岡本美津子(映像プロデューサー) ・〔私のアート交遊録〕 映像づくりは人づくり
岡本さんは京都大学卒業後NHKに入り、番組開発やBSでデジタル放送の立ち上げなどに携わります。 特に若いクリエーターを発掘する「デジタルスタジアム」を立ち上げ、さらにその番組の入選者の作品を紹介するデジタルアートフェスティバル東京では総合プロデューサ―を務めました。 NHK退職後は東京芸術大学大学院映像研究科教授へ転身、2017年からは副学長も務めました。 芸大教員となってからも『Eテレ0655&2355』のプロデューサーを初めとして、番組の開発と後進の育成に努めています。 小学校時代の放送部の活動でメディアの世界に興味を持ち、映像による物作りへの魅力を感じてテレビの世界に入ったという岡本さんに、映像による物作り、人作りへの思いを伺いました。
6年生の時に転校して、人がいないので放送部をやれと言われて、指導者がいない中で試行錯誤の毎日でした。 アナウンサー、ディレクターをやり段々慣れてくるとしゃべるのに歓びに目覚めていきました。 NHKに入りたいと思っていました。 シルクロード、漫画アニメなどを毎日見るのが日課でした。 中学の時にスターウォーズを見て、自分は作りたいんだと初めて思いました。 NHKに入ってディレクターとしても いろいろ勉強させていただきました。 NHKではプロデューサーとしての作品の方が多いです。 私が作った番組で『デジタル・スタジアム』と言う番組が、私の人生を大きく変えた番組です。 2000年ごろでパソコンが普及し始めた頃でした。 若い人たちがそれを使って、自分の作品を作るようになりました。 その作品が面白くて、若いクリエーターたちの作品を如何に世の中に紹介できるか、という事が私の目標になりました。 テレビが一番紹介する場所ではないかと思いました。 そこから若いクリエーターたちが育っていきました。 番組は10年近く続きました。
2008年にNHKを退職して東京藝術大学大学院映像研究科教授へ転身することになりました。 私はアニメーション専攻と言うところにいますが、最近は半分ぐらいが留学生です。 韓国、中国、アジア圏が多いです。 2012年から放送されている『テクネ 映像の教室』のプロデューサーを務めてます。 独学で勉強する人が多いので、テキスト替わりになるような番組が出来ないかなと思いました。 発注型の映画製作も番組のなかでやって見ました。 2020年からは「日本アニメーション教育ネットワーク」の代表理事もやっています。 アニメーション関係の教育機関、教育者もまだまだ少ないです。 日本映画産業全体から言うとこれまではトップ100に入るのが稀でした。 今後ビジネスとしても産業としても成り立つような形にしていかなければいけないと思っていて、今年はその元年だと私は捉えています。
「鬼滅の刃」の劇場編が、全世界の収入が1000億円と言われています。(日本では初めて1000億円稼ぐ作品。) この作品は世界のトップ5に入っています。 世界を対象にしたビジネスが成り立つんだという事が改めて知ることができた作品です。 コロナを機に世界的にリビングルームで観られるようになり、爆発的にアニメファンが増えます。 日本のアニメ産業を活性化して海外に売ればいいじゃないかと考えますが、本数を増やしてもどうしても頭打ちになってしまう。 一番大きいのはアニメのスタジオの人員不足です。 少人数でやってるスタジオが多い。(少数精鋭) 増やしたくても増やせない。 日本のアニメ産業に必要なのは人材です。
国の援助が望まれますが、海外と比べると少ない状況です。 アニメーターの見習い期間の給料だけでも補助してあげれば、日本のアニメーションスタジオはどんなに助かるかしれません。 基礎研修を公けの機関がやってあげるという事も大事です。 人材育成の補助は公共機関の役割かなと思います。 海外から学びに来る学生は凄く優秀です。 そういった人たちが日本で仕事ができるようになるのは負担も大きので、そういったところにも補助があると、人材確保になると思います。
私は人材育成の方で貢献をしようと考えています。 卒業生が活躍して評価されるのは10年ぐらいは掛かりますので、せめて10年、20年の単位で人材育成を考えて行ったらいいのではないかと考えています。 日本の基幹産業の一つとして行くためには母数を増やしていかないといけないと思います。 プロデューサーの人材も枯渇しているので、これが最大の課題で、研究中です。 お薦めの一点は片渕 須直監督のアニメーション「マイマイ新子と千年の魔法」です。