濱崎加奈子(有斐斎弘道館館長) ・私のアート交遊録「伝統に学ぶことは未来を創ること」
濱崎さんは京都大学文学部、さらに東京大学大学院で美術を専攻、その後京都の町の古民家の保存活動や平安時代の宴や行事の再興など、幅広く京都の歴史文化に関わる活動をしています。 中でも今1番力を入れているのが、今年12月6日に予定されている「寛永行幸400年祭行列」の再現イベントです。 今年2026年は寛永3年に行われた「寛永行幸」から400年。 この時代は、戦国の世を乗り越え、後の日本文化に大きな影響を与えた芸術文化が花開き、日本の文化の故郷と呼ばれる時代です。 歴史を知る事は未来を生きること、先人が残してきた有形無形の資産を、私たちは未来へとつないでゆく責務があると言う濱崎加奈子さんに、伝統文化の現状と未来への展望を聞きました。
高校生の時に京都に憧れを抱きました。 京都にいってなるほどなと思う事はたくさんあって、神戸にいたときの身の回りにはなかったような、美しい街並みだったりとか、人々の言葉遣い、着物などいろんなものに心をときめく瞬間が何度もありました。 京都大学で美術を学びました。 東京大学大学院でも美術を専攻しました。 歌舞伎にも惹かれました。 歌舞伎の演目の中の神輿にも興味を持ちました。実際に神輿も担ぎをした。
京都にいる時は、日本舞踊、三味線、常磐津節などを習う。 東京にしばらく住んだのち、また京都に移り住みました。 かつらを作る制作技術ですとか、京町屋が一日に2軒から3軒の割合でなくなっている現状を知りました。 何か自分でできる事はないかと思い至りました。 有斐斎弘道館は全国から3000人門弟が集まってると言う学問所です。 この建物が2009年に取り壊されると言うことを知って保存活動を進めました。 皆川淇園(みながわきえん)は詩文や書画にも優れた風流人で私塾として運営してました。 江戸時代の勉強は机の上で学ぶだけではなくて、歌ったり絵を描いたりそういう中から学んでたんじゃないかと思います。
そういった学び舎として復興、復活させると言うコンセプトでいます。 北野天満宮さんで、1000年以上前に行われていた曲水の宴を再興したり、猿楽を再興したり、過去にあったことを蘇らせてみると言うことをいろいろやっております。 伝統文化をプロデュースすると言う事は、自身で作った言葉ですけれども、消えていく物に対して何とか伝えていければいいと思ってます。
つないでいくために実は会社を作りました。 「伝統文化プロデュース連」と言う名前ですが、収益を得る難しさを知りました。 国として文化財を活用しましょうと言うのは、当時の方針転換だったと思います。 文化財を生かすための政策がいろいろ湧き起こっていますが、国の方針転換は悪いことではないと思いますが、次のステップに入らないといけないんじゃないかと思っています。
現在力を入れてるのは寛永行幸行列再現プロジェクトです。 後水尾天皇が二条城に行幸されて、ちょうど今年400年の節目を迎えます。 戦乱の時代がようやく終わって11年です。 家康が作った二条城を大幅に増改築します。 その1部が残されているのが国宝の二条城です。 寛永時代に様々な文化人がスターのように誕生しました。 全国から大名たちが9000人募って99000人の行列ができました。 30万人位の大名の家来たちが半年位滞在しました。 当時の京都の人口は20万人位と言われています。 地域に戻った大名たちが、京都の文化をまた伝えていたということになります。 俵屋宗達、本阿弥光悦、狩野 探幽、落語の祖と言われる安楽庵策伝、小堀遠州などが活躍。
この「寛永行幸」の行列を再現したいなぁと思いました。 300人の規模で考えました。行列に歩きたい人を募集中です。 できれば全国から募って行事をしたいなと思っています。 現時点で1300人です。 装束などの問題、協力していただける業者さんとかをあたっている最中です。 12月が予定になってます。 文化が社会の根底にある、今は経済の尺度で測りがちだと思うんですけれども、文化の面で言うと、それがお金になるんだろうとか、そうではないんじゃないかと思います。
社会全体に浸透していた各階層を超えて、見事に結実した日本のような時代が、寛永時代だと思います。 政治、経済、商売人、技術者、アーティスト、宗教とかもみんなが一緒になって、この時代を作っていこうと言うことが本当に見て取れるようにわかります。今の時代に置き換えることによって、これからの時代をどういう風に私たちは歩んでいいのかと言う知恵を得られるんじゃないかなと思います。 文化がみんなのものになった時代ですから、とても参考にできるものがたくさんあると思います。 なので「寛永行幸」をもう一度再現しようと思ってます。 お勧めの1点は「二条城行幸図屏風」です。 この時代の中に没入していけるような、そういった時代の空気を読み取ることができるので、本当に素晴らしいと思います。