斎藤まゆ(ワイン醸造家) ・ブドウ畑の空に乾杯
斎藤まゆさんは1980年生まれ。 早稲田大学2年生の夏休みにブドウの収穫の研修旅行で訪れたフランスボルドーやコルシカ島のワインに感動し、日本から世界に通用するワインを作りたいという思いを抱き、大学を中退します。 ワイン作りを学ぶため単身アメリカカルフォルニア州の大学に渡り、その後もフランス、ブルゴーニュ地方の名門ワイナリーで修業します。 帰国後10年余り前に山梨県甲州市塩山に設立されたワイン工房で、醸造責任者としてワイン作りの中核を担っています。 また最近では耕作放棄地をワイン用ブドウ畑へと変えて行こうと、地元農業の活性化にも情熱を注いでいます。
2025年のワインの出来は素晴らしい年でした。 今年は空梅雨と言われていて、雨の少ない年で病気にならずに健全なまま素晴らしいクオリティーのものが出来ました。 私たちが作ったワインが出て行くのは来年の春ぐらいです。 ブドウの種類は40種類ぐらい作っています。 社長はブドウ農家の3代目で、以前は60種類ぐらいのブドウを育てていたそうです。 ワイン用には5種類育てています。 ピノ・ノワールは愛好家の大好きな品種です。 ピノ・ノワールは育て方の難しい品種ではあります。 最初は緑色をした硬いブドウが段々と赤、黄色、ピンク、黒っぽい、とび玉(一房の中に飛ぶように色が付く)と言って黒く色付いてくる時は独特の美しさがあります。
ピノ・ノワールの収穫は8月中旬ぐらいから始まります。 10月半ばから終わりぐらいで私たちのワイナリーは終わります。 ワイン用のブドウは甘さと酸っぱさがないといけない。 糖度が23度ぐらいあると12,5%ぐらいのアルコールが出来ます。 発酵中のワインはぷくぷくしゅわしゅわしています。 熱も出るので温度管理をしないといけない。 ワインの鑑定によって価格が付いてくるものもありますが、自分たちの作ってきた農産物の価値を上手に国を挙げて、上げて行ったと言いうその結果だと思っています。 そこにマーケットが反応してそれが売れるか売れないという世界になって来ると思います。
私たちは国際線のファーストクラスに乗せることが夢でした。 選考に何回も挑戦して落とされてきました。 2017年にイギリスの世界一ソムリエ、ワインの神様のジェラール・バッセが来日して、社長と共に私も食事の席に同席して、私たちのワインを飲んでいただいて気に入ってもらえました。 ツイッターに紹介してくれました。 スタッフ11名で5ヘクタールの畑で栽培しています。 2013年にワイナリーを立ち上げた時には子供を身ごもってて、ワインを飲むことが出来ないので、味の部分はブレインに頼んで意見を聞きました。 かおり、色あい、輝きその他数値で現れる品質などから判断していきました。 子供が出来たことで自分の持っているものをどんどん人に伝えて行こうと思いました。
山間地の斜面なので毎日登ったり降りたり、そしてそこでの作業なので強靭な体力が必要です。 (ストレッチ、しこを踏んだりして鍛えています。) 専門的な知識はもちろん必要ですが、感性も大事です。 子供のころには母親から味噌汁の味について味見役的なことをしていて、意見を言っていました。 習い事もいろいろやらせてもらって好きなことを自身で探していきました。 そういったことで感性が磨かれたのかもしれません。
ブルゴーニュ地方には「ワインの歌」と言うのがあるんです。 「ラララ」しか言わないが小さい子から老人まで一緒になって歌います。 生きている歓び、健康で美味しくワインが飲めるんだと、子供たちを豊かに生活をさせることができるんだと、そういう喜びをたたえるような歌だと感じました。 日本にはワインをたたえる歌が無いとずっと思っていました。 私が歌詞を作ってしまって、作曲は戸倉俊一さんに書いていただきました。
斎藤まゆさんが歌を披露する。