2018年11月13日火曜日

岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授 ) ・だからテレビドラマはおもしろい

岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授 ) ・だからテレビドラマはおもしろい
1958年生まれ、「ゴドーを待ちながら」で有名なノーベル文学賞を受賞の劇作家サミュエル・ベケットの日本での代表的な研究者の一人です。
岡村さんがいま力を入れているのが、TVドラマの作品研究でTVドラマ分析の授業も行っています。
岡室さんにTVドラマ研究を始めた理由、その意義、面白さ、最近の視聴傾向などについて伺います。

TVドラマの歴史は1953年からです。
映画などに比べると、消耗品といったイメージで捉えられていた様な気がします。
初期は生放送で映像が残っていなかったことも大きいです。
学術的な対象にはならないと思われてきました。
影響力の大きさは他のメディアに類を見ない様な気がします。
人の心を動かすようなものもあるので、ドラマの良さをどうやって人に伝えて行くか、作り手に私達の思いを届けられるかなど考えて、ドラマの研究を始めました。
ゼミでもTVドラマを取り上げます。
学生は40人ぐらいいて、4チームに分けて、それぞれのチームが違う1作品を研究して発表し、ディスカッションすると言うようなやり方をしています。
若者のTV離れが言われますが、興味を持っています。
テーマを決めてそれに即した候補を決めて学生に選んで貰います。
朝ドラも「カーネーション」と「あまちゃん」をやりましたが、学生もクオリティーの高さに驚いていました。
内容、演出、演技3拍子揃っていたと思います。

①良い作り手を育てたいと言う思いがあります。
②良い視聴者を育てたい。
普通は一回しか見ないが、授業では何回も同じ作品を観て、取りこぼしのない様にしています。
TVドラマの考え方も変わってきます。
TVドラマは日常生活に密接に繋がっている。
映画と違ってTVは共通体験となって行く。
ドラマは極力見るようにしていますが、時間が足りないです。
録画したものを1.3倍速で見たりもします。
「透明なゆりかご」毎回凄く深い内容で素晴らしかったです。
人の生き死にを真摯にきめ細やかに描いています。
「フェイクニュース」 野木亜紀子さんの作品。
この二本が最近印象に残っています。
心に深く突き刺さるドラマの事を、大事にしていただきたいと思います。

幼稚園に行くのが嫌で、TVドラマなど母と一緒に良く見ていました。
俳優さんの名前も良く覚えていました。
高校時代は演劇部に所属して、演出をやっていました。
数学の先生の家に行った時に、別役実清水邦夫と言う劇作家が面白いと言われて、別役実さんの「赤い鳥の居る風景」文庫を読んで吃驚しました。
別役実さんの本を色々読み始めると、劇作家サミュエル・ベケットから影響を受けたと言う事が書いてあって、ベケットに興味が移って行きました。
「ゴドーを待ちながら」
ベケットは生き生きした言葉を書いている人ですが、不条理、つじつまの合わない世界が難解なものとして受け取られていますが、私としては難しくはないですという訳になっています。
大学院の時にアイルランドに留学しました。
司馬遼太郎さんの通訳とガイドを担当、「街道をゆく」のアイルランド紀行で登場します。
ベケットはTVドラマも作っています。(映画、ラジオドラマも作っていたが)
根底にはTVってなんだろう、という問いは常にあります、ベケットも常にそういう事を考えながら作っていたと思います。
ベケット研究とTVドラマについて批評していることは、密接につながっていると思います。

ブラウン管のTVを70台ぐらい集めて、古いドラマをブラウン管のTVで見せるという事をやりました。
相当な数のドラマを取り上げました。
主観的なドラマ史として展示し、好評でした。
去年TV文化論講義という授業を担当して、私が素晴らしいと思うドラマを見せながら解説するという事をやりました。
学生も古いドラマを凄く面白いという事を知ってくれてやって良かったと思います。
好きな人は沢山いますが、宮藤官九郎さん、坂元 裕二さん、古沢良太さん、野木亜紀子さん、大ベテランでは山田太一さん、向田邦子さん、大石静さん等が好きですね。
宮藤官九郎さんについては論文も書いています。
「いだてん〜東京オリムピック噺〜」は宮藤官九郎さんが新たにチャレンジする大河ドラマで、新しい大河の歴史が作られていくのかなあと楽しみにしています。

2007年に学部編成があり、同僚とTVドラマの事をやろうとして、この授業は10年ちょっとになります。
ツイッターなどで批評あったりして、緩やかな繋がりが出来てきています。
作る側の励ましにもなっていると思います。
視聴率で直ぐ語られるが、それに踊らされないで良いドラマを良いと言える人を育てて行きたいと思っています。