2021年2月21日日曜日

鶴島綾子(管理栄養士)          ・【美味しい仕事人】災害に命をつなぐレシピ

 鶴島綾子(管理栄養士)          ・【美味しい仕事人】災害に命をつなぐレシピ

東日本大震災から今年10年なります。  3月11日福島県南相馬市は地震、津波に襲われました。   さらにその後起こった原発事故によって、市内の病院は孤立し患者と職員が閉じ込められました。  物流が途絶え食料が尽きそうになる中、当時病院の管理栄養師だった鶴島さんは限られた食材を大切に使って、味付けの工夫を凝らした食事を提供しました。  そして患者さんや病院のスタッフの命を繋ぎました。   鶴島さんはその後も食を通じて被災者を支える活動を続けています。    仮設住宅を尋ねる出前講座ではフライパン一つで出来る料理指導が人気を集めました。  そのレシピはこの10年で1000を超えるといいます。

その日は福島第一原発から18kmの所にありました南相馬市小高病院で管理栄養士として働いていました。  情報がなかなか入ってきませんでした。   一号機の水素爆発がありましたが、避難指示を聞いて非難した人もいましたが、入院患者68名いたので、職員も一緒に寝泊まりしていました。   12日は患者さんへの食事は3日分は保管してありまして、患者さんへの食事は大丈夫だったんですが、職員用を自転車で買い物に出かけました。   

生卵を7パック買って来て、玉子かけご飯を食べました。  20km圏内は避難指示が出たので3月13日市立総合病院に患者さんを避難させました。  14日に3号機の水素爆発があり、患者さん、スタッフも一か所に集まり、避難するか、残るか当人の判断をという事になりました。   私の家は夫と子供人が一緒にいることが出来たので病院に残ることにしました。

避難した総合病院は原発から23km地点にあり、30kmの線引きにより何も物資が入ってきませんでした。  患者、スタッフで300人ぐらいいました。  最初は在庫を使う事もできましたが、避難所から回ってきたおにぎり、菓子パンは手に入るようになりましたが硬くなっていて、野菜などの提供もあり、何とかやっていましたが、患者さんから今日はこれだけかと言われました。  コッペパンが届いたので工夫してフレンチトーストにして食べてもらいました。   硬くなったおにぎりは大きな鍋に割って入れて、鮭、昆布などそのまま入れて味付けをして、卵とじおじやにしました。  生きることは食べる事です。  

避難所では炊き出しが出来なくて、冷たいおにぎり、パンなどしか食べていませんでした。 3月25日に諏訪中央病院の名誉院長の鎌田実先生が南相馬に来ました。  レトルトのおでんを500食持ってきてくださいました。  おでんを温めて皆さんに提供して初めて暖かいものを提供することができました。   残った汁にご飯を入れておじやにしました。

30km圏内は避難指示が出て、皆さん県内外に避難して、私は原発から60km離れた二本松に家族が避難していたのでそちらに避難しました。  南相馬の鹿島区に2140棟の仮設住宅ができました。   院長の遠藤先生が70km先からこの仮設住宅に来てくれて、仮設の診療所を2012年5月に開くことが出来ました。  4000人ぐらいが生活していました。(今は仮設住宅は取り除かれています。)   高齢の方々が沢山いました。   農業、漁業の人が多かったですが、土をいじるとか、漁に出掛けるという事はできませんでした。  仮設住宅に行って出前の健康講座を開いて、先生の話からいろいろ雑談などしていました。   

仮設住宅の台所は狭くて、フライパン一つで出来る簡単な料理という事から始まりました。缶詰を使うとか、季節野菜を炒めるとか、簡単なちらし寿司、炊き込み寿司などを作ったりしました。  残ったご飯を冷凍して置いたりして、きりたんぽにしたりもしました。 簡単レシピを作って渡していました。   

私の家は建築業をやっていて、小さい時には9人のお弟子さんが家にいて、3升炊きのガス釜が2個有り、母が食事の対応をやっていて、子供心にこういうのは嫌だなあと思っていましたが、気付いた時にはやっぱりこういう道に進んでいました。    高3年生の時に魚料理のコンテストがあり、魚のすり身を加えてゴマ豆腐を作って、北海道東北ブロックで優勝して、全国大会でも優勝しました。  副賞がシンガポール、マレーシア旅行で行ってきました。   

父は私が高校1年生の時に脳梗塞で倒れて、普通の生活ができるようにななりましたが、主治医の先生から食事療法が大事だと言われて、いろいろやって身体が改善していきました。    食べる事、食べ物はこんなに体に影響があると思ったことと、人が健康になって喜ぶ、こういう仕事だったら栄養師だと思って、栄養士になることを決めました。

災害時、常日頃備えることが大事なんだと思います。  健康でないと人を助けるという気持ちにもなれないので、免疫力を高め、おいしい食事、笑える食事が大事だと思います。