2019年12月22日日曜日

今野 徹(国産チーズ専門店・代表)    ・【"美味しい"仕事人】チーズの声を届けたい

今野 徹(国産チーズ専門店・代表)  ・【"美味しい"仕事人】チーズの声を届けたい
国産のナチュラルチーズが人気を集めています。
中でも酪農王国北海道のチーズは工房数の増加とともにクオリティーが高まり、国際コンクールでも評価を得ています。
国産チーズ専門店、この店は国内のチーズ生産者自らが共同出資する形で作られた初めての店で、国産のみを取り扱うチーズ専門店です。
今野さんは北海道庁の元職員で道庁で勤務していた時も、農林水産省に出向している間も、酪農家など全国の生産者との交流を通じて日本の食について考えてきました。
国産チーズの専門店の立上げは、生産現場と消費者をつなぐ役割を果たしたいとの強い思いからでした。
美味しいチーズができるまでの背景にある情報や生産者の思いをチーズの声として、消費者に伝えていきたという今野さんに伺いました。

店には常時50~80種類の北海道産のナチュラルチーズが置いてあります。
チーズは生もの、生き物なので真空パックしてしまうとビニールの臭さも付きますし、チーズも息ができないようになってしまうので店で切ったものを出しています。
同じ作り方をしても同じチーズにはならないし、原料の生乳はエサも違うし水も違うし、牛も一頭一頭個性があるので違います。
10㎏の生乳から1㎏のチーズができますので、1/10になるので個性が濃縮されるのでドンドン個性が出てきます。
草の栄養素も違うし絞った時期によっても違います。
北海道には300種類ぐらいあります。
他の県のチーズを合わせると400、500種類以上のチーズを店では扱っています。
すべて国産です。

チーズの本場はヨーロッパの印象がありますが、技術も学んで基礎知識もしっかりして技術の研鑽もしているので、逆にフランスなどから日本のチーズはこんなものがあるんだと言っていまして、国際的なコンクールでも賞をとるという様になってきています。
80,90年代にぽつりぽつりと出てきて、ヨーロッパに渡って乳製品の加工の学校に行ったりして、作って行って次の世代の方々が増えてきて、2000年からどんどん増えてきて、2019年代になってくると工房数が加速してきました。
生乳の出荷の6割が北海道です。
5月に新潟市で行われたG20農業大臣会合のレセプションで日本のチーズのプレゼンテーションを行いました。
食べていただいてエクセレントを言って、喜んでいただきました。
11月30日、12月1日に神戸でジャパンクラフトチーズエキスポというイベントを農水省のバックアップを受けて、日本で初めて日本のチーズの作り手が集まってPRするイベントを行いました。

大学、大学院を含めて酪農畜産の専門の大学を卒業後、道庁に入りました。
時間外にアイスクリームやチーズをつくっているところを取材して、アイスクリーム&チーズマップなどをホームページに発表したりしていました。
チーズの作り手に出会って感動して、感動を広げたいという活動は道庁の頃から続けて居ました。
自分たち自身が北海道のチーズはこれだけあるという事と、素晴らしいチーズがあるから食べてみないかという事を、家族友人に言ってもらうのは予算が無くてもできるので、チーズの斡旋会をしたり、詳細な解説をしていました。
それが当時の知事の目に留まって、知事が掲げるゼロ予算事業のいろいろな取り組みのトップに掲載されていただいたりしました。
消費拡大は役所での前向きな関係の構築の一助になったと思います。
農林水産庁に出向になりました。
自分の担当以外の見識を広げたいと、全国各地に飛び回りました。

2015年にTPP交渉が妥結して、農林水産庁に居たときに、自動車産業などの輸出産業と日本の農業のマイナスの部分が天秤に掛けられて、車のために農業は泣いてくれよという結論で、数値の比較だけで結論に達していたことに対して危機感を感じました。
もっときちんと食べ物とはねと、一対一で話せる場を作らなければいけないと思いました。
それが退職をして自分の会社を立ち上げる契機になったという背景がありました。
チーズの生産にかかわる内容の川上から川下まできちんと繋ぎ合わせて、こういう風な努力をしてここまで来たんだよという事が判れば、手を伸ばしてくれる方が増えるのではないかという自信、確信があったので、チーズを中心に食の考え方を変えてもらいたいというのがきっかけです。
食の生産にかかわる上流のいろいろなこと、文化を聞いたリ触れたりして、川上から川下までを縦の糸とすれば、それぞれの地域の良さを知ってそれが横の糸としてつなぎ合わさって面として、いろんなことが伝えられるのではないかと思いました。

北海道では酪農家が6000戸切るような状況ですが、生き残ってもらわないといけないので、草、土壌、風土などを伝えていきたいし、逆に風下から風上に声を届けるという事も必要だと思います。
株式会社なので株を工房の方がたにも買っていただいて出資してもらうという様なスタイルをとっています。
北海道ナショナルチーズコンシェルジュという肩書ですが、お客さんのニーズ、シチュエーションに寄り添って提案するという事をコンシェルジュとして、皆さんへのベストなものを提案しますという思いを込めて、この肩書にしています。
野菜の朝市も第二、第四土曜日に3年間やってきましたが、それを今年から常設化しました。
チーズ同様に野菜についても現地の声を伝えていきたいと思っています。
保育園児、幼稚園児に店でチーズ作りの一部体験をやってもらっています。
高校生、大学生のインターンも受け入れたりしています。
ちょっとした配慮でいい社会が作れると思うので、想像力を働かせ妊婦さんへ席を譲り合ったりすることが当たり前な世の中ができると思いますし、農業とか農村、そこに住んでいる人に魅入られてこの世界で生きていこうと思っているので、その分野の中で想像力を働かせるきっかけを作りたいと思います。