2019年1月8日火曜日

長谷川一男(「日本肺がん患者連絡会」理事長)・受動喫煙のない社会へ

長谷川一男(「日本肺がん患者連絡会」理事長)・受動喫煙のない社会へ
他人の吸った煙草の煙を吸い込む受動喫煙、この対策を強化する改正健康増進法が去年成立しました。
これを受けて今後学校や病院、行政機関などは屋内は完全に禁煙になり、飲食店でも喫煙が規制されます。
日本肺がん患者連絡会の長谷川さんは47歳、ステージ4の肺がんと闘病しながら活動を続けています。
受動喫煙の環境をどう変えようとしているのか、がんを患っている患者や家族をどうサポートしようとしているのか伺いました。

2010年にステージ4の肺がんになって以来、闘病をつづけているが、体調については、がんの方はおとなしくしてくれています。
お腹に複数の転移があるので、定期的に計画観察している状態です。
治療しても1年経つと半分の方が無くなってしまうという状況の中でした。
やっと丸9年来た状態です。
治ると言う事はないと思います。
限られたた時間の中でどう生きるかという方向に患者はきます。
僕自身は、人間はそんなに弱いものとは思っていなくて、強いものだと思っています。
手術をして右の肺は全部取っているんですが、合併症があります。
入院が4か月あり、その後1年間ぐらいは毎日通院していました。
具合も悪くなりやすくなるので、そのたびに入院しています。
今も1年に1っ回位入院しています。
感染が背骨に侵食して行って背骨が脆く崩れて、コルセットを今はめています。
そういう人生だよね、生きるために俺は差し出したんだよねと、あんまり大変と思わないようにしています。

私は一回もたばこは吸ったことはないです。
受動喫煙の可能性が高いと思っています。
父が吸うたばこの煙が、母親が嫌いでリビングに換気扇を付けていました。
父は一日に2箱ぐらい吸っていました。
就職する様になっても、煙草を吸いながら仕事をするのが当り前な時代でした。
原因を考えるとそこに行き着くと思います。
父とか職場の人を憎むと言う感情は無くて、持って行き様のない感情にぐらぐらすると言うような感覚です。
受動喫煙は置き去りにされた問題に成ってしまうと気付いて、絶対に声を上げないといけないと思いました。
受動喫煙が原因で肺がん、心筋梗塞、脳卒中、乳幼児突然死症候群等が起きる、それが年間1万5000人いますという、科学的根拠がはっきりしたという事もあります。
マナーも問題ではない、人に危害を与える事だと科学的に証明されて、それで死んで来た人がいると言う事で、何処かで断ち切らないといけないと思いました。

インターネットが出てきて掲示板に患者さんの不安、対処、体験などが一杯ありました。
でもその人たちは亡くなってしまうと、それが継承されていかないとことにショックを受けて、継続するものを作ろうと思いました。
以前TVのディレクターをやっていて、半分以上が肉体労働みたいで、僕は仕事ができなくなって、例えば医師にインタビューして今の治療法を判り易く説明することは僕には出来るので、そういったことをやって見ればいいかなと思いました。
NPOを立ち上げて、助成金を頂いて同じ様な患者を救う様になるかもしれないと思うとやらないわけにはいかないというような感じになりました。
2017年自民党の厚生労働部会で議論されて行く中で、肺がんになったら患者は働かなくていい、というような発言があったが、職場を移ればいいという意味だと釈明をしたが、これは良く覚えています。
論理的にはそうかもしれないが、現実的にはかなり無理があるという感覚を受けました。
肺がんの患者さんたちが、どれぐらい受動喫煙をしているのか、アンケートで調べました。(4日間で3,400通来ました。)
分析すると、肺がん患者さんたちが職場で働きながら、受動喫煙している人は約3割いましたが、これはショックでした。

我慢しているという声が多かったです。
取引先、上司とか力関係の中で、どうしても言えないという状況が浮び上がってきました。
家庭で受動喫煙続けてると言うのが6%程度ありました。
奥さんが肺がんになりその目の前で煙草を吸っている状況です。
国会で参考人として呼ばれて、屋外の喫煙所について意見を述べている時に「いい加減にしろ」というヤジが飛んだが、一言で言うと残念です。
議論の場で対立、喧嘩が起ると言う事は本意ではない。
進行がんでは命の限りを伝えられているわけで、日常って大切なんだと判るわけで、そんな中で自分を大切にして欲しいし、人にやさしくして欲しいという思いのみなんです。
満足ではないが、一歩進んだ法律ができたと思います。

僕は「煙草を吸っていたんですか」と良く言われます。
悪意はないと思うが、肺がん患者を傷つける言葉になっているのではないかと或る時気付きました。
「1本も吸っていません。」と返答するが口調が強くなります。
煙草を吸っていたんですか、という言葉の中に「貴方は自業自得ですよね」という言葉の意味が入っているような気がするんです、それで言葉が強くなるんだと思いました。
質問に答えているだけで、僕は仲間を傷つけているんじゃないかと気付いて、「煙草をすっていますか」という質問は肺がん患者の人にはして欲しくないという事は伝えています。
肺がん患者に対して、普通に接してほしいと思っています。
がんは、重い話なので聞く側もストレスがあって、もう聞きたくないという状況に無意識的にもなると、「大丈夫大丈夫」とか、「がんばればいいじゃん」とか、重い話から逃れようとする瞬間がある。
それを感じると患者は言わなければ良かったと思ったりする、軽くあしらわれた感がある、それは辛い、普通に聞いてもらえればと思います。

病気になって5年で患者会をつくる。
患者会の数は増えてきて、「日本肺がん患者連絡会」を作って理事長をやっています。
新薬を出ることを切望しています、なるべく早く承認して欲しいので、要望書などを出すのに、日本全国の団体が集まって肺がん患者の総意です、と言う事でお伝えすることができると思う、その意義は大きいと思いす。
受動喫煙に関しては国の法律が出来て世の中は変わってくると思います。
家庭など身近な人から受ける、職場から受けるとかは、法律では縛ることはできないかもしれない。
私たち自身が撲滅して行くと言うことに、取り組んでいる最中です。
対立があるので、解消して進む何かを今考えている状況です。
突破口があるかもしれないというわくわく感があります。