2021年4月10日土曜日

広瀬浩二郎(国立民族学博物館 准教授) ・「視覚障害者と"触る文化"のゆくえ」

広瀬浩二郎(国立民族学博物館 准教授) ・「視覚障害者と"触る文化"のゆくえ」 

広瀬さんは目の病気のため幼くして左目が見えなくなり、右目も次第に見えなくなって13歳の時には完全に失明、中学、高校は盲学校に通い、京都大学の日本史学科に進んで障害者の歴史を研究しました。  2000年に京大大学院で文学博士号を取得、2001年から大阪府吹田市の国立民俗学博物館に勤務し、展示物に触れてもらう触る展示を企画してきました。   障害のあるなしにかかわらず触ることで、新たな発見をしてもらう事で「触文化」と名付けています。  研究の集大成として去年秋に開催する予定だった特別展は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で今年の秋に延期になりました。  触ることは視覚障害者にとって欠かせない行為で、広瀬さんは当事者としても研究者としても、触ることを敬遠する動きを懸念しています。   触る文化とは何か、伺いました。

新型コロナウイルスで、人、物に触るなという事が広がってしまって、僕らは触って情報を得るので、非常に生活しにくくなったという印象が強いです。  レジでもたついてしまうという事もあります。   マスクをし始めて、全然普段と違う、音の聞こえ方、風の流れとか顔はセンサーにもなっているのでマスクをすると鈍ってしまいます。   音は大事です。 街の音が違ってくるとメンタルマップが狂ってしまう。

日本の歴史の研究をしていまして国立民俗学博物館に就職しました。  見学するという事ですが、我々は見る事ができない。  触って物の形、大きさ、重さなどを感じます。  道具などを展示する博物館なので積極的に触って、関心を生かすという方向で収蔵品に触って確かめて行きました。   温度、質感、などは触ってみないと判らない。   しかしこれは眼に見える見えないに関係なく大切な要素だと思います。   髙さ9mのトーテムポールを中庭に立ててじっくり触って、木の匂いなどを感じました。  アーティストの人が制作しているのを追体験をしているのを感じる様でした。

触る展示、2006年が初めてでした。  視覚障害の人にもっと博物館にきてもらいたいと思いました。  点字が出来る前の触る文字だけだと地味なので、触って面白いもの、仏像、神社の模型、鳥の模型とか、展示しました。  2012年には常設コーナー、「世界を触る」というコーナーを設けました。   見ないで触るというコーナーも設けました。   いろんな地域、いろんな素材のものを集めてバラエティーにはこだわりました。  昨年2月に臨時休館になり、開館するとなった時にも非接触という事で、運用が無理という事で締めましたが、7月ごろ触る前後にスタッフが監視して消毒をして、今は通常の運用をしています。  

目の見える人は確認型ですが、触ることに集中してもらって探索型にしてもらいたい。   来館者にアイマスクをするという企画もしました。  探索型の触り方をしてくれます。 割と評判がいいのでもう少し大々的に展開したいと思っています。  音が出るもの 南米の楽器 ギロ カエルの形をした背中に凹凸があり棒で擦ると音がする。  アフリカの民族楽器や瓜を乾かしたもので種が入っていて、ピンポン玉よりちょっと大きくて糸で二個をぶってけて振って音を出す子供の遊び道具。

視覚以外の感覚を再評価する。  視覚に頼り過ぎてしまって来て、感覚の豊かさを失ってきている。  触るという事は全身の感覚をもう一度敏感にする。  縄文土器に触って手を介して縄文人を感じてもらう。   

2017年奈良の国民文化祭で、興福寺の仏頭、直径1mぐらいの物で、火災で燃えてしまって頭の部分がある。  精巧につくられたレプリカがあり、触れる展示物として展示することになったが、私も触る機会があり、左耳の下の部分が欠けている。  その部分を触った瞬間に仏像の痛みが自分に伝わってきたような感じがして、ゾクゾクっと感じました。

触る文化、触る楽しさ、奥深さを目が見える見えないに拘わらず、伝えて行く、そのキーワードとして「触文化」を広げていきたいと思います。  ユニバーサルミュージアム「触の大博覧会」が今年の秋に延期されました。   触るという根本的なことをじっくり時間をかけて問い直す時間があり、結果としては決してマイナスではなかった。 9月から3か月を予定しています。  基本的には3次元のものが多いですが、2次元の点図、地図、天文図、太陽系とか、火星の表面を表しているもの、銅鐸の表面、なども展示予定です。  音、土鈴など振って音を鳴らしてもらう。  自分で体感してもらう。