2023年2月2日木曜日

春日いづみ(歌人)           ・短歌に託したコロナ禍の介護~2022

春日いづみ(歌人)           ・短歌に託したコロナ禍の介護~2022

新型ウイルスの感染は介護の現場に深刻な影響を与え続けています。  長年続けた介護百人一首は2021年度から新介護百人一首として装いもあらたにスタートして、今回前回を上回る1万3000首を越える作品が寄せられました。    14歳から103歳までの広い応募があり、このほど入選作品100首が選ばれました。  春日いづみさんと共に作品に込められた思いをお伝えしてまいります。

今回は特に海外からの研修生の応募が多かったです。  日本人の若い方からの応募も増えました。    私は97歳になる母の介護をしています。  私も70代ですので老々介護と母にも言っています。 

静岡県 東廣美さんの作品                             「なんで又マスク交換手をつなぎなかよしこよし言うこと聞かず」            スタッフの眼を盗んで認知症の方がマスク交換を始めます。  何度言っても聞かない。  「なんでまた」が読者を惹きつけます。

長崎県 北原俊紀さんの作品                            「隔離終えタバコ一服かよさんは誰より早く日常に戻る」               タバコを吸う事も我慢しなければいけなかったのかもしれない。    心がほっとする時間だと思います。  

香川県 六車正子さんの作品                             「リモートで孫三人の見舞い受くパジャマの衿元ととのえながら」                 コロナで面会もままならなかった。 パジャマでも身支度をきちんとする。

岐阜県 伊藤敦さんの作品                             「介護士のその一匙が震えてる白がゆ喉に通る喜び」                 食事の介助はたいへんだと思います。  介助しているのは孫娘さんです。  「白がゆ喉に通る」ことを確かめながら匙を運んでいる。          

岡山県  カイ モー モー ウーさんの作品  ミャンマーから来ている。      「実習で記録を毎日書いてたら介護より日本語上達してきた」             4年半前に日本に来たという事です。   介護専用の言葉もあるし、覚えることはたくさんある事だと思います。

山形県 後藤早紀さんの作品                            「おもしゃいべいろんな人がいるもんだ父の言うこと今ではわかる」           「おもしゃいべ」は山形の方言。  17歳の作品。               

滋賀県  近江菫花さんの作品                                「寝返りを打てない母を寝返えらせ支援ベッドは月へ傾く」              「月へ傾く」というフレーズがとても上手だと思います。   

埼玉県 根岸裕幸さんの作品                              「亡き母に尽くしきれたか悔いがある我還暦の介護士目指す」             還暦、介護士を目指す、人生でやり残した宿題という思いでいます、という事でした。   根岸:非常にやりがいのある仕事だと思っています。 

埼玉県 渡辺冨寿子さんの作品                                「左耳難聴なのにケアさんは右耳に頬寄せ声高に」                  言ってくれているのが嬉しいというところがいいですね。                         

春日:介護で相談してくれる人がいるという事は有難いです。               

春日いづみさんの作品                               「旧体(態?)に成りて歩める夢の道背中にひっそり母を背負いて」                                                       

神奈川県 大島史郎さんの作品                             「さすり座の男と称し妻の背を擦りて紡ぐ老いの絆を」                    「さそり座の女」をもじって、ユーモアがあるという事はいい事です。

福岡県 中島正美さんの作品                             「長年のうらみつらみを聞かされて介護を受ける身から出たさび」                    男性の歌   複雑な思いをお互い抱いている。 

秋田県 斎藤敏也さんの作品                                 「父親の足の爪切る風呂上り電柱に登り踏ん張った足の」                  この足でずーっと家族を支えてくれた。    爪を切りながら胸が熱くなったことを覚えています。