2023年2月23日木曜日

柏木式子(NMWA日本委員会共同代表)  ・〔私のアート交遊録〕 アートは社会の鏡

柏木式子(NMWA日本委員会共同代表)  ・〔私のアート交遊録〕 アートは社会の鏡

女性作家だけの作品を所蔵・展示する米首都ワシントンの美術館「NMWA(ニムワ)」 「National Museum of Women in the Arts」の略称。  美術品の収集家の夫婦が1981年に設立した民間非営利の美術館で、作品数は5500点以上。  14年前から数年に一度、女性作家の発掘を目指して様々な展覧会を企画しています。   その「NMWA(ニムワ)」が2024年に開く企画展に初めて日本の女性作家も出展する事になり、柏木さんは美術館の依頼で窓口となる委員会を設立し準備を進めています。  女性作家の再評価が世界的に進む今、女性作家だけの作品を所蔵展示するアメリカの美術館「NMWA(ニムワ)」 の共同代表として国際グループ展の開催に向けて奔走する柏木さんに展覧会にかける思いを伺いました。

美術コレクターであったWilhelmina Cole Holladay さんという創設者がいましたが、結構有名なコレクターで、クララ・ピーターズという有名な、マドリッドのプラド美術館などに入っているような女性作家さんでその方の「魚と猫」という作品を買いました。  何者だろうと思って調べたら美術史になにも載っていない。   おそらく1620年代以降の作品ということしかわからない。  女性のアーティストのことがほとんど書かれていない。  16,17,18、19世紀あたりになって来ると少し、20世紀少し、という事で女性アーティストはクリエイティブなことをやっていたはずだがないという事に気が付きました。      それ以降徹底的に女性の作家だけを集めようと思ってコレクションを始めました。  それは今の「NMWA(ニムワ)」の土台になっています。 

彫刻家のカミーユなど素晴らしい仕事をしているが、男性の影に隠されてしまっている。 美術、文化は社会の鏡であるんで、社会自体が平等でないと考えると、如実に反映している。   40年前に始まった時には、近くにスミソニアン美術館があるので、合併吸収して一つのウイングに収まってしまうのではないかと期待していましたが、そうはいきませんでした。   日本では今、美大生、芸大生の75%が女性だと言われていますが、教授陣は8割がた男性で、美術業界のなかでまだジェンダー平等というのは行われていないという事だと思います。  「世界経済フォーラムジェンダーギャップ指標」というのがありますが、日本は116位(146か国中の)でG7の中でも一番下です。  美術館での所蔵率は日本もアメリカも女性は10%一寸です。  表現の調査団が日本の2011年から2020年の間、日本の主要美術館7館で新しく購入した作家、作品の7割が男性作家、作品の8割が男性です。

アンコンシャスバイアス(Unconscious bias ) 「無意識の偏見」            1970年代から2016年に49か国のオークションを中心とした売買の価格、似たようなものの比較では男性に比べて42%程度女性の方が安いそうです。  有名なコレクターさんに見せて、男性と女性の名前を逆にするんです。  男性の作品の方に値段を高くつけてゆく。  アンコンシャスバイアスが掛かっていると思います。   14年前からもっと女性に光を当てようという事でグループ展を始めました。  「注目する女性」といった感じで行いました。 それが今度2024年に行われます。  日本からも参加するという事で委員会を作りました。   日本の委員会は現在6名です。  共同しているメンバーが4名いて総勢で10名になります。  この展覧会には1万ドル必要になりますが、何とか自分たちで出そうという事で動いています。(アメリカ的な要素を取り入れている。)   最初の仕事はキュレーター(博物館美術館含む)、図書館公文書館のような資料蓄積型文化施設(ミュージアム)において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門管理職。)を選ぶことです。  

アートを通してのジェンダー平等、多様性の精神、という事で大きな企業20社近く協賛していただいています。   寄付を一定額以上された方を対象に館長がツアーに連れて行きますが、4つほどイベントを行いました。  スポンサーの企業の方からも何か一緒にできないかという事で手ごたえを感じています。  

「NMWA(ニムワ)」の活動をし始めてから、もっともっと考えだしたことは確かですね。  入って行けばいくほどジェンダーのことは避けられないです。  日本自体がまだ進んでいないことが判ります。  小さいころから父親の仕事の関係で海外生活をしているので多様性という事はいつも頭にありました。(いつもマイノリティー「社会的少数者」でした。)アートがいいことは答えがないという事だと思います。   多様的なところを認めてくれる世界だと思います。  

ジャコメッティモランディジョージア・オキーフ、ジョーン・ミッチェルとかすきな作家はたくさんいます。   日本の作家ですと写真が好きなので、奈良原一高さんは大好きです。

東日本大震災の時に、麻生和子さん(芸大の理事)が以前に展示の機会を与えたいという事でお手伝いをしていた時がありました。  その展示に関わったという事で今の私があるという感じです。  女性はネットワークに繋がっていないので、機会喪失につながっていると思います。    2024年の展示会は「コロナ後の世界」という事になっています。コロナがどういう風に影響したかという事がテーマかと思います。  日本の女性の作家さんは外国程社会的に繋がった作品を作っている人って少ないです。  30年の空白があったせいか、みんな内向きです。  バブル期に憧れるような作品が多くて、郷愁というか、「コロナ後の世界」という題名でも、そういった色を残した作品が多かったように感じます。  3月4日に女性の作家たちの名前が発表されます。

私は小さいころから絵を描くことは好きでした。  今こういった活動をしていることが信じられないところがあります。  お勧めの一点は、竹村京さんという刺繍を取り入れた作品で「金継ぎ」の作品には自分の心を癒されました。