2024年2月29日木曜日

南 伸坊(イラストレーター)       ・〔私のアート交遊録〕 笑いが一番!

 南 伸坊(イラストレーター)       ・〔私のアート交遊録〕 笑いが一番!

月間漫画「ガロ」の編集長を経て、フリーのイラストレーター、エッセイストとして活躍しています。 前衛芸術家の赤瀬川原平さんや建築史家の藤森照信さんたちと設立した路上観察学会などで培った洞察力、情報収集力を元に旺盛な好奇心で活動を続けています。 おかしみのある文章でも多くのファンのいる伸防さん、絵でも文章でもわらいがないものは書きたくない、読んでいる間だけでも楽しい気分になって貰えれば、世の中に訴えたくと言うのは無いですねと話す伸坊さんです。 美術から笑いや、老いについてまで幅広く発信し、人を楽しませたいという伸坊さんにお話を伺います。 

出来るだけ笑いのあるものを書きたいと思っています。  子供のころからみんなが笑ってくれるのが嬉しかったです。 ラジオからテレビに替わってゆく時代でした。 相撲は物凄く好きになって行きました。  ものをしっかり見るという事は今の私を形作っていると思います。  細かいものが見えてくると楽しいです。 看板とか絵を描いてるというのもずっと見ていました。  人がやっていることを再現したりするのが面白かったです。 

路上観察学会は路上にあるくだらないものに目を付ける。 それを独自の解釈をすると面白いんです。  旅館についている階段を上ってゆくがどこにも行けない。 変なものであるという事は判って、無用になっているものなんだけど、きちんと残っているというものがまだいろいろあるという事に気が付きました。  その階段は四谷に有ったので四谷階段と名付けました。 病院の通用門にアーチ型のひっこんだものがあり、そこが全部コンクリートで覆われていたんです。 後にトマソンというタイトルがついた。

赤瀬川原平さんは美学校時代の先生でもあります。 千円札事件と言うのがあって、本物の束の様に描いて、その事件の裁判でお世話になりました。  講義が凄く面白かった。 宮武 外骨という編集者の人の講義をしてくれました。  路上観察学会の人はみんな似ています。 みんな子供ですね。 発表するのにも如何に面白くやるかという事に気を使います。面白ければいいというのが基本です。 何が面白いんだろうという事を考えるようになりました。 わかっていることを判りなおす時に、笑いと言うものが起こるんじゃないかと思います。  似顔絵をみて笑うんです。 その人なりの或る理解をしているわけです。 自分の持っている情報よりも、出力できる情報が物凄く少ない。 見て判っていることが自分で判って、それが嬉しんじゃないかと思います。  その時に笑いが出てくる。 つまらないという事は、全くわからないか、判り切っていることは面白くない。 

顔で似せると似顔絵よりももっと喜ぶという事を知りました。(小林旭、松田聖子、アラーキー、スティーブ・ジョブズ、由紀さおりなど) 再現するためにその人の顔を良く観ます。 輪郭は物凄く大事ですが。 最近はおじいさんになってきたので段々パーツが減ってきました。  一般の人は必要なものを見ていますが、絵描きさんは不必要なものを物凄く良く観る。  ピカソの絵の模写をすると、今まで気が付かなかったようなことに気が付いてくるんです。   子供は人相書きをすると、凄く似ているものを描くそうです。 モンタージュが以前はありましたが、何故辞めたかと言うと似顔絵の方が似てるからだそうです。 大人は特徴を頭で考えるんです。 子供にいきなり描かせると、その時の印象が絵に出るんでしょうね。  

文章も笑ってもらえると思って書きます。 老後に必要なものは、笑顔と笑顔を共有できる人達です。 口が「へ」の字になって来るのは重力の影響もあると思います。 高校受験、大学受験でも失敗して、段々頑張らないでいい方向に流れて行きました。 お薦めの一点はアルベール・マルケ(日本人が好きな絵だとは思います。)の絵です。  マルケの絵は水のある景色が多いです。 水の質感がいいです。