2021年3月28日日曜日

比留間榮子(薬剤師)            ・心を重ねる処方箋

比留間榮子(薬剤師)             ・心を重ねる処方箋

97歳、今でも朝8時半から夜7時半まで店に立ち95歳のときには世界最高齢の現役薬剤師に認定されました。  お父さんの薬局を継いで76年、ただ調剤をして薬を渡すだけではなく、お客さんの話を親身に聞き、心に寄り添う優しさから人はみな榮子先生と呼びます。  お客さんに手を添え心を重ね続けて、榮子先生が薬と共に寄り添って手渡してきた言葉の薬、人に寄り添う処方箋を伺います。

私が生まれた大正12年父が創業しました。 97年になります。  95歳のときには世界最高齢の現役薬剤師という事でギネスブックに載りましたが、孫がいろいろ動いてくれました。   朝8時半から夜7時半まで店に立ち、月曜日から土曜日までやっています。  昔は休みもなく日曜日もやっていて、朝6時ごろから夜10時までやっていました。    朝は家族には「おはようございます」と仏壇には「おはようございます」と「今日一日見守ってください」と、そして店について調剤室に向かっても一礼して「お客様のために元気で働けるよう、お薬を届けさせてください」と毎日挨拶を続けてきました。   お客様に納得していただくようにいろいろ説明したりしています。  一人暮らしの方が多くなってきて店で色々話をしてゆく人もいます。  

話をしっかりする薬剤師がいるという声を聞いたこともあります。  薬局には暖簾が下がっていて気軽に入ってこられます。  昔は余り医者にはいかないで薬局に来てすますようなことがよくありまして、いろいろアドバイスしていたりしました。  聞いてあげるという事が大事です。   湿布を張ってあげたりして、手当、手を当てて温もりを感じていただく、「困ったらいつでもいらっしゃい」というと、お客様の気持ちにも元気が出て、帰って行きます。

「疲れた」という言葉は出さないようにしています。  「疲れた」というとお客さんまで疲れた顔になってしまいます。    「ありがとう」、「お大事に」という言葉は大事にして言っています。   

70代の男性が薬を取りに来た時に混雑していてすぐに渡す事が出来なくて、怒って帰ってしまったので、後で家に謝罪に行ったんですが、玄関先でもういいと投げやりになっていて、なんとかお詫びをしたら根負けしました。  聞くと数か月前に妻を亡くした寂しさ、すべて一人でやらなくてはいけないとかいろいろあって強い口調になってしまったという事で、最後には「ありがとう」と言ってくれて理解してくれました。

新しい薬とかもあり色々薬の知識を覚えていくのが大変ですが、勉強します。  接客の合間にパソコンを開いて新しい医薬品の名前を調べたり、会議に参加しますし、LINEもやります。  勉強はこれで終わりという事はないです。  一生現役で行きたいです。  朝は酵素、夜は缶ビール一本飲みます。  病気はしませんが、股関節が痛くなり、入院して人工関節にし不自由になりました。   働けることは幸せだとつくづく感じます。

なんでも皆さんと相談できるのが薬剤師の仕事だと思います。  お客様と医療に携わる人達との間に立つ命の門番だと思っています。  でも薬だけに頼る生活はお勧めしてはいません。 ただ薬を飲むという事ではなくて、30分リラックスする時間を作って、心身をリセットすることが大切だと思います。   毎日を大切にして明るくやってゆくのが身体のためには一番いいことではないかと思います。