2019年12月10日火曜日

木下洋一(元法務省職員)         ・【人権インタビュー】 (2)見放されてきた外国人収容問題

木下洋一(元法務省職員)・【人権インタビュー】 (2)見放されてきた外国人収容問題
日本に在留する外国人の数は過去最多を更新しました。
日本での仕事や留学にはビザの取得が必要ですが、中にはビザの期限が切れた後も日本に滞在するオーバーステイの状態になる外国人もいます。
日本に在留する資格がなく国外退去を求められている外国人は、法務省出入国在留管理庁、通称入管の施設に収容されてしまう。
実は今収容が長期化ている人が増えていて、中には5年以上収容されている人もいます。
収容に期限が示されず精神的に追い込まれ自ら命を絶つ人がいます。
そうした中、入管の元職員の男性が外国人の収容問題に取り組んでいます。
木下洋一さん(55歳)です。
木下さんは外国人を管理する制度自体に問題意識を持ち大学院で研究しました。
ことし退職し現在講演などでこの問題の発信に取り組んでいます。
この問題の背景に何があるのか、あるべき制度の姿とはどういうものなのか、伺いました。

今年、入管問題救援センターを立ち上げました。
18年間入管に居ていろんなことを感じ、入管行政に関する矛盾もありいろんな人たちに知っていただきたいと思いました。
皆さん方の考えるきっかけを作っていきたいと思いました。
2001年に入管に移り、実態調査部門というセクションで、ビザを持っている人の現状調査する仕事でした。
在留特別許可に関係する審判部門でも仕事をしました。
ビザがない人たちの手続きをするセクションですが、事情を聴く仕事をしていました。
オーバーステイであっても日本人と結婚、オーバーステイ同士の人が結婚して子供が生まれ学校に通っている、オーバーステイをしている中で怪我をして日本で治療をしている、そういうような事情を抱えている人が結構います。
収容されたうえで強制退去手続きを受けて本国に帰りなさいという命令書が出されれば
送還されるまで収容される、それが原則です。

2019年6月街で収容人数は1253人で半年以上収容が679人、長い人では5,6年収容されている。
厳格化する方にかじを切って、長期化が出て来ている。
不法滞在者が増えると犯罪が増えるという様なイメージ的なことがあるが、外国人の犯罪者が増えているかというと必ずしも増えているわけではない。
外国人の入国者が右肩上がりに上がっている状況において、外国人の犯罪率はさがっているが、安易なイメージは慎重に考えるべきだと思います。
収容に期限がないので召還されるまではずーっと継続するわけです。
何年も収容されている人たちは国に帰りなさいという命令書が出ているにもかかわらず、それに従わない。
理由は家族がいるとか、難民認定申請をしたのに認められなかったりで、本国に帰ると迫害されてしまうという事で、帰りたくないという事で継続されてしまい、先が見えない。
収容の長期化が出て来ている。
精神的な問題を抱えることになる。
実際に命を絶つという事があり、5人の方が亡くなっている。
収容は一時的なはずなのに今は半分が長期収容者になってしまっている。

自分から帰っていきますという以外は出れないという事で、希望が無くなってしまう。
収容者のハンガーストライキがありました。
一番の不満が仮放免が認められない、認められないこと自体よりも認められない理由がわからない、教えてくれないという事に不満が大きい。
病気になって収容が耐えられない体にならない限り出られないという事で自らの体を痛めつける行動を起こしてしまう。
200人近くの人がハンガーストライキを行いましたが、体調を崩したり亡くなってしまった人もいました。
収監側と収容者側の根競べのようになってしまって出口が見えないような状況です。

在留特別許可がもらえなかったから収容されているが、在留特別許可がもらえなかったという事が正しかったのかどうか。
正しく機能しているのであれば自己責任論の説得力を持つが、フェアかどうか立ち返って自己責任論を語るべきだと思います。
仮放免、解放の判断基準は実はないです。
仮放免の可否判断は入管の裁量で決められている。
基準がないこと、プラス理由がわからないという事、そこが問題です。
或る基準を示して方向性を持たないと人権という視点から見ると問題があると思います。
裁判を起こしても外国人が勝つという事はあまりない状況です。

日本にいる夫婦が子どもを設け、夫婦がオーバーステイだとその子もオーバーステイなわけです。
その子が成長して日本の学校に通い、コミュニティーの中で成長してゆく。
夫婦がオーバーステイ容疑で摘発されると子どもを含めて退去強制手続きに乗せられる。
しかし子どもには何の罪はない。
子どもの強制送還には慎重になるべきだなと思います。
入管制度に疑問を持ちながら仕事をしている人は多いです。
職員の気持ちと制度は必ずしもリンクはしていない。
幅広い裁量があるなかでどうしても前例で判断することが多い。
外国人に対して上から目線で見てしまう事が多々あります。
経済的優位性を意識していたところはあると思います。

入管に18年間いましたが、裁量が公正に行われているとは思えなくて、そのシステム作りが不可避だと思って大学院に行って学ぼうと思いました。
入管の裁量権は基準が曖昧な事、入管だけしかコミットしていないため判断自体がブラックボックス化してしまっているので、システム自体を変えないとブラックボックスから抜け出せないという事から、研究して論文にまとめて活動につなげていっています。
大学院を卒業と同時に入管を辞めました。
外国人の人権に根差した出入国管理在留システムが不可欠だと思います。
手続き的な保証が欠けている。
収容期限をもう一回検討すべきだと思います。
政治が動かないとシステムは変わらないと思います。
日本人の人権意識が問われている問題だという視点でとらえるべきで、それをもとに考えてゆくべきだと思います。
出入国管理行政の根幹にあるのは人権だと思うので、正面から見据えないと公正な行政は行われない。
人として同じ目線でいるべきだと思います。
外国人の助けを必要とするときが目の前にあり、同じ目線でいるべきだと思います。
お互いが尊重することが国際化、共生化の礎になると思います 。