2018年11月19日月曜日

山井綱雄(能楽師シテ方)         ・【にっぽんの音】

山井綱雄(能楽師シテ方)       ・【にっぽんの音】
能楽師狂言方 大藏基誠
1973年横浜市出身 45歳。
金春流の能楽師であった祖父の影響で稽古を始めて、5歳で子方として初舞台を踏み、12歳の時に初シテ、「経政」を務め能楽師の道を始めます。
「乱」「石橋」「道成寺」「翁」など能楽師の登竜門といわれる大曲を演じる。
オペラやジャズピアノなど他のジャンルとのコラボレーションを数多く行っている。
デーモン閣下とのコラボ、日本だけでなく海外での公演やワークショップなども開いて能の魅力を広く伝えている能楽師の一人。

デーモン閣下のたいへんなファンでして、中学2年でバンドを組んで、「世紀末」のコピーバンドを今もやっています。
そこから閣下がやってらっしゃる当時CS放送のキャスターをしていて、ゲストで出さしてもらって直接話をすることができて、それがきっかけで親しくさせてもらっています。
友達のジャズピアニストとはゼロから新作を作って作品にしています。
奇しくも大震災の1年前に「きずな」という作品を作っていました。
シテ方にも5流あって観世流、宝生流、金春流、金剛流、喜多流の流派があります。
今年能楽師になって40年になります。
大藏基誠:実は私も今年芸歴35年になります。
能楽協会の理事になるなど責任のある立場になりました。
祖父が能楽師で、父は大学時代趣味として宝生流をやっていましたが、サラリーマンとなり辞めててしまいました。
父が30位の時に金春流の娘とお見合いの機会があり結婚をして、私自身能に触れる機会が多くありました。
12歳で能楽師になる決意をしました。
祖父の追善公演を国立能楽堂で12歳の時に初シテ、「経政」を務め能楽師の道を始めます。

大藏基誠:祖父は稽古は厳しく本番は優しく褒めてくれました。
能楽は能面を付けて、非人間であるということで、神になる為の仮面を付けて、主人公はあの世の世界からやってきた神様、仏様、魑魅魍魎、鬼、幽霊であったりして、人間の完全なる非日常の普段会うことのない異次元空間の世界を見せる、如何に非日常を見せるか、これが能です。
狂言は現実の世界を見せる。
キャラクターについては例えば、「初雪」というと雪の精霊かと思われるが鶏の名前です。
或る日姫様が飼っていた鶏が死んでしまって、弔っていたら初雪の幽霊が飛んできて、極楽世界に行きますと言って極楽に飛んでゆく、姫様は号泣する。
お能は凄くそがれた芸で、最小限に動きも作られていて、見る側の想像力が要請される。
鶏は白装束で頭に冠の上に鶏のオブジェを付けて演じます。
「たこ」という狂言があるが、そのままたこの頭巾をかぶって足が頭から八本垂れています。
良く考えたなと思います。

初心者は判り易いものがいいと思います、「羽衣」「船弁慶」「黒塚」「土蜘蛛」などが良いと思います。
能は、空を飛ぶ時に助走が必要なように、我慢というか、じっと動かないで謡ってっているだけとか、一見するとつまらない事があって、最期にぼんと盛り上がるからこそ、その落差で見せるので、いいところだけをかいつまんでみせるということは、能の見せ方ではない、しかし現代の世界ではなかなかそれが難しい。
座禅を組んだり、最近はマインドフルネスとも言われるが、能楽もマインドフルネスと言われていて、眠くなるが鼾さえかかなければ、僕は寝てもいいのではないかと思っています。
すべてを血眼になって理解しようとするが、ぼんやりと2割程度でもいいのではないかと思います。
心がいやされる作用があるので、それを感じてもらえればいいのではないかと思います。
「道成寺」で鐘の中に入って行こうと階段を昇っていこうとする所、乱拍子、極限の世界だと思います。
これはぜひ見てもらいたいと思います。
「道成寺」をNHKラジオで放送した時に、放送事故かと思われたとか、無言が続き過ぎて、音が出てこない。

*「高砂」(能楽師の結婚式で謡う。)

能の世界では時間が正確で、せっかちな人がいたりしてたまに時間より早く始めてしまう時などもあります。
23分なら23分で終わるという様に分単位が多い。
若いと心拍数も早いので、音楽などでも早いものを好み、歳を取って心拍数が遅くなってくると、それに合った曲を聞き出すとも言われている。
日本の音、能楽の鼓の音、謡などを聞くと日本を強く感じます。
舞台の上での能を極めて行きたいし、歳をとった時に名人と言われる人達に少しでも近づきたいと思っています。
東京オリンピックを機に日本に、世界に、もっと能の素晴らしさを知ってもらいたいと思います。