2022年5月7日土曜日

谷岡哲次(レット症候群支援機構代表理事)・科学の力を、社会の力を、この難病に

 谷岡哲次(認定NPO法人レット症候群支援機構代表理事)・科学の力を、社会の力を、この難病に

1966年にオーストリアの小児神経科医アンドレアス・レットによって初めて報告された難病レット症候群、主に女の子に現れ1歳半から3歳ぐらいになって、それまでできていた手の運動が上手くできなくなり、揉み手や一方の手で胸を叩くなどの行動が繰り返されたり、歩行などの運動機能もできにくくなったりするとされています。  まだ根本的な治療は開発されていないという事です。   自分の娘にレット症候群があることを知り、2011年に認定NPO法人レット症候群支援機構を立ち上げた谷岡哲次さんにその活動内容や娘紗帆(さほ)さんへの思いを伺いました。

上が男の子で娘が生まれて嬉しかったです。  3,4か月ぐらいから首のすわりが遅いなあと感じました。  はいはいも、寝返りもしないので半年ぐらいからちょっとおかしいなあと思いました。   手で何か遊ぶという事が徐々にしなくなりました。   歯ぎしりの症状も出始めました。  10か月ぐらいにお座りが出来ていたのにこけるようになりました。  お菓子を食べるのにもうまく手が使えないようになってきて、異常があるのではないかと思いました。   症状を書いてネットで調べたらレット症候群を書いたお母さんのブログにヒットして、レット症候群を疑い始めました。  進行性の難病、不治の難病という事が出てきていました。   どう妻に伝えたらいいか悩みました。    出来ることは藁をもすがる思いで、西洋医学で駄目なら、鍼、漢方とか治療を続けていました。    九州にレット症候群の研究をされている先生がおられるという事で九州に行ってきました。 

1966年にオーストリアの小児神経科医アンドレアス・レットによって初めて報告された難病レット症候群でした。  1万から1万5000人に1一人(女児)の確率で起こると言われています。  症状は両手を擦り合わせたり、手を口の持って行ったり、指を擦り合わせるとか手の異常な情動行動が見られます。  歩けない子もいます。  言葉を発する子はほとんどいないです。  統計的には日本には5000人ぐらいいると言われていますが、10年前のデータでは20歳以下で1000人ぐらいと言われています。  1999年にレット症候群が発生する原因となる遺伝子が特定された。  MECT2と言う遺伝子でここに異常があるということが発表されました。   九州の先生にお会いした帰りに、自分に何ができるかと考えた時に、研究を支援することはできるのではないかと思ってNPOの立ち上げを考えました。  

レット症候群の研究班が厚生労働省に立ち上げっている時で、代表の方が国立精神神経センターにいましたので、その先生に電話で趣旨を説明したら、会議があるので来れるのであれば来てほしいという事で、会議に参加させて貰いました。    遺伝子治療がここ10年ぐらいピックアップされてきて、注目はされています。  女の子の場合はx染色体が2つあるので異常なほうを眠らせて、正常なほうを活性化させてあげるとレット症候群は治るのではないかと言う、そういう理屈ではあります。   簡単な話ではありませんが。    昨日カナダの方で、遺伝子治療のトライアルがスタートするというニュースが飛び込んできましたので、注目していきたいと思います。   

研究者、患者、家族がともに学ぶような場作り、シンポジウムをやったり、患者も医学の基礎を学ぶというようなことも年一回やっていて、研究者の人に来ていただいて講演していただきます。  多くの人に知っていただき寄付を集める事が大きな柱になります。  設立3年目以降は寄付も集まってきて、研究者さんに年約100万円、累計で1400万円の研究支援をさせていただいています。  80名の会員がいて活動を支えています。  患者同士のつながりも必要だと思うので、無料で繋がれる患者同士の交流という事でアプリを立ち上げました。  アプリには230家族ぐらいが登録しています。  患者会の数を上回っています。  オンラインコミュニケーションをやったり、アプリに登録すると全国のマップにどんな症状の家族が何人いるかと言う事が判るようなシステムになっていて、簡単に繋がるようなシステムを作りました。    研究者が治験しようとするときにも役に立つと思います。   このアプリは2021年10月にスタートしました。  パソコン関係は詳しくないですが、何とかしたいという思いでやっています。 

娘の声を聴いたことがないので「パパ」と呼んでもらえたら本当にうれしいですね。   娘は支援学校の中学部の3年生になります。  ニコニコしているのとは裏腹に進行していて、背骨が湾曲してしまうのが発症していて、内臓に影響が出るぐらいのところまできています。 手術を予定しています。  親は今の紗帆で十分幸せ頂いて満足ですが、逆を考えたらそうではないんじゃないかなあと思って、山頂目指して頑張りたいと思います。   もし紗帆に間に合わなかったとしても、紗帆の次の世代に繋がるのであれば、紗帆がこの世に生まれてきた意味もあるのではないかと思いで活動を続けています。