金も受けていましたが、打ち切られてしまいました。
労働組合から借金をしてそこから給料を払うということまでになりました。
社員と一緒にぬれせんべいを売るところから始めました。
以前は京成電鉄のグループにいたが経営悪化で離脱せざるを得なくなり、次に引き受けてくれた会社もバブル崩壊で平成10年につぶれてしまいました。
自助努力でということでぬれせんべいを始めたのが24年前でした。

当時の駅長がぬれせんべいの社長になったことが有名になり一時期ぬれせんべいが凄く売れたこともありましたが、下火になってしまいました。
私はネットで売るしかないと思いました。
オンラインショップを家族全員で対応しました。
一日1万円程度得ましたが、どうにもならない額でした。
悲痛なお願い文、「ぬれせんべい買ってください、電車修理代を稼がなければいけないんです」、と書き込んでそれで大きなブームが生まれました。
当時2億円強から4億2000万円に増えました。(約2倍)
注文がさばききれなくなりました。(バックオーダーを中止しました)
最後の発送が半年後になってしまいました。
預金残高1億円になりましたが、全額債務の充当に充てざるを得なかった。
何とか生き残っていけるとは思いました。
車両が老朽化していたので伊予鉄道から4両の中古車両を買い付けました。
車両1両が12万円でした。
運搬費が3000万円、ワンマン運転の工事とかで全部含めて、4両で1億6000万円
になりました。
銀行からお金を借りました。

顧問税理士になったのが平成17年で、3年後に取締役に就任しました。(ボランティア役員)
東日本大震災によって隣の旭市で津波で亡くなったり、原発事故で風評被害で銚子市では観光客が激減してしまいました。
平成23年度からはまた大赤字になってしまいました。
資金繰りが厳しくなり、運転資金が厳しくなり、どこかの傘下に入るべきとの話もありました。
何度も取締役会を開いて、最終的には私が一時期社長になるということになりました。
傘下に入るためのハンコを押す係が私でした。
しかしその話がたち切れになり、経営改善計画書を出してくれれば新しい資金も出せなくもないということで、千葉県の中小企業再生支援協議会に飛び込んで、支援を受けながらむこう10年の経営改善計画をまとめました。
銚子電鉄の必要性についても議論をしていただきました。
必要だということで市でも支援をしてもらえる結論にいたり、支援が復活しました。
観光資源としても重要だということで県知事にも陳情に行き、県の支援もいただけるようになりました。
国、県、市の協調補助が始まりました。

一旦私の使命も終わったのでやめようと思いましたが、周りから止められて、1年半かけて運賃改定をすることになりました。(平成27年)
端的に言うと運転手が足りなかったし、私が運転手であるという事は経費が掛からない。
同じハンドルを握ることで社員との気持ちの共有ができるのではないか、線路の状況が把握でする、という事もありました。
筆記試験は一回で受かったが、技能試験は3回かかりました。
一回目は完全な準備不足でした。
二回目は出来が良かったが、一か所だけスピードオーバーでした。
スピードメーターは隠されていて見ることができない、15kmで徐行するところを3kmオーバーしてしまっていた。
事故対応などいろいろな試験もあります。

三回目で受かって感慨深いものがあります。
台湾、香港からのお客さんも多く来るようになりました。
顧客第一主義でやっています。
銚子はさばの漁獲量が日本一なのでさばのヘッドマークとして「3843」と書いてサバの絵をあしらって「さばよみ号」として、「この電車内で歳を聞かれたらさばを読んでください」と書いています。
経営はまだ足元が怪しい状況ではいます。
設備投資、修繕など当初補助は全体で2/3でしたが、だんだん減ってきています。
車両の検査費用1両1500万円が全額カット、県も同様で市だけは1/6を堅持してくれています。
ローカル線の使命は地域貢献だと思っています。