2021年3月9日火曜日

渡邉昌子(「いいおか津波復興かわら版」編集長)・東日本大震災10年シリーズ "5時26分"を語り継ぐ

渡邉昌子(千葉県旭市「いいおか津波復興かわら版」編集長)・東日本大震災10年シリーズ "5時26分"を語り継ぐ 

千葉県旭市では地震から3時間近く経った午後5時台に、7.6mと最大の津波に襲われ、災害関連死を含めて16人が犠牲になりました。   震災の後特に被害が大きかった飯岡地区で発行されてきたのが「いいおか津波復興かわら版」です。  編集長の渡辺さん74歳に被災した人達の証言の聞き取りを続けてきた思いを伺いました。

10年前に震災があった年から「いいおか津波復興かわら版」という手作りの新聞を作って市内に配り始めました。  一人で被災者のところに行って話を聞いてA4サイズのフリーぺーパーに纏めて書いています。  月一回のペースで3年間続けて4年目からは隔月になって現在は3か月に一回となっています。  現在は7000部を作って配布しています。

被災者の証言と一緒に似顔絵を描いています。  写真よりも似顔絵のほうが本当の気持ちを載せることが出来るのではないかと思いました。   おたがいにつらさを分かち合うような形でお話ができるようになりました。   私の家も被害にあいました。 柱にも津波の跡が残っています。  襖にも残っていてこうだったという事を残しておこうという思いがありました。

長い事教員をしていまして、3月に退職の予定でした。  それで退職の会を夫の店で会食をしていましたが、その時に地震に会いました。  津波も来て高台で見ていましたが、まさか津波が押し寄せてくるとは想像できませんでした。   私たちの町内の被害が正確にわからなくて、被災状況を聞き取って記録に残した方がいいんではないかと思って5月から被災した人たちのところに行ってお話を伺って、記録して子供や孫に伝えようという活動につながりました。   

当時73歳の人の証言、防災無線で津波が来るから避難してくださいとの呼びかけがあったが、店が心配なので家にいた。  第一波が下水からあふれたぐらいで済んだので安心していたが、学校から帰ってきた子供たちが逃げようという事で、車でコンビニの駐車場まで避難したが、大丈夫だと思い店に戻ってしまった。  しばらくして海岸の様子を見たら高い波が見えて、子供を車に乗せて逃げようと思ったが、車が思うように動かず、車が浮き始めたので、子供たちはバラバラに逃げ、自分は津波の勢いで流されたが、救助され助かった。あの時帰ってこなければ被害にあわずに済んだのにと悔やんでいます。  第3波が最大の高さで7.6mにもなりました。 5時26分でした。

九十九里の浜には津波が来ないと聞いていたが、飯岡地区にも300年以上前に元禄津波が来て70人以上亡くなった方がいるという事を後で知りました。  このことを知っていればもっと津波への警戒心はあって、人的被害はなかったのではないかと思いました。  

小野良子さん、74歳。  津波が来るから避難するように防災無線の呼びかけがあった。第一波を堤防の近くまで見に行ったが、道路も濡れていなかったので、これならば大丈夫と思って家へ戻ることにした。  息子も帰ってきたので念のために避難しようと思って玄関のドアを開けた瞬間、目の前に大きな波が押し寄せてきた。  家の中に押し流されてしまい、家具の間などに挟まれて身動きが取れず、押し寄せる波で息も出来ずおぼれてしまった。   気が付くと海水で浮いていた畳の上にいた。  助かったのが不思議だった。  息子も流されたが瓦礫の上を渡りながら逃げ消防署員に救助された。  (息子さんには障害があり、避難先では辛かったと思います。)  助けられた命なのでなんとか生かしていきたいとおっしゃいました。  体験を防災に役立ててもらえれば一番いいと考えたようです。  このことを紙芝居にして知っていただこうと活動しました。

被災した方々は高齢者が多くて、10年経って直接被災した方々が表に出られなくなって、教訓をどうやって伝えてゆくのか大きな課題になってきました。 

夫婦二人で魚練り製品製造業を営む家庭。 製造機など全く使えなくなり大金がかかるので家を更地にしてしまった。  年齢、妻の体調を考ええると、再起不能と判断した。

復興どんぶりを考えました。    地元の食材を必ず使う事と値段は1000円にする、その中の10%を支援金として街の様々な支援活動に繋ぎたいという事で進めました。  23店舗が参加していただきました。

「いいおか津波復興かわら版」63号では震災後に作られた建物、当時の仮設住宅とかを特集にしようかと思っています。

旭いいおか文芸賞 「海へ」 と題して5回目になります。 自由詩、エッセー、作文,定型詩(俳句、短歌、川柳)

先日旭いいおか文芸賞 「海へ」の朗読発表会が行われました。 震災を語り継ぐ事にもなります。

話を聞いてもらいたいという人がいる限り、話を聞いてそれを記録に残していきたいと思っています。  つらい記憶はすぐには話せないという人もいますので、聞いて伝えていきたいと思います。