2022年10月20日木曜日

大庭照子(歌手・日本国際童謡館館長)   ・【わたし終いの極意】 年齢は宝もの

大庭照子(歌手・日本国際童謡館館長)   ・【わたし終いの極意】  年齢は宝もの 

今年84歳、およそ50年前NHKの「みんなのうた」で歌った「小さな木の実」が大ヒットして、これを機に日本の童謡のすばらしさを全国に届けたいとスクールコンサートを開催、これまで訪ねた学校は延べ3000校にのぼります。   また日本国際童謡館館長として童謡の継承、普及活動に取り組む一方、「年齢は宝もの」コンサートを各地で開き、齢を重ねる事のすばらしさを伝えています。  

* 「小さな木の実」  歌:大庭照子  作詞:海野洋司 原曲の作曲者:ジョルジュ・ビゼー 編曲:石川皓也

この歌に出会って私の宝物になっているという事はNHK様様です。  年齢は宝もの」コンサートを各地で開いています。   生きていてこそこの人生花ざかりがありますよ、面白いことがいっぱいある、厭なことがあっても自ら命を落とすという事は絶対思わないで欲しいというのは最初からありました。  年齢は宝物と思うようになりました。 37歳の時です。 年齢は宝もの」コンサートが終わった後、小学校5,6年の女の子が「大場さんはいくつですか。」と尋ねてきました。  一番聞いて欲しくない年齢だったので誤魔化して「じゅうさん ななつ」といったら、ポカンとした顔で帰って行きました。 帰る時に子供たちが全員で手を振ってくれましたが、子供たちの前で年齢を誤魔化したのは、自分の人生を否定していたんじゃないかと思いました。  これからは年齢を正直に言って行こうというのがきっかけでした。   

宗教家の手島郁郎先生がロバート・ブラウニングの詩を訳したものに出会っていることも凄い力になりました。  「老い行けよ,我と共に  最善はこれからだ   人生の最後、そのために最初は作られた ・・・  すべてを神にゆだねよ」 この詩に出会った時に本当に宝物と思いました。  老いてゆくことに覚悟が出来ました。  歳を重ねるにつれ浄化されてきて、心がワクワクするこんな人生が来るとは思わなかった。  

熊本県出身、高校時代まで過ごしました。  健康で小、中、高と無欠席でした。  昭和24年のNHKの熊本の児童合唱団の一期生です。   幼稚園の学芸会でマリア様役は誰にしますかと言われた時に、まっさきに手を上げましたが、先生が困った顔をしてあなたにはもっと良い役が来るからと言われました。  選ばれたのマリア様にぴったりの綺麗な女の子でした。  幼稚園が孤児院と一緒で、孤児院の子を私が意地悪して、先生が物置に連れて行って、弱いものをいじめることはどんなに間違っているか、弱い人を助けることは当たり前のこと、素晴らしい事であることを先生が教えてくれました。   小、中、高のいろいろな先生からいろいろなことを教えていただきました。   

強い母とおとなしい仏様の様だと言われた父の両方を客観的に見ながら人生を重ねました。 母の影響は大きかったです。   毅然としてお腹の中に収めておかなくてはいけないという事を言われました。   独りで生きてゆく力を身に付けなさいとよく言われました。 声は良かったので歌で勝負と言いう事で音楽の道への後押しをしてくれました。   昭和32年フェリス女学院短期大学音楽科に進みました。  卒業後書生として銀行の頭取の家に5年間過ごしながら歌の勉強の仕事をしました。   部屋代食べるものは無料でした。

乳がんをしたり、童謡の歌から信じられないような展開に成ったりいろいろありましたが、50、60、70代の時に物凄く苦労をしましたが、孤独と孤立は違うという、私は孤立はしていないという自信はあります。  孤独は自分自身の思いのなかで孤独を楽しむこともできますし、つながりを持てる時間もあるが、孤立はたった一人で自分は誰にも世話にはならない自分で生きて行くんだということで良くないと思います。   振り返って自分の人生これでよかったと思わないといけないと思います。   神様から頂いた人生であって、ああすればよかったこうすればよかったと思う事はありますが、そっちのスイッチを押したら自分の人生を否定することになると思います。

日本童謡学会が設立されて、今までわからなかったこと間違っていたことの童謡の歴史に関することが判ってスッキリしました。  夢を実現するためにはいかにいろんな人と手を組むか、という事だと思います。  「年齢は宝もの」に新しくボニージャックスのメンバーが加わりました。   去年西脇久夫さんが亡くなられて、3人での出発になっています。テナーが吉田秀行さん(57歳)、バリトンの鹿島武臣さん(88歳)、バスの玉田元康さん(88歳)です。  志が同じ人と出会えたことは嬉しいし、良かったです。 

わたし終いの極意としては、諦めないという事です。  最後の最後まで与えられたチャンスをつかんでいきたいと思います。