2019年7月24日水曜日

平賀大蔵(鳥羽市立海の博物館館長)    ・【心に花を咲かせて】もっと知ってほしい海のこと

平賀大蔵(鳥羽市立海の博物館館長・【心に花を咲かせて】もっと知ってほしい海のこと
海は魚や貝や海藻など様々な恵みを与えてくれて、日本人の生活にも大きな影響を与えてきました。
特に三重県は多様な海があって、海と人との関わりが直結した地域だという事です。
その三重県にあります鳥羽市立海の博物館は、様々な建築の受賞したおしゃれな建物でその中に船、漁具、魚や貝など海にまつわる様々なものが展示されていて、立体的な展示に子供たちは目を輝かせていました。
館長の平賀さんは地元で生まれて鳥羽の海のそばで暮らしてきた方です。
海に関する資料や情報を集めることを熱心に取り組まれ、それらを工夫して展示するだけでなく海を守る活動もしています。
海を通して平賀さんが伝えたいことを語っていただきます。

海をテーマに全面的に取り組んでいるのはここだけだと思います。
50年近くになります。(昭和46年に鳥羽市内に博物館がありました)
文化庁から国の重要有形民俗文化財に指定しないかという話があり、古い漁具、船を作る道具とか6879点が国の重要有形民俗文化財に指定されました。
ずーっと残さないといけないという事と、津波が来ても大丈夫という事で、現在の場所に移ってきました。
海岸線が三重県だけで1080kmあります。
伊勢湾に面しているところもあり、又黒潮が流れています。
リアス式の海岸があり海が変化に富んでいて、海にいる生き物が多種多様になってくる。
海の生き物をとるのにいろんな道具、方法を考えて捕まえて食べてきた。
漁村が140ぐらいあります。
養殖も盛んで真珠、あおさなどが多いです。

海にも四季があります。
沿岸の浅い海は皆さんが考えている以上に、いろんな生き物が生まれて育つ場所です。
三重ではアオリイカのことを藻イカと呼んでいます。
海藻が生えている膝よりも浅いところの海藻に卵を産みに来ます。
身近なところでたくさんの魚など育っていきます。
干潮、満潮で2mの差があります、その部分にいろんな生き物がいます。
岩場などの藻が生えているところを含めて藻場と呼んでいます。
卵は藻に引っ付いています。
海藻は大きな魚からの逃げ場所にもなっています。
日本各地で藻場が少なくなってきています。
海藻を食べてそこには身の入っていないウニなどが住みつきます。
藻場が少なくなってきた原因としては、高水温、水質の汚れ、ウニなど影響、海藻類の取りすぎなどがあります。
藻類が生える条件としては根が付く基盤がないとだめ、太陽の光を通す綺麗な海水、栄養が必要です。

いろんな生き物が共存しているのが豊かな海だと思っています。
「山は海の恋人」といわれますが、山から栄養が海に注いで海の生き物をはぐくむ。
生き物自体の種類が少なくなってきていることが大変なことだと思っています。
650人ぐらい海女さんがいますが、50年前には6000人を超える海女さんがいました。
アワビは三重県で1年で一番採れた時には700トンぐらいでしたが、今は50トンぐらいになってしまいました。
アワビは初夏から夏、サザエも採って、冬はナマコ、春はワカメ、ヒジキ、天草などいろいろ獲ります。
26地区あるが、地区によって決まりがあります。
6日しかアワビがとれない地区もあり、時間まで決まっていて、採れる大きさ(10,5cm以上)も決まっていて、資源を守っています。
アワビは10月から11月に産卵します。
伊勢海老は夏の間はとってはいけない。(卵を持っているとき)
先人たちのおかげでおいしいものを食べられる訳です。

魚市場には200種類ぐらい上がります。
サンマはほとんど少なりましたが、50、60年前はとっていました。
「サンマ」は生、「サイラ」は干物になったものを言います。
ボラは伊勢鯉といいます。
小さいボラは「おぼこ鯉」、もう少し大きくなると「すばしり」(すばしっこい)といいます。
二年目のボラを「青二才」といいます、青=若いという事です。
「いなせ」、「いな」という成長段階があり、それを背中から見た形の髷を昔結ったことから「いなせ」という言葉が出ています。
「とどのつまり」とは「とど」でボラは成長しないという事で「とどのつまり」といいます。
ボラは人間の生活環境の海とか川で育っています。
昭和30年代から汽水域が汚れて、ボラなどが臭い魚になって売れなくなってしまった。
ボラをとる漁具がいらなくなり、それが展示されています。
ボラの道具だけで1000点では利かないです。

昔は釣り針、釣り糸など全部手つくりでした、テグスは大きな毛虫から作ります。
50年前までは木の船しかありませんでした。
焼かれる資料の一歩手前だったものが結構あります。
修学旅行で年間5000人前後の子どもたちが来てくれるので、海とのかかわりを伝えようとしています。
海の恵みのことをよく話しています。
60年前のデータと比較すると、アマモの海藻は1/100になってしまいました。
アマモを増やそうという活動をしています。
膝ぐらいのところで子どもたちに獲ってもらうと30、40種類の魚などが獲れて、それを観察してもらいます。
そして1/100になってしまった理由などを話して、子供たちにアマモ場を広げてゆく活動に参加してもらったりしています。
海岸を埋め立ててコンクリートで固めてしまうと、海と人間のかかわりができなくなってしまう、自然の海岸、砂浜は人間とのかかわりを持ち、海のことをいろいろ勉強させてもらえます。