2020年9月16日水曜日

三田村昌鳳(ゴルフジャーナリスト)   ・【スポーツ明日への伝言】達人に学ぶゴルフの道

三田村昌鳳(ゴルフジャーナリスト)  ・【スポーツ明日への伝言】達人に学ぶゴルフの道 

様々なスポーツの中でもゴルフはプレーヤーの心の動きがそのままプレーに反映されるスポーツだといわれ、18ホールを回る一つのラウンドがしばしば人生に例えられたりします。   ゴルフの達人といわれるような人たちはゴルフにどう向き合っていったのか、長年にわたって達人たちの姿を追ってきたゴルフジャーナリストの三田村さんに伺います。

最新クラブを使うと飛ばしたいとか寄せたいというような欲望が強くなりす。      ヒッコリー(クルミの木の材質)を使うと飛びませんが、ゲームを楽しむという事に集中出来たのかも知れません。  100年以上昔のゴルファーはある種精神的な楽しみ方をしていたのかなと思います。    一番典型的な格言としては「ゴルフは18ホール回るのは航海と一緒だ」と、船旅で荒波に揺られて、出発してどうやって戻ってこれるかという事と18ホールを回る事は同じであると。

ゴルフは自然と人間がぶつかり合うわけです。   海沿いのコースでプレーするとさっき晴れていたのに雨だとか、風だとか自然に対して小さなボールを打って格闘しあって戻ってくるのがゴルフの基本なので、そういう言葉がけっこうあります。   運動しているのは打つのはせいぜい2秒で、100叩いても200秒、それを4時間でゲームするわけです。  運動以外は3時間57分が結局心と頭の気持ちの格闘が多いんす。            総合して考えるとメンタルみたいなものが物凄く作用するわけです。

「調身、調心、調息」 調べるという言葉が身を整えるという意味があります。     ボギーをたたいてしまい、その気持ちを引きずったままその後池に2回入れてしまい勝てなかった、「ティーショットの前に深呼吸すべきだった」といったプレーヤーがいました。  まさに「調身、調心、調息」すべきだと思います。

アマチュアの最強プレーヤーと言われた中部銀次郎さん、とプロのジャンボ尾崎さん。  ジャンボ尾崎さんは典型的なプロゴルファー、派手さがあり、飛ばす、パフォーマンスもいい、人気も物凄くある。                              中部銀次郎さんはこれ以上の真のアマチュアゴルファーはいないというぐらいなピュアーなアマチュアゴルファーで、ジャンボ尾崎さんが北極ならば、中部銀次郎さんは南極、取材すると選手たちはその内側にいます。

中部銀次郎さんは山口県下の関出身で2001年に食道がんのために59歳で亡くなる。   生涯アマチュアゴルファーとして日本アマチュア6回優勝。               ジャンボ尾崎さんは73歳、今なお現役で日本ツアーだけで94勝、世界ゴルフ殿堂入りを果たしている名プレーヤーです。

中部さんは小さいころから身体が弱くて医師が匙を投げるぐらい弱くて、父親に連れて行ってもらって散歩したらどうかと言われてゴルフと出会った方で、天才といわれるが、努力家だったと私は思います。   対人恐怖症的なところがあり、ゴルフのためにそれを克服するために先ずできないデパートの店員に話しかけることをしたり色々努力をした人でした。平均の法則という事がありますが、いいことも悪いことも足して2で割ったらそれが自分なんだと、平均値ならいいんではないかというような考え方です。             

中部さんはピュアーなアマチュアゴルファーでして、ボビー・ジョーンズというアメリカのアマチュアゴルファーがいまして、マスターズを作った人で、1930年には年間グランドスラム(全英オープン、全英アマ、全米オープン、全米アマ)のタイトルを取って引退した人ですが、アマチュアリズムを最後まで追求した人で、中部さんについてもそう思います。   ゴルフをするというのは自分自身の本質に出会うという、そういうところが多いのでアマチュアは昔は出てきたのかなあと思います。

ジャンボ尾崎さんはとんでもない我儘な人なんですが、本音は実はそうではない。    私が取材をしていた時は一番スランプの時で、本を見てみると赤線が引いてあったり、ノートを開いてみるときれいな字で、忍耐とは・・・、とか自分で気が付いたことが書いてあり、それを見たときに根は凄くまじめで、うまくなってもう一回返り咲くために苦労は惜しくないという事でした。   スランプで克服するために3年かかろうが、そのあとの10年王座を手中に収めたら、そんなに3年を捨てることは惜しくないだろうという表現をしました。  選手の方はみんな今をみているが、その先、もっと先というような、設計が立体的にできていることが達人なんだと思いました。

ジャンボ尾崎さんがある時ふっと「ゴルフクラブを抱えていないと眠れないんだ」といったことがありましたが、長嶋さんとの対談でそのことを言ったら、「それの気持ちよーくわかる、我々もバットを抱えていないと眠れない」と聞いた時に、お二人ともそんな風には見えないが、内側ではそういうことをしているんだなあと驚きました。           いいところを見て興奮して感動してもらうのがプロゴルファーなんではないかと思います。

ジャック・ニクラウス、2000年の全米オープンを最後に出ませんという記者会見がありました。    インタビューの最後に「・・・来年全米オープンは出ない、引退するといっても、・・なんだ今日のゴルフは、さあ練習にでも行こうか、と思っちゃうんだよね。」という言葉を聞いた時に、強い選手は自分に許せない、ちょっとでもうまくいかないことがあると練習するとう貪欲さというものを持っているんだろうと思います。

タイガー・ウッズも円熟になってきている。  2秒で切り替えられるか、心の動揺が大きく作用する、タイガー・ウッズもコントロールできると、ジャック・ニクラウスは言っていました。

マスターズは綺麗なゴルフ場で、戦うというとかではなくていいパフォーマンスしたいというコメントが多いが、全米オープンだと競争してというようなコメントが多い。     舞台によっていろいろと違う。  自然に対しては自分は脆い、大自然とどう調和がとれて手を出して握手できるか、戦うとか歯向かってゆくだけでは駄目なんじゃないか。

ゴルフを取材してきて魅力のある人間が見れる、ゴルフは人間性を教えてくれたりするという事が取材する側としての魅力があります。

シニアーオープンは今年100年目の鳴尾ゴルフクラブで行われますが、注目しているのが藤田寛之選手です。                                 鳴尾はバンカーが全体で81ありグリーン周りがほとんどバンカーでグリーンも難しい、コースマネージメントが問われる。 藤田寛之選手は優勝争いをするのではないかと思います。

赤星六郎さんは100年以上まえのアマチュアゴルファーで、「ゴルフ場に行ってスコアーだけを持って帰ってきては駄目だよ」という表現がありますが、点数が良ければいいというだけではなくて、メンタルな面が要求されるという事で、ボールの打ち方はうまいがゲームが下手という若い選手がいっぱいいて、スイングの山とゲームの山を二つ登っていけるような考え方をしてゆくとかなりチャンスがあると思います。