2017年3月18日土曜日

奥田和子(甲南女子大学名誉教授)   ・本当に役に立つ災害食

奥田和子(甲南女子大学名誉教授)   ・本当に役に立つ災害食
日本災害食学会の顧問を務めてます。
元々は食品について別の研究をしていましたが、阪神淡路大震災で被災した事をきっかけに災害の際の食事、災害食をテーマに研究するようになりました。
東日本大震災や熊本地震でも現地で調査を行い、その結果と様々な実証実験に基づいて災害時の食はどうあるべきか、何をどう備えたらいいのか、提言をしています。
本当に役にたつ災害食とは何かうかがいました。


阪神淡路大震災の時、2階の書斎で寝ていて、突然くす玉が頭を直撃してその痛さで目が覚めました。
部屋中が散乱していて足の踏み場もありませんでした。
この町は埋め立て地で液状化現象が起き、家の工事では基礎はしっかり工事したんですが、家は傾いてしまいました。
電気、ガス、水道は直ぐ止まりました。
食パンが一切れ、やかんの水があったのでそれをいただきました。
余震が続いて居たので玄関に蒲団を敷いてボ-っと坐っているのが精一杯でした。
その後、お腹がすく、のどが渇く、トイレに行きたくなる。(しかし水が無い)
中学校のプールに水がある事を知って、自転車の荷台に段ボールの箱を付けて、その中にビニール袋をそわせて、そこに水を入れトイレのためとかの水をなんとか調達しました。
スーパーなどは閉まっていて、電気が来ないので店は全部閉まっていました。
3日間はほとんどなにも食べ物は無い状態でした。
その後、親戚が来て食べ物を持ってきてくれました。

災害時の食はこんなことでいいのかと思って、使命感がわいてきました。
料理をするときに肉をワインに漬けると柔らかくなると云う様な事を研究して居ました。
災害時の食へと方向転換しました。
避難所で聞き取り調査を始めました。
避難所へは周辺からの農家から善意のおにぎりが届き、菓子パンも届き、この二つで命をつないだと云う感じです。
食料が大幅に不足していました。
災害食と云う事は何も無かった。
救援の食料は乾パンが多くて乾パンを水にしめらせて食べて居ました。
行政は地震が来ることを想定していなかったと思います。(備蓄が無かった)
米はたくさん送られてきたが、水も、熱源も道具もなく米は使い物になりませんでしたし、炊く方法も知りませんでした。
おかずも無く、野菜が不足して体調を崩す人がいました。

調査で一番食べたかったのは野菜と云っています。
ライフラインが回復するまで2,3カ月続きました。
1カ月ぐらいしたら店舗が開き始めて、救援物資は不要になり乾パンがたくさん蓄えられていたが焼却場に運ばれ燃やされました。
あるお寺の倉庫には新品の紙おむつが山積みされ、新品のままで災害が終わった。
東日本大震災でも、熊本地震でも調査をしました。
岩手県陸前高田に行き聞き取り調査をして、救援の食料が水がないために役立たないと云う事を言っていました。
アルファ化米、カップメン、クラッカーなどもそうですが、こういう救援物資はどうにかしてくださいと懇願されました。
熊本にも行きましたが、どの家庭も備蓄はほとんどしていませんでした。
行政は米を備蓄していたが、使い物になりませんでしたが、大きな反省点だと思います。
阪神淡路大震災の時と同じようでした。

ほとんど備蓄はしていない、救援物資がすぐに届くと思っている向きがあるが十分に届かない、すぐ食べられるものがない、しばらくすると同じような救援物資が大量に送られてきて不要であると云うような事が出てきていると云う事です。
教訓としては
①各自が備蓄をすべきである、これは非常に大切なことです。
 避難所に入る人は自分の飲み物食べ物を持って行くべきです。
 自宅で過ごす人は救援物資は届きにくいと云う事を知っておいてほしい。
②電気は一週間程度で復旧するが、ガス、水道は2~3カ月かかります。
 相当備蓄の量を多くしないといけない、家庭も行政も調理しないですぐ食べられる  ものを備蓄してもらいたい。(缶詰、レトルト食品など)
③弱者(乳幼児、高齢者、アレルギーのある人、病気の人など)も救援を頼りにしないで自分自身が備蓄をする。

家庭では
①不安やストレスから食欲がなくなるので、自分の好きなものを備蓄する。
②ローリングストック、大目に購入して普段食べをしながら減ってきたら補充する。
③賞味期間 6カ月以上室温で保存できるものにする。
④食べ物より飲み物をしっかり備蓄して欲しい。(3L/人 必要)
⑤使いきりサイズを選ぶ。(残っても冷蔵庫に保管できない)
⑥野菜や果物の加工品を重視して備蓄してもらいたい。(ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足するので)
災害直後、1週間後、店が開く、電気が通じるなど、経時的に変化するので、状況により変わってくる。

ステップ1 災害直後
非常持ち出し袋を持って置く事が大事。
非常持ち出し袋のバックは不燃素材で中身は、
①腹の足しになるもの(水や熱が不要ですぐ食べられるもの、新製品の食べやすいレトルトパン、災害食用レロルトおかゆ、アレルギータイプのクッキー、カロリーが取れる物)②自分の好きなもの、自分を癒すもの(プリン、ミツマメの缶詰、チョコレートなど甘いもの等)
③水系飲み物(水、野菜ジュースなど自分の好きな飲み物、味噌汁など)
避難する時には割り箸ではなくて、マイ箸を入れておいてほしい。(ごみをつくらない)
各自家族が一人一つづつ持ってもらいたい。(同じところに避難するとは限らない)

ステップ2 1週間後程度の対応
段ボール5つに1週間分用意する。
①主食、②魚と肉のおかず、③野菜のおかず、④おやつ、⑤飲み物。
美味しいかどうか、必ず食べてみて好きなものを保存する。
電気の回復時
電気釜の使用が可能になるので、無洗米を買って置いておく。
おかずはレトルトカレーなどを買っておく。
野菜には各種の出汁に使えるもの、炊き込みご飯の元とか、親子丼の元とかを購入しておく。
飲み物はお茶の葉なども役に立つと思います。
ステップ3 1ヶ月後(店が開く)
野菜や新鮮な物を購入して体力の回復をする。
簡易コンロなどを使って鍋でご飯を炊く訓練も普段からやっておくことが大事です。

アルファ化米は水がなかったら何の役にもたたない。
野菜ジュース、ウーロン茶、麦茶等を中に混ぜて入れる。
野菜ジュースは栄養価が高い。
お茶を入れて炊くご飯(水がない時の対処法の一つ)、コーヒーを入れたご飯等美味しいです。
トマトジュース+アルファ化米(1時間経過後の物) オムライスみたいでおいしい。 
アルファ化米は一旦煮えて居るので、非常時には常温の水、ジュースなどを加える事で戻して食べられる。
過去に経験した事を謙虚に学んで受け止めて行く姿勢がなくてはいけない。
行政任せは通用しないと云う事も学んでいるはず、行政の人たちも被災者なので、人手不足に陥ってしまう。
自分のことは自分ですると言う事が責務です。
避難訓練は見物客に過ぎないような気がする。
現実問題からかけ離れている、本気でやってほしい、それをやらないと何べんやっても難しいと思います。